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新型コロナで通常の練習ができなくなり、チアリーディング・チーム「サンシティ・ポム」のメンバーは、屋外でフラフープを練習している。引退後のアクティブな暮らしをコンセプトとするサンシティでは、他にも多くのクラブやチームがある。(Photograph by Kendrick Brinson)

リタイア後を楽しむ街「サンシティ」、コロナ下を生き生きと暮らす人々

2020.11.23
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 ペギー・パーソンズさんには夢があった。80代になったとき、チアリーダーでいるという夢だ。

 そこで、夫のビルさんを説き伏せて自宅を引き払い、車で15分ほどのところにある米アリゾナ州サンシティに移り住んだ。79歳のペギーさんにとって、引越しはこれが初めてではないし、もっと遠くに引越ししたこともある。それでも、これは大きな転機だった。

 サンシティは、元気な高齢者向けに設計されたコミュニティーで、55歳以上の人々に退職後や子育て後の満ち足りた生活を提供することをコンセプトにしている。住民は約4万人で、その平均年齢は73.5歳。麻雀やピックルボール(パドルでボールを打ち合う競技)、タップダンス、チアリーディングなど130を超えるクラブに参加することができる。

 サンシティは、アリゾナ州マリコパ郡にあり、州都フェニックスの北西30分足らずの場所に位置する。1960年に、この種のコミュニティーとしては初めて開設された。

 街の中には、7つのレクリエーションセンター、8つのゴルフコースがあり、「サンシティは高齢者のディズニーランドのようなもの」とペギーさんは言う。「毎日がずっとバカンスのようなものだけど、旅行のようにスーツケースひとつで暮らす不自由さはないのよ」

空から見たアリゾナ州サンシティ。55歳以上の人々がアクティブに生活できるコミュニティーとして1960年に誕生した。(Photograph by Kendrick Brinson)
住民に自宅待機を呼びかけるセント・クリストファー米国聖公会教会の掲示板。パンデミックの影響で、3月からサンシティ内の教会やレクリエーションセンターは閉鎖されている。(Photograph by Kendrick Brinson)

 だが2020年3月、サンシティの魅力であるにぎわいと活気に急ブレーキがかかった。このコミュニティーの人々は、今回のウイルスに特に弱い年代だ。10月22日現在、アリゾナ州内の新型コロナウイルス感染者の65%が、人口が最も多いこのマリコパ郡に集中しており、地元の報道では、サンシティ地域でも約850人が感染したと推算されている。

 この至れり尽くせりのコミュニティーに、パンデミックは大小さまざまな問題をもたらしている。ビル・ピアソンさん(72)はここで17年暮らしているが、「住民たちは急に何もすることがなくなってしまった」と言う。レクリエーションセンターはすべて閉鎖された。円形劇場もソフトボール場も、ボウリングセンターも、ドッグパークも使用できない。営業が認められているのは、ダグ・デュシー州知事が必要不可欠な活動と認めたゴルフ場だけだ。

パンデミック前のサンシティ・ポムは、3時間の練習を週に2回行い、シーズン中には12のパレードと50のショーで演技を披露していた。(Photograph by Kendrick Brinson)
ペギー・パーソンズさん(79)はサンシティ・ポムの副会長で、チームに参加するためにサンシティに引っ越してきた。自宅待機中に2つの小説を書き上げ、そのひとつはすでに出版された。(Photograph by Kendrick Brinson)
サンシティ・ポムの会長、ジェリー・ブラドックさん(73)は、来年までチームの練習はできないと考えている。伝染病専門看護師だった彼女は、パンデミック中、ボランティアとしてロサンゼルス公衆衛生局でコンサルティング業務に携わってきた。(Photograph by Kendrick Brinson)

 ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保と自宅待機というルールによって、一部の人々は周囲との交流の機会を失った。マリリン・リッチリングさん(76)と夫のジョンさん(73)は、パンデミック前には、友人たちとのスクエアダンスに多くの時間を費やしていたが、夫婦ともに持病があるため、外出を控えるようになった。

「教会と家族を除けば、スクエアダンスは私にとって唯一の気晴らしでした。教会は閉鎖、ダンスも中止」とマリリンさんは言う。「私は家に閉じこもって、何もできませんでした」と彼女は話す。

ギャラリー:リタイア後を楽しむ街サンシティ、コロナ下でも生き生き 写真24点(写真クリックでギャラリーへ)
「サンシティ・スクエアーズ」はスクエアダンスとラウンドダンスを楽しむクラブで、メンバーは60人を超える。パンデミック前には、週に2回集まっていたが、3月以降、皆で踊ることはできなくなった。(Photograph by Kendrick Brinson)
サンシティ・スクエアーズの会長、マリリン・リッチリングさんと夫のジョンさん、サンシティの自宅前で。ふたりは35年前にダンスフロアで出会った。「当時の私は離婚したばかりで、ダンスレッスンではいつも男性が足りないと聞いていたのです」とジョンさんは振り返る。「その時、マリリンがやってきて、その夜のダンスのパートナーはいるかと尋ねたのです」(Photograph by Kendrick Brinson)

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