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地元のアーティストと団体が町中の壁に壁画を描き、社会的距離の確保と手洗いを呼び掛けている。(PHOTOGRAPH BY BRIAN OTIENO)

「コロナにおびえている暇はない」アフリカ最大級のスラム街は今 写真15点

2020.06.12
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 キベラは、ケニアの首都ナイロビにあるアフリカ最大級のスラム街。そこで育ったブライアン・オティエノ氏は、11歳のイースターの日に、ある劇を見て将来の職業を決めたという。それは、十字架にはりつけられる前のキリストがゴルゴタの丘まで歩くシーンだった。

「イエス・キリスト役の男性がいて、その後をついていく人々は、鞭で彼を打つ演技をしていました。あの場面をとらえて、永遠のものにすることができたらと思ったんです」。現在27歳のオティエノ氏は、ナイロビを拠点にフォトジャーナリストとして活動している。

 2020年、キベラは例年とはまるで違うイースターを迎えた。新型コロナウイルス感染症のせいで、祝賀ムードはすべて吹き飛んだ。「イースターだと気づかずに当日を過ごしてしまった人もたくさんいました。教会の礼拝も、休日のイベントも何もありませんでした」と、オティエノ氏は語る。

キベラで4人の子どもを育てるシングルマザーのルース・カヴァナさんは、卵、ポテトチップス、ソーセージの軽食などを売っていたが、ケニアでコロナウイルス患者が発生してから、1カ月間店を閉じた。(PHOTOGRAPH BY BRIAN OTIENO)

 キベラに住む人々にとって、コロナウイルスは数ある困難のうちのひとつにすぎない。自分と家族を養うだけで精一杯という日常では、コロナウイルスの脅威など色あせて見える。「生きるための食べ物を得るために必死で働いているときに、コロナとかいうもののことを考える時間などありません。話には聞いているけれど、そんなものにおびえている暇はないんです」

 泥の壁とブリキの屋根で作られた粗末な家が密集するキベラの人口は、調査によって異なるが、国連人間居住計画(UN-HABITAT)は50万~70万人と推定している。電気や水道が引かれている家はほとんどなく、1日の平均世帯所得はおよそ200円以下だ。

4月、キベラの南端を流れる川の土手に立つ子どもたち。キベラは推定50万~70万人が密集して暮らす、アフリカ最大級のスラム街だ。(PHOTOGRAPH BY BRIAN OTIENO)

 今のところ、アフリカ大陸のコロナ感染例は少ない。6月11日の時点で、ケニアの感染確定者は3094人、死者は89人にとどまっている。感染拡大を防ぐために、政府はナイロビで午後7時から翌朝5時までの厳格な外出禁止令を出し、公共の場ではマスクの着用を義務付けている。キベラへの出入りは自由だが、感染が急速に拡大するようなことがあれば、全面的な都市封鎖となる可能性もある。

3月、ケニア政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ナイロビにおける午後7時から翌朝5時までの夜間外出禁止令を出した。午後7時前、キベラの通りは多くの人でにぎわっていた。(PHOTOGRAPH BY BRIAN OTIENO)

 公衆衛生当局はすぐに、感染症の予防戦略は現地の状況に合わせたものでなければならないと気づいた。アフリカの大都市では、労働市場に占める日雇い労働者の割合が圧倒的に高い。彼らは非正規雇用であるため、公衆衛生の危機が発生しても、職場から手当てや保障が受けられない。

ギャラリー:コロナがやって来たアフリカ最大級のスラム街は今 写真15点(写真クリックでギャラリーページへ)
ウイルス検査に訪れたキベラの住人の情報を記入する医療従事者。(PHOTOGRAPH BY BRIAN OTIENO)

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