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6月6日土曜日にワシントンD.C.で行われた抗議活動の最中、リンカーン記念館で演説をする、抗議団体「フリーダム・ファイターズDC」のメンバー、フィロミナ・ウォンケンジさん。「われわれが要求したのは、通りの名前を黒人にちなんだものに変えることではない。われわれが求めたのは警察への予算打ち切りだ。若者を甘く見てはいけない。われわれは無視できない力を持っている」(PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)

人種差別抗議デモ、人種を超えて広がる人々の思いと闘い

2020.06.10
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 6月6日土曜日、米国ワシントンD.C.のラフィエット広場公園周辺には、抗議のプラカードを持つ人たちと、それと同じくらい大勢のベビーカーを押して歩く人たちが、続々と集まってきた。5月25日の戦没将兵追悼記念日に、ミネアポリスの警察官によって首を膝で9分間近く押さえつけられて殺されたジョージ・フロイドさんの死に抗議するためだ。

メリーランド州から来たモハメド・バンドゥさん(左、20歳)とジェネシス・ラモスさん(19歳)。「こんな風に大勢が集まっている光景を見られるなんて、嘘みたいです。これには大きな意味があります」と、モハメドさんは言う。(PHOTOGRAPH BY NATE PALMER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ヘンリー・カウチさんは、米国での抗議運動の高まりは、多くの人が同じ信念を持っているという事実を示していると語る。「この運動を通して、人々は人種やジェンダーを超えて国として団結するでしょう」( PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
「前向きなエネルギーをもたらすために、花を持って子供たちを連れてきました」と語る、ニア・スチュワートさん。(PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ハワード大学の学生シェル・エヴァンスさん(30歳)は、ホワイトハウス近くのブラック・ライブズ・マター・プラザに9歳の娘を連れてきた。「娘にこれを見てほしかったのです。これは歴史です」(PHOTOGRAPH BY NATE PALMER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
10歳の息子と一緒にベンチに腰掛けるマイケル・シップマンさん(60歳)。「ただ傍観して変革の恩恵を受けるのは嫌なのです。わたしも変革に参加したい。息子にもそれを教えたいと思っています」(PHOTOGRAPH BY NATE PALMER, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 米国の主要都市のほとんどで大規模なデモが起こり、小さな町でも多くの抗議活動が行われた。世界中の人々が、フロイドさんの死に端を発したおおむね平和的な抗議活動に参加し、これをきっかけに警察の残虐性や、白人至上主義と人種差別の「パンデミック(世界的大流行)」と呼ばれる問題が、一気にクローズアップされるようになった。

 英国ロンドンからケニアのナイロビ、ドイツのベルリン、日本の東京、オーストラリアのメルボルン、中国の北京に至るまで、人々は公共の場で行進し、スピーチを行い、歌を歌い、膝をついて無言のデモンストレーションを行った。その目的は、警察の残虐行為、人種間の暴力、人種差別をなくさなければならないというメッセージを伝えることだ。

 世界的な抗議運動が起こった6日の土曜日は、3月にケンタッキー州ルイビルの自宅で、容疑者の家と勘違いして侵入した警察官に殺されたアフリカ系アメリカ人の救急医療技術者、ブレオナ・テイラーさんの27歳の誕生日の翌日だった。

 テイラーさんの死のニュースに加え、2月にジョギング中に殺されたジョージア州のアーマウド・アーベリーさんの事件などの人種差別的動機による数々の殺人が相まって、フロイドさん殺害の直後に、暴力、火災、略奪の嵐が巻き起こった。人種問題をめぐる緊張が米国で高まっていることが世界に伝えられる中、白人至上主義の解体、警察の予算打ち切り、人種関連犯罪に関する法強化の必要性が、国民最大の関心事となっていった。

 6月6日を前に、世界中の抗議者たちが抱いていたのはおそらく、自ら証言者となり、反対を表明しなければならないという思いだろう。ワシントンD.C.市長のミュリエル・バウザー氏によって「ブラック・ライブズ・マター・プラザ」と改名され、黄色いペイントで特大の「BLACK LIVES MATTER(黒人の命は重要だ)」の文字が描かれた16番街には、大勢の人が集まった。通りの先には、ドナルド・トランプ米大統領が1日、聖書を掲げて写真撮影を行った教会が建っている。

4歳の息子を抱いたディアンジェロ・ガーヴィンさん(23歳)。「誇り高き黒人としてここに来ました」(PHOTOGRAPH BY NATE PALMER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
スプレーで「警察の予算を打ち切れ」とペイントする抗議者たち。(PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ギャラリー:米国の人種差別抗議デモ、それぞれの思いを聞いた 写真20点(写真クリックでギャラリーページへ)
「Black Lives Matter(黒人の命は重要)」のスローガンは、今や世界中に広がっている。(PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ポーズを決めるクラッチフィールドさん一家。現場の雰囲気を体感するためにやってきたという彼らは、制度的な変革が起こることを期待している。(PHOTOGRAPH BY DELPHINE DIALLO, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 土曜日に12歳の誕生日を迎えたメサイア・マッキンリーくんと10歳の弟イェシュアくんは、両親に連れられてブラック・ライブズ・マター・プラザにやってきた。

「わたしは息子たちに自立した強い人間になり、自分自身をはっきりと表現する方法を知って欲しいのです」と、父親のボンデル・マッキンリーさんは言う。

 マッキンリーさんは息子たちの将来を心配する一方で、楽観的な要素もあると語る。「息子たちは今日、多くのことを学びました。これほど大勢の人たちがいる中に来たのは初めての経験でしたが、プラカードや人々が交流する姿が、彼らに影響を与えていると感じます」

次ページ:「わたしには決して理解できない。それでもわたしは立ち向かう」

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