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けがを負い、脱水状態で意識がもうろうとしているチーター。ケニア北部のサンブル国立保護区および近隣のバッファロー・スプリングスに、チーターは推定20頭が残るのみだ。(Photograph by Nichole Sobecki)

守りたかった負傷チーター、眠らず撮った3日間の記録

2021.09.03

 チーターは、世界最速の陸上動物だ。スタートからわずか3秒で時速90キロ以上に加速でき、最高時速は120キロにも達する。まるで走るために設計されたかのように、ネコ科の中で最も長く柔軟な背骨をもつ。

 しかし、その体は激しく戦ったり縄張りを守ったりするようにはできていない。そのことが、この動物を危うい立場へ追いやっている。

 この1年間、私(写真家のニコール・ソベキ)とライターのレイチェル・ベイルは、ナショナル ジオグラフィック誌の取材でチーターを追ってきた。ソマリランドやペルシャ湾岸の国々におけるチーターの違法取引の特集記事を掲載するためだ。

雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年9月号にニコール・ソベキ氏とレイチェル・ベイル氏による特集「売られるチーター」を掲載しています。
サンブル国立保護区のレンジャーたちが、隠れ場所を探すチーターを見守る。この100年の間に生息地の90%が失われ、野生のチーターは世界に7000頭しか残っていない。(Photograph by Nichole Sobecki)
サンブル国立保護区のレンジャーたちが、隠れ場所を探すチーターを見守る。この100年の間に生息地の90%が失われ、野生のチーターは世界に7000頭しか残っていない。(Photograph by Nichole Sobecki)

 違法取引は、チーターが直面してきた数多くの脅威の中では比較的新しい。20世紀の初め以降、土地が農場や家畜の放牧地に改変されたことで、世界のチーターの90%以上が失われたと言われている。現在、野生で残っているチーターの成体は7000頭に満たず、そのほとんどがアフリカ南部と東部に生息している。

 私はこの10年にわたりケニアで暮らしてきたが、ここでもチーターは絶滅の危機に瀕している。私はその現状を理解したいと考えた。

けがを負ったチーター

 ケニア北部にあるサンブル国立保護区への道は、人類発祥の地である東アフリカ大地溝帯に沿って進んでいく。混雑した首都ナイロビを抜けると、緑豊かな丘陵地帯が広がり、緑は徐々に赤茶けた大地へと変わっていく。

 サンブル国立保護区で14年間働いているナチュラリストのジュリウス・レゾリ氏が、チーター探しに協力してくれるという。到着すると、興奮気味のレゾリ氏は「見つけたぞ」と言った。「さあ行こう!」

獣医師を待つ間、他の捕食者に狙われないよう、見張りをする。チーターはレンジャーに向かって唸っているが、動く力は残っていない。(Photograph by Nichole Sobecki)
獣医師を待つ間、他の捕食者に狙われないよう、見張りをする。チーターはレンジャーに向かって唸っているが、動く力は残っていない。(Photograph by Nichole Sobecki)

 レゾリ氏が見つけたというチーターを探すため、私たちは急いで車を走らせた。「あそこにいたんだ」。スピードを落とし、何もいない道路を指差しながら、レゾリ氏が言う。間もなく私はチーターを発見した。茂みで日差しが遮られた場所に、ネコ科動物のシルエットが見える。

 私たちは少し離れた場所に陣取り、彼女が姿を現すのを待った。

 ところが、何時間経っても、シルエットは動かないままだった。レゾリ氏が心配し始める。チーターがこんなに長くじっとしているのは普通ではない。カメラのズームレンズを使ってけがをしていないか調べていると、サンブル国立保護区のレンジャーがトラックでやってきた。私たちが説明を始めると、チーターはゆっくりと立ち上がった。足を引きずっている。尻と腹、脚に負った傷を露わにしながら、彼女はより良い隠れ場所を探し始めた。

ギャラリー:守りたかった負傷チーター 3日間の記録 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:守りたかった負傷チーター 3日間の記録 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
レンジャーの報告から2日後、首都ナイロビからケニア野生生物保護公社の獣医師がやってきた。(Photograph by Nichole Sobecki)

次ページ:ひたすら待つ時間

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