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ケニアの首都ナイロビの不安が渦巻く夕暮れ。学校の閉鎖、国際線の運航禁止、夜間の外出禁止など、政府が広範囲にわたる感染予防策を発表し始めた3月、多くの人々が密集して暮らすキベラ地区で、住民たちが雨宿りできる場所へと足早に向かう。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

ケニア:スラム街に訪れた深刻な事態(コロナ各国の現場)

2020.11.02
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この記事は、雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年11月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

ケニアの首都ナイロビでは、高級住宅街にも、数十万人が密集して暮らすスラム街にも、ウイルス感染の脅威が忍び寄る。

 ナイロビの巨大スラム「キベラ」に新型コロナがやってきたとき、ミスター・キベラに選ばれたミュージシャンは、自分にできることは何かと考えた。それが「感染予防ソング」の制作と精力的な発信だ。彼がそこに込めた思いを写真家のニコール・ソベキが聞いた。

ダニエル・オウィノ・オコ:私は「フットワックス」という名で知られています。プロのミュージシャンで地域のリーダーでもあり、妻と息子がいます。キベラ地区での日々の暮らしには、たくさんの物語があります。それを音楽やアートを通じて伝えようと、学校で演奏会を行ってきました。キベラをはじめ、世界中のスラム街のことを伝えているのです。以前は万事順調だったのですが、そこに新型コロナウイルスが現れました。

感染拡大への対応
ケニアで新型コロナウイルスの感染が最初に確認されたのは3月14日。夜間外出禁止令は3月27日に出され、100日目までに121人の死亡が報告された。
*7 日移動平均
(TAYLOR MAGGIACOMO AND IRENE BERMAN-VAPORIS, NGM STAFF. 出典: OXFORD COVID-19 GOVERNMENT RESPONSE TRACKER; EUROPEAN CENTRE FOR DISEASE PREVENTION AND CONTROL)
キベラの自宅で過ごす「フットワックス」ことミュージシャンのダニエル・オウィノ・オコと4歳の息子ジュリアン・オースティン。二人でフットワックスの曲『感染予防したかい?』を演奏する。地元の方言シェンを使った覚えやすい歌で、パンデミックのなか、自分や周囲の人たちの身を守るよう訴える。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

ニコール・ソベキ:ナイロビには、私が「非公式居住区」と呼ぶ地区が100カ所以上あります。こうした地区はひとくくりにしてスラム街と呼ばれることが多いですが、それぞれに名前があり、独創性と企業家精神にあふれています。ナイロビで最大規模の非公式居住区であるキベラには事業所やレストラン、ホテルのほか、野菜や肉、古着などを売る店が軒を連ね、新型コロナウイルスの流行前は活気に満ちていました。私は9年間ナイロビに住んでいますが、とてもエキサイティングな場所だと感じています。フットワックスはその象徴的な存在です。コンテストでミスター・キベラに選ばれたこともあり、キベラを知る人で彼を知らない人はいません。パンデミックが起きた当初から、彼はキベラが深刻な事態に陥ることを予見していました。

貧困を定義する三つの基準
世界銀行は各国が提供するデータを基に、貧困を三つのレベルに分類している。基準は中所得国で1日5.50ドル、低中所得国で1日3.20ドル、最貧国で1日1.90ドルだ。(出典:WORLD BANK)

次ページ:フットワックスがつくった感染予防ソング

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