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4月6日 家から出られない(イタリア ミラノ):グレタ・タニーニとクリストフォロ・リッピは、2020年3月初旬にミラノが都市封鎖されたのを機に一緒に暮らすようになった。外出できない間、学生である二人はオンラインで授業を受けたり、研究プロジェクトに取り組んだりした。「誰かの健康を脅かすよりは、家から出られない生活を選びます」とタニーニは話した。(写真:ガブリエレ・ガリンベルティ) 「撮影用の照明を私が窓の外に置き、住民が自ら室内にセットしました。そして窓越しに立つ位置などを指示して撮りました」̶ ガブリエレ・ガリンベルティ

2020 隔てられた1年

2020.12.25
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この記事は、雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年1月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

世界は体験したことのないロックダウンに突入し、互いに距離を保つよう強いられ、ストレスにさいなまれた。

 意図的に孤立した環境に身を置く人々もいる。たとえば宇宙飛行士や登山家、修行僧などだ。だが大半の人は、社会と交わることで、生き生きと暮らすための「充電」をしている。2020年、そのコンセントが抜かれた。3月、世界は静かに隔離へと向かう。集会は禁止され、学校や職場は閉鎖された。外出禁止令が出され、世界は奇妙な静けさに包まれた。

 新型コロナの時代、「隔離」の概念を考え直すことになった。外国に足止めされたり、職場や学校に行けなくなったりして、友人や家族から引き離されることも、「隔離」の範囲に入るのだ。

 ステイホームできるのは一つの特権だ。社会生活の維持に欠かせない職種に就くエッセンシャルワーカーたちは、健康を守るか、責任を果たすかの選択を迫られた。初期の感染拡大の中心地の一つだったイタリア北部のベルガモでは、葬儀業者のアントニオ・リチャルディが家族に感染させることを恐れ、2カ月間も職場で寝起きした。「死ぬことを恐れていました」と、彼は振り返る。「死の恐怖を感じたのは、生まれて初めてでした」

 死もまた孤独なものとなった。80代で亡くなったマリー・テレーズ・ワスマーの葬儀は、フランスの感染爆発の引火点の一つだった小都市ミュルーズの外れで行われた。ウイルス検査は受けていなかったものの、感染者と同じように葬られることとなり、友人も家族も葬儀には参列できなかった。彼女の遺体は司祭と葬儀業者が埋葬し、家族に代わって彼らが祈りをささげた。

<span style="font-size: 15px;">3月10日 誰もいない大学(ポーランド クラクフ)</span>
3月10日 誰もいない大学(ポーランド クラクフ)
「1364年に創設されたヤギェウォ大学は、宗教改革や国土の併合、二つの世界大戦などを乗り越えてきた。2020年3月10日、この世界屈指の歴史を誇る大学は講義を休止。ほとんどの学内活動がストップし、図書館をはじめ、校内は空っぽになった。幼稚園から法科大学院に至るまで、世界各地の教育機関で同様の措置がとられ、いかに安全に教育を再開するかが課題となっている。ヤギェウォ大学では、2020~21年度はオンラインと対面式の講義が併用されている。(写真:ラファウ・ミラ/MAGNUM PHOTOS)

「現状に慣れ過ぎることが心配です。世界が再びスピードアップしたとき、騒々しくなることを不快に思うでしょう」
̶ ラファウ・ミラ(コロナ禍の静けさについて)
<span style="font-size: 15px;">4月3日 リモートでつながる新しい世界(米国 ボールダー)</span>
4月3日 リモートでつながる新しい世界(米国 ボールダー)
ビデオ会議ツールを使って誕生日を祝うブレンダン・デービス。眼鏡にその様子が映り込む。飲み会や職場の会議などがオンラインで行われるようになったが、人間の脳は長時間の感情的なやり取りを遠隔でこなせるようにはできていないと専門家は指摘する。(写真:ベンジャミン・ラスムセン)

参考記事:「「ズーム疲れ」は脳に大きな負担、なぜ?」
<span style="font-size: 15px;">3月23日 ランチタイムの新しい日常(中国 武漢)</span>
3月23日 ランチタイムの新しい日常(中国 武漢)
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、さまざまな制限が設けられるなか、東風ホンダの自動車工場の労働者たちが、互いの距離を保って昼食を取る。このウイルスは鉄鋼と自動車の一大生産地である武漢で、2019年11月に最初に発生したと考えられている。翌年1月に厳しい外出禁止令が出され、2カ月ほどして新規感染者が減ると、住民たちは予防対策を徹底しながら、市民生活を再開できるようになった。人民日報は「今も忘れてはならない。武漢の封鎖が解かれたことは喜んでいいが、気を抜いてはならないのだ」と警鐘を鳴らした。(写真: STR/AFP VIA GETTY IMAGES)

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