Photo Stories 撮影ストーリー

海から黒い浜辺に波が打ち寄せ、大地には雪が積もる。(Photograph by Uruma Takezawa)

アイスランド、原始の大地で見つけた自分だけの絶景 写真10点

2021.04.11

旅する写真家、竹沢うるまさんの写真展「Boundary|境界」開催に合わせて、作品10点とともに撮影ストーリーを紹介します。

 絶景というテーマがこの数年、旅における大きなキーワードになっているが、本当の絶景とは何なのか、そういうことを考えながらアイスランドを旅した。

 誰かが見た光景ではなく、どこかで見た風景でもなく、自分だけの絶景を見つけることができないだろうか。それを考えていくうちに、原始の風景というのが段々と自分の中で大きなキーワードとなっていった。

前日まで真っ白だった山の景色が、雪が解け、白と黒のまだらの景色に一晩で変わった。(Photograph by Uruma Takezawa)
周囲何十キロと誰もいない山の奥地で、滝が滔々と流れていた。(Photograph by Uruma Takezawa)

 アイスランドの大地の特徴を一言で言えば、あるがままの自然であるということ。手つかずというのとは少し違い、原始という言葉のほうがしっくりくる。この島を南北に縦断する大西洋中央海嶺は、北アメリカプレートとユーラシアプレートの裂け目に当たる。そのため火山活動が盛んで、2010年3月にもエイヤフィヤトラヨークトルが噴火し、噴煙がヨーロッパ全域に影響を与えたこともあった。海岸線には常に波が押し寄せ、冬ともなると猛烈な低気圧が島を横切る。いわばアイスランドは、大地の営みが現在進行系で繰り広げられている、実際に地球の息吹が目に見える場所なのである。

山肌に生まれる白と黒の線は、まるで大地の血管のようであり、山が生き物に見えた。(Photograph by Uruma Takezawa)
原始の姿を留めるアイスランドの大地は、まるでどこかの惑星を訪れたような錯覚を覚える。(Photograph by Uruma Takezawa)

 何回かアイスランドを訪れるうちに、氷の国らしく、やはり夏ではなく冬のほうがその魅力がより輝くことを知っていった。しかし、真冬は太陽が昇っている時間が一日に数時間程度しかなく、活動時間は限られる。私が頻繁に訪れたのは、秋から冬にかけてと、冬から春にかけて。この時期は雪と晴れが交互に訪れ、風景はまるで生きているかのように次から次へとその表情を変化させていく。

 最も惹かれたのは、白と黒の世界である。アイスランドの大地は火山岩が大半で、山や地表が黒い。浜辺に至っては真っ黒な砂に満たされている。そこに真っ白な波が打ち寄せ、白と黒のコントラストが現れる。雪が降れば黒の大地は一晩で白い大地へと変貌し、その景色も数日して雪が解けると、段々と黒い地面がまだらに露出する。白と黒の世界が刻々と行ったり来たりする光景は、まるで大地自体が生きているかのように見え、それがまさに原始の大地の姿そのものに思えたのだった。

白と黒の世界は、大地からの何かしらのメッセージのように感じられた。(Photograph by Uruma Takezawa)
秋、雪が降り始める。秋から冬にかけてのアイスランドは、最も美しい風景に出会える季節。(Photograph by Uruma Takezawa)

 私はこれまで多くの国と地域を訪れてきた。数多くの国境を越え、多様な文化や伝統とともに生きる人々に出会い、また数多の神々に対する信仰を見てきた。同時に、そこにある分断や対立なども多く目にしてきた。旅を続けるうちに、私は段々と境界線とは何なのだろうかということを考えるようになっていった。

 アイスランドの雄大な大地をひとり歩いているとき、ふと大地と一体化するような感覚があった。そして大地の視点から人間の営みを捉えたとき、宗教や国境、イデオロギーや人種、そういったものが生み出す境界が意味をなさないように思えてきた。大地の時間軸から見れば、そうした境界は人間が生み出したちっぽけな概念でしかないのかもしれない。

 アイスランドの大地は、旅人に新たな視点を与えてくれる気付きの大地であった。

波が打ち寄せ、鳥が飛ぶ。地球のデザインを感じる瞬間にシャッターを切った。(Photograph by Uruma Takezawa)
冬、低気圧が頻繁に訪れ、海が荒れる。海鳥たちは風に乗り、海を越えていく。(Photograph by Uruma Takezawa)
アイスランドの浜辺に打ち寄せる波は、巨大である。とても遠い場所から、巨大な波を撮影した。(Photograph by Uruma Takezawa)

竹沢うるま写真展「Boundary|境界」

 世界各地の人々の営みを写した「人間の大地」とアイスランドで撮影された圧倒的な大地の写真約25点を展示し、「境界とは何なのか?」を見るものに問いかける。写真集同時発売予定「Boundary|境界」(青幻舎)。


2021年4月20日(火)~5月8日(土)
キヤノンギャラリー銀座 、10:30〜18:30(日・月・祝休館)

2021年6月8日(火)~6月19日(土)
キヤノンギャラリー大阪、10:00〜18:00(日・月・祝休館)

写真・文=竹沢うるま(写真家)

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