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インド、ラクナウ郊外の故郷の村に向かうトラックの荷台に乗り込む出稼ぎ労働者たち。(Photograph by Saumya Khandelwal)

出稼ぎ労働者が一斉に失業したインド、貧困が農村を襲う 写真16点

2020.05.30
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 ある春の日の朝、インド北部ウッタル・プラデーシュ州の州都ラクナウの郊外で、2人の男性が手足を折り曲げて眠っていた。1人は使い古しの毛布の上で、もう1人はどこかで拾ってきたらしい白い麻袋の上で寝ている。そばには荷物をくくりつけた自転車が置いてあった。

 少し離れたところにも、同じような支度の男性が3人寝ていた。彼らの服や髪は砂まみれで、旅の汚れや汗が肌にこびりついていた。

 インドのモディ首相が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのロックダウン(都市封鎖)を5月3日まで延長すると発表した翌日の4月15日、5人は自転車に乗ってラージャスターン州の州都ジャイプールを出発した。目的地は約1000km離れたビハール州のゴパルガンジだ。

がらんとしたラクナウ駅。3月下旬に政府がインド全土のロックダウンを発表して以来、列車の運行は止まっている。(Photograph by Saumya Khandelwal)
ラクナウ駅。乗客が乗車前に医師の診察を受ける列に並ぶ。ロックダウンから6週間が経過した5月、政府は出稼ぎ労働者を帰郷させるための列車の手配を始めた。(Photograph by Saumya Khandelwal)
ラクナウ駅でバスを待つ人々。インドの都市では推定1億3900万人の日雇い労働者が働いている。そのほとんどが地方からの出稼ぎ労働者で、地下経済で働く人も多い。(Photograph by Saumya Khandelwal)

 5人はジャイプールで部屋を借りて共同生活をしながら、建設作業員として働いていた。収入は1日4~5ドル。彼らはコロナ禍で職を失ったが、3月にロックダウンが宣言されたときには、政府の要請どおりジャイプールを離れずにいた。しかし、4月にロックダウンが延長されると、食料がなくなる心配が出てきたので、故郷に帰ることにしたという(その後、ロックダウンは再度延長され、5月31日までとなった)。

 荷物は自転車に載せられる分だけで、これまでの5日間に約600kmを走ってきた。疲労で走れなくなるまで、しばしば夜を徹して走ってきた。ジャイプールで石工として働いていたウメシュ・クマールさんは、「眠ったのは2晩だけです」と言う。「スナック菓子を持ってきました。途中でキュウリを買って食べています」

【ギャラリー】職を失い、貧しい故郷へ帰るインドの出稼ぎ労働者たち 写真16点(写真クリックでギャラリーページへ)
ダルメンドラ(黒い服の男性)と仲間たちは、政府が3月にロックダウンを宣言した後、アグラからバライチまで約300kmを歩き通した。ヒッチハイクを試みたが、トラックの運転手たちはウイルス感染を恐れて止まってくれなかったという。(Photograph by Saumya Khandelwal)

 インドの都市部には、彼のような出稼ぎ労働者が推定1億3900万人もいる。多くは農民で、借金を返済したり、種子や農機具の購入費用を稼ぐために日雇いの仕事をしている。地下経済で働く人も多く、組合や政治家の保護を受けられず、賃金や福利厚生は雇用主の裁量に委ねられている。ロックダウンの発効により、数百万人の出稼ぎ労働者が都市に足止めされ、職を失った。

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