Photo Stories撮影ストーリー

生活困窮者に届けるサンドイッチを作るチャウガールズ・ケータリングの調理師ローザ・サンチェスさん(左)とドロレス・ヒダルゴさん。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER)

新型コロナで打撃を受けた食品業界が貧困層を支援、米ミネソタ州 写真15点

2021.01.11
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 新型コロナの拡大にともない、米国では貧困と食料問題がますます深刻になっている。ここではミネソタ州で増えている貧困層に、無料で食事を提供しようという取り組みを紹介する。


 米国ミネソタ州の州都セントポールと、そのすぐ隣にあるの最大の街ミネアポリスにとって、2020年は激動の年となった。

 まず、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに襲われた。次に、黒人男性のジョージ・フロイドさんがミネアポリスの白人警察官に殺害された事件をきっかけに、激しい抗議運動が巻き起こった。街は暴動で破壊され、建物に火がつけられた。持てる者と持たざる者の間に激しい格差があり、そのどちらに属するかを決定する最大の要因は人種であるという現実に、人々はいやが応でも直面せざるを得なくなった。

サネー財団によってセントポールに住む一家に届けられた食料。サネー財団は、元プロサッカー選手のトニー・サネー氏が創立し、年間1万人の子どもたちにサッカーを教えたり、その他の活動を行ったりしている。パンデミックが始まってからは、生活困窮者に無料で食事を届ける活動も始めた。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER)

 ミネアポリスとセントポールで活動するフードバンク「セカンドハーベスト・ハートランド」の最高経営責任者アリソン・オトゥール氏は、こう話す。「次から次へと危機に見舞われ、長年の間、隠れていた問題があらわになりました。この街の貧富の差は、全国的に見ても特にひどいです」

パンデミックで深刻化した飢餓問題

 ミネソタ州には、「フォーチュン500」(米経済誌『フォーチュン』が年に一回、企業の総収入に基づいて全米上位500社をランキングしたリスト)に名を連ねる企業16社がオフィスを構えるが、ミネアポリス・セントポール都市圏には、街のいたるところにホームレスのテント村がある。

 パンデミックが始まる前、毎日の食べ物を満足に手に入れられない人は11人に1人だとされていたが、それが今では8人に1人にまで増えている。街のフードパントリーの前には、無料の食料品を受け取りに来た人々の車が列をなし、交通渋滞を起こしている(一般に、フードバンクは外食産業などから寄付された余剰食品を広い倉庫に貯蔵してフードパントリーやホームレスシェルターなどに配布する。フードパントリーは町の商店のような小規模運営で、個人に直接食料を配布する)。セカンドハーベストでは、2020年3月中旬以降、食料の需要が30%増加したという。

ミネアポリスにあるショーン・シャーマンさんの先住民フードラボで、カモ肉を使った料理を作るシェフたち。出来上がった食事は、州内に住む貧しい高齢の先住民に届けられる。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER)

 セカンドハーベストは、パンデミックで失業したシェフを雇い、温かい食事を作ってホームレスや共働き家庭などに届けるプロジェクト「ミネソタ・セントラル・キッチン」を立ち上げ、3月以降110万食を提供してきた。

 現在、12の調理会社やケータリング会社がこのプロジェクトに協賛し、180人の失業者を雇い、本来であれば廃棄されるはずの余剰食品544トンを「救助」している。

ケイトリン・ナットソンさんが届けた弁当を食べるクリフトン・ロビンソンさん。家を失って18カ月になるというロビンソンさんは現在、テント村で生活している。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER)

 ケータリング会社「チャウガールズ」の総料理長リズ・マレンさんは、以前から余剰食品の廃棄問題や飢餓の問題に関心を持っていた。昨年の3月中旬に新型コロナのために職場が閉鎖されると、セカンドハーベストで働く友人に電話をかけた。

「私の会社には広くて立派な調理場があるのに、今は使われていません。でも、きっとそれを必要としている人々がいるはずだと思ったのです。何かできることがあったら声をかけてほしいと、電話で伝えました」

 これを受けて、セカンドハーベストの最高業務・プログラム責任者であるティエリ・イブリ氏は、オトゥール氏やレストラン関係者らと相談し、数日後にはチャウガールズでの食事作りが始まった。

ギャラリー:新型コロナで打撃を受けた食品業界、米ミネソタ州の貧困層を支援 写真15点(写真クリックでギャラリーページへ)
ジョージ・フロイドさんの殺害現場からわずか1ブロック離れたところにあるミネアポリス・カルバリー・ルーテル教会の駐車場。毎週土曜日の朝になると、教会で無料配布される食料品を求めて自動車の列ができる。教会では、40年間毎週のように食料を配布してきたが、2020年のパンデミック、経済不況、フロイドさん殺害事件の後の騒乱により、爆発的に需要が増えたという。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER)

次ページ:社会の底辺で生きるということ

おすすめ関連書籍

ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

米国内で発表された優れた報道・作品に授けられる「ピュリツァー賞」。時代を映す報道写真集の決定版に、2015年までの最新受賞写真を加えた改定版。

定価:本体3,900円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ