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オリエンテ大学の生物学者ベルナルド・レイエス=トゥール氏の研究室に鮮やかな色彩を添えているコダママイマイ(Polymita picta)のコレクション。コダママイマイ属は6種知られているが、そのすべてがキューバの東海岸線沿いにのみ分布しており、絶滅の危機に瀕している。(PHOTOGRAPH BY BRUNO D'AMICIS)

「世界一美しいカタツムリ」に絶滅の危機、保護は実るか 写真9点

2020.07.27

 キューバのコダママイマイの殻の色は、パステルイエローからピンク、レンガ色、黒、真珠のような白、黄土色までさまざまだ。これらの鮮やかな色が、直径3cmほどの殻の渦巻きをより美しく見せている。自然が生み出した驚異とも言えるこの美しい殻を眺めていると、気まぐれに色を塗った、無限に続くらせん階段を覗き込んでいるような、なんとも言えない気分になる。

「カタツムリの楽園」と呼ばれるように、キューバには多彩なカタツムリが生息しているが、コダママイマイほど様々な色と複雑な模様の殻をもつものはほかにない。コダママイマイは古くからコレクターの間で人気があり、キューバを訪れる観光客に販売されたり、欧米に輸出されたりしている。

 こうした事情もあり、キューバ政府はコダママイマイ属(Polymita、ポリュミタ属とも)の6種すべてを近い将来に絶滅するおそれのある絶滅危惧種に指定している。野生のコダママイマイを採取することは10年以上前から違法であり、野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)も、2017年からコダママイマイの取引を禁止した。

レイエス=トゥール氏の研究室でコダママイマイを手に載せる生物学者のマリオ・ゴルディロ氏。コダママイマイについては、野生での生息数をはじめ、ほとんどわかっていない。(PHOTOGRAPH BY BRUNO D'AMICIS)

「コダママイマイは地球上で最も美しいカタツムリと呼ばれています」と、写真家のブルーノ・ダミチス氏は言う。コダママイマイの魅力に取り憑かれた彼は、この世界一美しいカタツムリや、保全に取り組む研究者や保護活動家たちを撮影するため、2019年に母国イタリアからキューバに渡った。ダミチス氏は、コダママイマイの美しさを余すことなく見せることで、違法な採集だけでなく、開墾による生息地の破壊や侵略種による捕食、気候変動など、彼らが直面している様々な脅威についての認識を広め、保護に向けた人々の努力を促したいと願っている。

 コダママイマイは、特定の植物が分布する、キューバの東海岸線に沿って細く伸びる地域に生息している。生息数は不明だが、この狭い領域にしか見られないのは、コダママイマイにとって好ましい種類の植物からなる、微小な生息地に依存しているからだ。例えば、6種のコダママイマイの中で最も鮮やかな色をしたサルフローサ(P. sulphurosa)は、野生動物が多く生息するアレハンドロ・デ・フンボルト国立公園の近くの数平方kmの範囲でしか見られない。

写真家のブルーノ・ダミチス氏と生物学者のノービス・エルナンデス氏は、生きたブロケリ(P. brocheri)を茂みの中で見つけるのにまる1日かかった。「干し草の山の中から針を探すようなものです」とダミチス氏は言う。(PHOTOGRAPH BY BRUNO D'AMICIS)
サルフローサ(P. sulphurosa)は、コダママイマイの中でも特に鮮やかな色と模様をもつ。(PHOTOGRAPH BY BRUNO D'AMICIS)
キューバ東部のトア川の河口に近いエル・ユンケ山から昇る太陽。この地域では、コダママイマイなどのカタツムリのほかに、オウム、ソレノドン(トガリネズミに似た哺乳類)、ハチドリ、珍しい植物などが見られる。(PHOTOGRAPH BY BRUNO D'AMICIS)

 基本的に、コダママイマイは樹上にすみ、地衣類やコケ植物を食べている。これらに含まれるミネラルが、コダママイマイの殻に鮮やかな色を与えている。鮮やかな色彩が捕食者から身を守るのに役立っているのか、それともほかに利点があるのかは不明だと言うのは、キューバ、サンティアゴデクーバにあるオリエンテ大学の保全生物学者で、カタツムリの専門家でもあるベルナルド・レイエス=トゥール氏だ。コダママイマイは、同じく絶滅の危機に瀕しているキューバカギハシトビなどの希少な在来種の食料源として、生態学的に重要であるだけでなく、コケや樹皮についた菌類を食べることで、コーヒー農園などの樹木の保全にも役立っている。

次ページ:「組織的な密輸ネットワークがあるのは確かです」

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