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サーモンを捕まえる白いアメリカクロクマ。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のグレート・ベア・レインフォレストで撮影。クマ、シャチ、そして先住民は太平洋サケに依存しているが、その個体数が脅かされている。一部のレストランはサーモンの提供を取りやめ、科学者たちは保護の方法を研究している。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA MITTERMEIER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

野生のサケを守れ、さまざまな取り組みがカナダで進行中

2021.09.26
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食べてもいいのか

 レストランで野生のサーモンではなく養殖のサーモンを注文することは、自然保護を考えた解決策に聞こえるが、おそらくそうではない。

「開放型のサケの養殖施設は太平洋サケに実際にリスクをもたらします」とPSFのアンドリュー・ベイトマン氏は指摘する。野生の魚に寄生虫や病原体がうつることがあるためだ。そのせいで、野生のサケの成長や捕食者から逃れる能力が制限され、結果的に、生存、繁殖が脅かされ、最終的に森を育むことができなくなる。カナダ政府は現在、海上の養殖施設を段階的に廃止しており、最も新しいところでは、バンクーバー島からほど近いディスカバリー諸島で実行された。ディスカバリー諸島の海はシャチの重要な生息地だ。

 開放型養殖施設の負の側面は広く知られるようになっている。カナダ政府は2021年夏、太平洋サケの商業漁業施設の60%を閉鎖。野生の漁獲量を永久的に減らすため、漁業権の買い戻しを進めている。

 地元産のキンムツやギンダラなど、持続可能な魚の料理を提供するレストランも増えている。バンクーバー、ビクトリア、トフィーノ、オカナガン地方といった人気観光地では、何百人ものシェフがシーフードメニューに保全団体が認めた「オーシャン・ワイズ」のマークを付けている。

 オーシャン・ワイズは自然保護の認証する取り組みではないが、漁獲圧力(水産資源に対して漁獲が与える影響の大きさ)が低く、生息地へのダメージや混獲を減らす方法で捕られたシーフードを推奨している。

魚市場で氷の上に置かれたベニザケ。ブリティッシュ・コロンビア州スティーブストンで撮影。(PHOTOGRAPH BY DESIGN PICS INC., NAT GEO IMAGE COLLECTION)
魚市場で氷の上に置かれたベニザケ。ブリティッシュ・コロンビア州スティーブストンで撮影。(PHOTOGRAPH BY DESIGN PICS INC., NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 さらに一歩踏み込み、サーモンをメニューから完全に外すシェフやホテルも現れている。ブリティッシュ・コロンビア州の温帯雨林グレート・ベア・レインフォレストでは2020年、ニモ・ベイ・ウィルダネス・リゾートがサーモンの提供を取りやめた。シェフのリネア・ルトゥノー氏は現在、ビンナガマグロやスポットエビなど、地元の持続可能なシーフードで料理をつくっている。これまでのところ、宿泊客や近所に暮らす先住民の反応は上々だという。「なぜ河川系の回復が必要なのかを人々に伝える良いきっかけになると受け止められています」

未来につながる漁業を

 陸上の養殖施設が助けになる可能性もある。バンクーバー島の北東にあるブリティッシュ・コロンビア州初の陸上養殖施設クテラでは、紫外線で殺菌した井戸水を絶えず循環させ、タンクでサケを養殖している。ここで育てられたサケは地元の高級レストランで提供されている。

 しかし、陸上養殖施設の収益性は保証されていない。保全生物学者のブレット・ファバロ氏は、陸上養殖施設は「エネルギー集約型で、大量の水を使うため、気を付けなければいけません」と警告する。

ギャラリー:カナダのサケを取り巻く危機、私たちにできること 写真5点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:カナダのサケを取り巻く危機、私たちにできること 写真5点(画像クリックでギャラリーページへ)
ブリティッシュ・コロンビア州のグレート・ベア・レインフォレストにあるニモ・ベイ・ウィルダネス・リゾート。野生のサーモンを守るため、レストランでの提供を取りやめた。(PHOTOGRAPH BY ALL CANADA PHOTOS, ALAMY STOCK PHOTO)

「漁業は恐ろしいほどのダメージをもたらすことがあります」とファバロ氏は言う。ただし、「本当の意味で持続可能な活動にもなり得ます」

 つまり、カナダに来て、自分自身で夕食の魚を釣るぐらいは大丈夫ということだ。地元のガイドを雇い、キングサーモンを避け、遊漁許可証に6カナダドル(約520円)を支払えば、サーモンの保護にも貢献できる。有能なガイドは魚の移動パターン、遡上する群れの健全性、そして、持続可能性に関する規則を熟知している。

 一人一人が慎重な選択をすることで、サケが地域のクマやシャチの餌となり続け、豊かな森を育み、いずれ食卓に戻ってくるように手を貸せる。「サーモンは条件さえ整えば回復できることを何度も証明してきました」とファバロ氏は語る。「私たちがサーモンを大切にすれば、サーモンも私たちに恩返しをしてくれるでしょう」

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文=JOHANNA READ/訳=米井香織

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