Photo Stories撮影ストーリー

4月29日 新しい生命の誕生(米国 ニューヨーク市):リビングルームに置いたお産用のプールで、助産師と出産支援者の手を借りて娘を出産したキンバリー・ボンシグノール。コロナ禍が最も深刻だった頃、病院での家族の立ち会いが禁止となり、自宅での出産を選んだ。破水後2時間足らずで誕生した娘はぐったりしていたが、心肺蘇生を受けて産声を上げた。(写真:ジャッキー・モロイ)「娘は健康です。悪い結果になる可能性もあったので本当に良かった」̶キンバリー・ボンシグノール

2020 希望をつないだ1年

2020.12.25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事は、雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年1月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

悲惨なコロナ禍においても、私たちは新たな生活様式や考え方、癒やしの方法を見つけた。

 歌え、今ここにある希望を胸に—作家ジェームズ・ウェルドン・ジョンソンが歌詞を書いた「声高らかに歌え」は、19世紀末の米国フロリダ州で“黒人国歌”と呼ばれた。当時の同州はリンチが横行し、アフリカ系のジョンソンには選挙権すらなかったが、彼は希望を捨てなかった。ならば私たちにもできるはずだ。

 死力を尽くす医療従事者の姿や、大切な人とつながる手段の構築にも希望を見いだした。疫病や自然災害にも負けず科学は進歩を続け、環境保護は成果を上げ、社会の意識は高まりつつある。不幸がもたらした変化のなかにも希望はあるのだ。

 海洋生物学者のシルビア・アールは、85歳の誕生日を目前にした2020年8月にこう語った。「個々の力を尽くし、そして皆で力を合わせれば、生命を守る自然のシステムを敬い、他者を尊重し合う新しい世界が実現するはずです」

 好ましい変化はすでに始まっている。米マイクロソフト社の共同設立者ビル・ゲイツは、本誌英語版編集長によるインタビューのなかで、新型コロナウイルスに効果が期待できるワクチンが6種類も開発中であることに触れ、「まるで戦時中さながらに、新しい挑戦が迅速に行われています」と話した。

「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は大切だ)運動の共同発起人であるアリシア・ガーザは、この大混乱のなか、あらゆる人々が「目指す場所に到達するには何をすべきか」を否応なしに自問したと言う。そう、まだかなえたい希望があるのだ。

<span style="font-size: 15px;">5月30日 宇宙開発の新時代(米国 ケネディ宇宙センター)</span>
5月30日 宇宙開発の新時代(米国 ケネディ宇宙センター)
国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられたスペースX社の有人宇宙船クルードラゴン。米国からの有人船打ち上げは2011年以来で、このミッションは新しい商業宇宙プログラムの足がかりとなる。「テスト飛行に参加したかった。それが夢だったんです」と宇宙飛行士のロバート・ベーンケンは語る。
2枚の写真を組み合わせた(写真:マイケル・シーリー)
<span style="font-size: 15px;">7月21日 歴史的な宇宙遊泳(国際宇宙ステーション)</span>
7月21日 歴史的な宇宙遊泳(国際宇宙ステーション)
ISS滞在の7週目頃、ベーンケン(左)は仲間と船外に出てロボット用ツールボックスの設置やメンテナンス作業を実施。5時間半に及ぶ船外活動は彼らにとって10回目、米国人としては300回目の節目となった。写真は、二人と一緒に乗船したハーリーが船内から撮影したもの。この12日後にベーンケンとハーリーは地球に帰還した。(写真:ダグラス・ハーリー)

参考記事:「スペースX宇宙船が有人で初の帰還、写真で見る宇宙の旅 写真11点」
<span style="font-size: 15px;">5月28日 ダムがなくなり、川がよみがえった(米国 ウェストブルック)</span>
5月28日 ダムがなくなり、川がよみがえった(米国 ウェストブルック)
メーン州ポートランド近郊を流れるミル・ブルック川を、産卵場所のハイランド湖に向かって泳ぐエールワイフ。体長25センチほどのニシンの仲間で、普段は海に生息するが、産卵のときだけ遡上(そじょう)する。250年以上前に下流にダムが建設されて以来、こうした回遊性の魚は湖に戻る道を断たれていたが、2002年にダムが撤去されると、遡上を復活させる試みが始まった。湖に放流された稚魚は小さな流れから川を下り、海に出て、再び湖に戻って来た。その数は毎年増え続け、今では6万匹を超える。個体数の回復は、この魚を食べるアザラシやワシ、ミンクなどの捕食者にも好影響を与えている。ミル・ブルック川は長さ10キロほどの区間が保護区になり、川辺の遊歩道も整備されて、晩春には水面にきらめく魚の群れを見に、多くの人が訪れる。(写真:ブライアン・スケリー)

「自然が回復する様子を見るとこちらも元気になります」
̶ ザック・ホワイトナー(生物学者)

参考記事:「ダムがなくなり川に魚が戻ってきた、米国の例」

次ページ:野生動物はしぶとく生きる

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
定期購読者(月ぎめ/年間のみ、ご利用いただけます。

定期購読者(月ぎめ/年間)であれば、

  • 1 最新号に加えて2013年3月号以降のバックナンバーをいつでも読める
  • 2ナショジオ日本版サイトの
    限定記事を、すべて読める

おすすめ関連書籍

2021年1月号

試された1年/隔てられた1年/闘い続けた1年/希望をつないだ1年

2020年は決して忘れられない年になりました。新型コロナウイルスによる多くの死者、深刻化した人種対立、政治的な分断などに特徴づけられた痛ましい1年であったことは間違いありません。世界各地の写真家たちの作品を通して、激動の1年を振り返ります。

定価:1,210円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ