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ラーマ・ハッサン・マフムードさん。ブラオのIDPキャンプで撮影。(Photograph by Nichole Sobecki)

困窮するソマリランド、女性たちを追い詰める性暴力と人身売買

2020.06.28
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「まるで毒を盛られたかのようでした」と、ソマリランドに暮らす女性ラーマ・ハッサン・マフムードさんは言う。

 彼女は家畜のヤギとヒツジ300頭、ラクダ20頭をいっぺんに失った。最後のラクダが死んだ後、ラーマさんの家族は、隣人からミルクをもらってしのいでいたが、やがてほかの家の家畜も死んでいき、じきに皆で分け合うこともできなくなった。

 村の人たちは、お金を出し合ってトラックを借りた。50人がトラックに乗り込み、ひと晩かけて、ソマリランド中央部にあるブラオの街へとたどり着いた。道中では、廃材やビニールシートで作った小屋が立ち並ぶ、急ごしらえの集落をいくつも通り過ぎた。

 こうした集落には、ラーマさんと同様に、以前は自給自足の生活をしていたものの、今では政府や人道支援団体からの食糧配給に頼って暮らしている人々が集まっている。

ソマリランドでも特に大きな避難民キャンプのひとつ、ブラオのIDPキャンプの夕暮れ。(Photograph by Nichole Sobecki)

 ソマリランドは「アフリカの角」に位置するソマリアの自治領で、1991年に今なお続く内戦が勃発したことをきっかけに独立を宣言した。多くのソマリ人は半遊牧の牧畜民で、はるか昔から家畜と一緒に緑の草原を求めて移動してきた。しかし、近年続く干ばつによって、その暮らしは急速に失われつつある。(参考記事:「超速とカート宴会の国、ソマリランド」

 多くのソマリ人と同じく、ラーマさんは自分の生まれた年を記録しておらず、毎年の雨で年齢を数えている。彼女は「ビヨバダン(たくさんの水の意)」と呼ばれる年に生まれたため、現在はおそらく36歳前後と思われる。夫と12人の子供たちと一緒に、ラーマさんはブラオ郊外にある避難民のための広大なキャンプに居を定めた。

 アフリカの角の気候が変化し始めたのは、30年ほど前のことだ。最初はゆっくりだったその変化は、突如としてスピードを上げた。2016年に深刻な干ばつが起きると、多くの家畜が倒れ、翌年、翌々年の干ばつがそれに追い打ちをかけた。(参考記事:「ソマリア、干ばつで大量餓死の危機高まる」

ソマリランドの乾燥した大地。シェイクにある植民地時代の廃墟の中から撮影した。(Photograph by Nichole Sobecki)

 ソマリランドの主要産業である牧畜に支えられた経済は70パーセント縮小。作物は育たず、コレラや急性下痢などの病気が流行した。3年もたたないうちに、50万人から80万人、つまりソマリランドの人口の4分の1近い人々が、この荒れ果てた土地を離れた。

 米アリゾナ大学の気候専門家ジェシカ・ティアニー氏は2015年の論文で、同地域が過去2000年間のどの時期よりも急速に乾燥しつつあることを報告した。

「気候変動を疑う人がまだいるならば、ここに来てみれば納得するでしょう」と、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)ハルゲイサ支局長のサラ・カーン氏は述べている。

ギャラリー:困窮するソマリランド、女性たちを追い詰める性暴力と人身売買 写真18点(画像クリックでギャラリーへ)
2019年12月、ソマリランドのブラオ郊外にある国内避難民(IDP)キャンプで、一家が暮らす小屋を解体するサバド・アリさん。アリさんらは干ばつで家畜が死んだことから2016年12月にここへ来たが、政府から、この場所は紛争地域にあたるため移動するよう言われたという。(Photograph by Nichole Sobecki)

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