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600頭近くのゾウがウガンダから草原をわたってビルンガ国立公園にやってきた。それまでゾウは120頭ほどしかいなかった。近年の密猟や紛争によって多くのゾウが殺されたり逃げ出したりしたためだ。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)

紛争で荒れた国立公園にゾウが帰ってきた、コンゴ 写真8点

2021.04.08
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 コンゴ民主共和国のビルンガ国立公園に、サバンナゾウの群れが帰ってきた。公園の職員らにとってはうれしい驚きだ。

 ビルンガの一帯は数十年にわたる紛争によって荒廃していたが、この出来事は状態の安定化を目指す道のりの転機となる。隣接するウガンダのクイーン・エリザベス国立公園から600頭近くのゾウがビルンガに入ってきたのは、2020年8月のことだ。それから半年以上が経った今でも、ゾウはまだ滞在している。おそらく、この新しい家には安心して住めると思っているのだろう。

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「ビルンガが息を吹き返したことを表すのに、これ以上の出来事はありません」と、公園の総責任者を務めるエマヌエル・ド・メロード氏は話す。「私がコンゴにやってきたのは30年前ですが、このような光景を見たのは初めてです」

ビルンガの中央部にあるルウィンディ・ホテルの廃墟を調べるレンジャー。1990年代に紛争が勃発する前は、ザイール(現コンゴ民主共和国)の独裁者であったモブツ・セセ・セコや、たくさんの野生動物を見にきた観光客らがここに宿泊していた。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)

 ビルンガ国立公園は、8000平方キロメートル以上と静岡県や熊本県などより広く、コンゴ民主共和国の東の国境に沿って伸びている。ステップ、サバンナ、火山、雪原と、その地形は実に多様だ。しかしビルンガは、武装勢力による攻撃、密猟、食肉目的の狩猟、無認可の漁、木炭用の違法な伐採などの脅威にさらされてきた。公園を守るため、過去25年間で200名以上、今年だけでも21名のレンジャーが犠牲になっている。2月下旬には、公園の南の境界近くでイタリアの大使が殺害される事件も起きた。誘拐目的で襲撃されたものと考えられている。ド・メロード氏自身も2014年に襲撃され、撃たれた経験がある。

 このような状況では、暴力による被害が野生動物にも及ぶのは避けられない。世界的な自然保護団体の野生生物保護協会(WCS)によると、1970年代のグレーター・ビルンガ・ランドスケープと呼ばれる地域(隣接するルワンダとウガンダの国立公園を含む呼称)は、世界でもっともたくさんの大型哺乳類が暮らす場所だった。有名なマウンテンゴリラのほか、サバンナゾウも8000頭近く生息していた。体重が最大7トンに達するサバンナゾウは非常に鋭敏で高い知能を持ち、70年ほど生きる。(参考記事:「アフリカゾウ1種が「近絶滅種」に、IUCN初の2種個別評価」

2020年、ビルンガのレンジャーだったバグルブムウェ・シュホゼ・デオゲネさんの葬儀で、墓のまわりに集まる妻と3人の息子たち。公園を守る任務についていたレンジャーは、過去25年間で200名以上、2021年だけでも21名が犠牲になっている。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)

 しかし、1990年代になると、ルワンダ虐殺やその後の第一次および第二次コンゴ戦争により、一帯は紛争地帯と化す。すると野生動物の数も減り始めた。安全な場所に逃げたり、貧困にあえぐ地元民や象牙で利益を得ようとする密猟者の手にかかったりするゾウも多かった。近年行われた推定によると、ビルンガに残ったゾウはわずか120頭ほどだったと見られている。

「銃弾が飛び交えばゾウは逃げていきます。武装勢力同士の戦いでも、直接ゾウを狙ったものでも同じです」。ウガンダを拠点にアフリカの野生動物や環境保護に関わる団体に助言を行っている「ペトリコール・アフリカ(Petrichor Africa)」を創設した保護活動家のアン・マリー・ウィーデン氏はそう話す。

 そして昨年8月、ゾウたちが帰ってきた。

エドワード湖をパトロールするレンジャーたち。魚が獲れるため、武装勢力に狙われている場所だ。ビルンガの総責任者を務めるエマヌエル・ド・メロード氏によると、エドワード湖の違法な漁によって得られる収益は年6000万ドルにのぼる。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)

次ページ:戻ってきたゾウ、希望の光

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