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2カ月に及ぶ食料探しに出かける前、メスのコウテイペンギンが、オスに卵を預ける。すばやく移さなければ卵は凍ってしまう。コウテイペンギンがパートナーを見つけ、繁殖し、ひなを育てるには、南極の海氷が頼りだが、気温が上昇し海氷は縮小しつつある。(PHOTOGRAPH BY STEFAN CHRISTMANN)

2020年のナショジオ、ベスト動物写真 26選

2020.12.06
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 夜の米国アリゾナ。カメムシやスズメガなどチリカワ山脈に生息する昆虫たちが、照明を当てた白いシーツに集まってきた。

 それをとらえた写真に、私たちの多くは生物の多様さを感じるかもしれない。だが研究者たちは、この写真から喪失を読み取っている。数年前、このあたりの山々ではもっと多くの種の珍しい昆虫がシーツに集まってきたものだった。

 デビッド・リトシュワガー氏が撮影したこの写真は地球全体に広がる昆虫の減少をとらえたものとして、ナショナル ジオグラフィックのフォトエディターたちは、今年の動物ベストフォト26点のひとつに選んだ。

 このリストの責任者でフォトエディターのアリー・モレオ氏は、選ばれた写真の多くは、リトシュワガー氏の昆虫写真のように一般には見られない種をとらえていると話す。

 動物の珍しい物語に光を当てることで、「私たち人間が動物とうまく共存し、私たちの行動が良くも悪くも彼らに影響をもたらすことを理解する一助になるかもしれません」と彼女は言う。

 紹介する写真の多くは、動物を助けるために献身的な努力をしている人々の存在も反映している。そのひとつが、カリーヌ・アイグナー氏のオウギワシの写真だ。絶滅の危機に瀕しているこの大型の鳥は、アマゾンの革新的な保全プログラムのおかげで生き残る可能性が生まれている。

 2019年12月、ダグ・ギムシー氏がオーストラリアのメルボルンで撮影したのは、異常な熱波にあえぐ瀕死のオオコウモリの姿だ。この日だけで数千匹が死亡したという。ギムシー氏は、この熱波から数百匹のオオコウモリを救おうと懸命な人々の様子も記録している。

 人間と飼育動物の関係に光を当てる写真も選ばれた。メラニー・ウェグナー氏は、米テキサス州の大規模なエキゾチック動物産業を記録した。州内の牧場では、オリックスやシマウマなど、100万頭を超えるエキゾチック動物(珍しい外来動物)を繁殖し、狩猟の対象として売買するなど、高額の取引が行われている。

 写真の多くは新型コロナのパンデミック前に撮影されたものだが、今年はナショナル ジオグラフィックの写真家の多くが、パンデミックの影響で撮影地を訪れることができなかった。ヤスパー・ドゥースト氏は、オランダの自宅で隔離されている間、自宅で野生動物の写真を撮り始め、あるハトの夫婦にカメラを向けることにした。このハトたちは、彼の家のベランダに頻繁に訪れるようになった。やがて、大胆にも家の中に入ってきた。居間のソファーや子どもたちのドールハウスの中にまでやってきた。

 毎日やってくる二羽のハトは、「この地球に生きているのは私たちだけではない」という現実に気づかせてくれたと、ドゥースト氏は書いている。「私たちの暮らしを左右するこの意識を、すべての生き物と共有する必要があります」

米テキサス州サンアンジェロ近郊のセクシー・ホワイトテールズ牧場で、鎮静剤を投与されたシマウマがヘリコプターでつり上げられる。州内の牧場では、シマウマなど約100万頭のエキゾチック動物が飼育されている。牧場間で頻繁に売買され、多くは高額な狩猟の的とされる。(この写真の記事:「エキゾチック動物の牧場が米国で増加、飼育数は125種100万頭」(画像クリックでも記事へ遷移します))(PHOTOGRAPH BY MÉLANIE WENGER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
宇都宮市にある居酒屋かやぶきでは、客たちの食事が終わると、店主のペットのサルたちが店内の舞台に上がり、お面をかぶってみせる。調教されたサルたちは、衣装をつけ、宙返りをしたり竹馬で歩いたりして、観衆を喜ばせている。(この写真の記事:「日本人とニホンザル」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY JASPER DOEST)
米アラスカ州マクニール滝でサケを捕まえるヒグマ。夏に多くのクマが集まる世界有数の場所で、一度に80頭が姿を見せたことがある。見物にくる少人数グループの観光客には驚かないが、この地域の鉱山開発計画はクマの移動ルートを脅かす恐れがある。(PHOTOGRAPH BY ACACIA JOHNSON, NATIONAL GEOGRAPHIC)
アカシアの林に襲来するサバクトビバッタの大群。ケニア北部で2020年4月に撮影。群れは米ニューヨーク市の面積の1.5倍を覆いつくす700億匹に達することもあり、その場合、約13万6000トンもの作物が1日で失われる計算になる。(この写真の記事:「アフリカでバッタ大量発生の第2波、食料不足の危機」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY DAVID CHANCELLOR, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ティエラ・デル・フエゴ群島のアルゼンチン領内にあるロス・エスタドス島付近を泳ぐオタリア。ナショナル ジオグラフィック協会が立ち上げた「原始の海プロジェクト」は、世界の海の3分の1を守ることを目標に掲げている。(この写真の記事:「原始の海を守る、その先に」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY ENRIC SALA)
米メーン州では、サケの遡上を復活させるために全米に先駆けてダムの撤去に踏み切った。今では、体長25センチほどのエールワイフなど数百万匹の魚が、メーン州ポートランド近くのハイランド湖で産卵するために、また川を遡上するようになった。(この写真の記事:「ダムがなくなり川に魚が戻ってきた、米国の例」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)
巣に持ち帰るためにストロー状の舌で水を吸うセイヨウミツバチ。巣に戻ると、別のグループに水を渡す。水を受け取ったグループは、巣を冷やすための特殊なプロセスで水分を蒸発させる。ドイツで撮影。(この写真の記事:「激写:スズメバチを迎え撃つミツバチ」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT)
米アリゾナ州のチリカワ山脈で、照明を当てたシーツに大きなアカオビスズメやカメムシが集まる。昆虫の生息状態を観察するためにこの照明トラップをしかけた生態学者のリー・ダイアー氏によれば、数年前には、もっと多くの珍しい虫が集まったという。(この写真の記事:「昆虫たちはどこに消えた?」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER, NATIONAL GEOGRAPHIC)(PHOTOGRAPHED AT SOUTHWESTERN RESEARCH STATION, AMERICAN MUSEUM OF NATURAL HISTORY)
米フロリダの犬舎を歩くレース用グレーハウンド。グレーハウンドは基本的におとなしく、攻撃的ではないが、皮膚が薄く、また、ひとつの疑似餌を競って追うように訓練されているために競争心が高まることがある。そのため、複数でいるときには口輪をはめることが多い。2018年、フロリダ州では、2020年末までにグレーハウンド・レースの賭けを禁じる法案が成立し、事実上、レースビジネスは閉鎖されることになった。(この写真の記事:「米国伝統の犬レースが消滅へ、背景にドーピング、不正な殺処分の歴史」(画像クリックでも記事へ))(PHOTOGRAPH BY ERIKA LARSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

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