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セントへレンズ山の火口に形成されたモスラ洞窟内で、発煙筒を点火するドイツ、ルール大学の科学者アンドレアス・フリッチ氏。その煙で、噴気孔から出る高温ガスがどのように洞窟を削り取ったかを調べることができる。(PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)

世にも奇妙な場所 火山のクレーター氷河にできた氷の洞窟を探検

2020.06.14
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 クレーター氷河にできた「ゴジラ洞窟」と名付けられた穴の底へ、写真家のエリック・グース氏が降りてみると、そこには炎が作り出した氷の世界が広がっていた。

 始まりは40年前の1980年5月18日。米ワシントン州で、カスケード山脈の一部をなすセントヘレンズ山が噴火した。この噴火で山頂は400メートル削られ、大量の土砂がノース・フォーク・タートル川へ流れ込んだ。時速500キロの猛スピードで噴き上げられた火山灰は上空24キロまで達した。大噴火の後に残されたのが、標高1900メートルに形成されたU字型の巨大な黒い火口(クレーター)だ。

2004~2008年に火山は再び活動をはじめ、火口の中心にある溶岩ドームから噴出した溶岩が新しい溶岩尖塔を形成した。その結果氷河は2つに引き裂かれ、ドームを抱える2本の腕のように伸びて、火口の北の縁へ向かって流れ出した。奥に見えるのはスピリット湖。(PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)

 火口の内側は、南側の壁にさえぎられるため、一年にわたって太陽がほとんど当たらない。そのおかげで、火口に降り積もった雪は夏になっても解けずに残り、クレーター氷河が生まれた。氷河の厚さは200メートル、広さは約1.3平方キロメートルに達している。今なお、この氷河は成長している。

 氷河の表面を見ると、点々と氷の裂け目がある。これらは氷の洞窟への入り口だ。氷の下の火口から噴き出す高温の火山ガスのために、氷河の内部が解けて縦横に穴ができ、ドーム型の空間を作り出しているのだ。

2017年、クレバス洞窟の縁を調査する救急隊長のトム・ガール氏。(PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)
2013年夏に発見されたゴジラ洞窟に入る探検隊。非火山性氷河の洞窟は通常横方向に形成されるが、火山の噴気孔から出る高温のガスと水蒸気が作り出す洞窟は縦に伸びている。(PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)

 グース氏は、研究チームと一緒に数年前からこの洞窟を探検している。研究者たちは、詳細な地図を作成したり、洞窟にすみついた生命を調査している。水蒸気をたっぷり吸いこんだ土にはキノコや花、コケが生え、氷の下には微生物も発見された。鳥や風に運ばれてきた種子も見つかっている。種子は移動する氷の中で数カ月~数年の間休眠状態にあったが、洞窟の中で温められたものは発芽していた。日の当たらない暗闇の中で太陽を求めて、木の芽は驚くほどの速さで成長していた。

 グース氏は、最近になって私(筆者のクレイグ・ウェルチ氏)にこう話してくれた。「洞窟の最深部にたどり着いて、自分たちがここへ足を踏み入れた最初の人間なのだと思ったら、本当に気持ちが高揚しましたよ」

ギャラリー:火口にできた氷河に高温ガスと水蒸気が彫った神秘の氷の洞窟 写真12点
セントへレンズ山の火口にできたクレバス洞窟に初めて入ってみて、予想外の広さに驚く探検隊。(PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)

 グース氏と調査隊の一行は、この「氷河洞窟」に最初に足を踏み入れた人間であり、同時に最後の人間になる可能性がある。既にセントへレンズ火山国定公園の大部分が全面立ち入り禁止となっているからだ。この火口にできた氷河への探検も研究目的のため、特別に許可されたものだ。脆く壊れやすい環境を守る目的もあるが、とにかく危険であることが最大の理由だ。

 探検隊はロープを使って洞窟に入る。ロープと体をつなぐハーネスには有毒ガス探知器を取り付ける。グース氏は、岩に挟まれて身動きが取れなくなったことがあった。また、悪天候のため迎えのヘリコプターが着陸できず、チームメンバーとともに洞窟で一夜を明かしたこともあった。

 これら氷河洞窟は一時的な産物にすぎず、いずれは消滅する運命にある。洞窟だけでなく、セントへレンズ山全体が今も変化し続けている。

東西に分かれて溶岩ドームを取り巻くように流れるクレーター氷河について、写真で説明する公園職員。 (PHOTOGRAPH BY ERIC GUTH)

次ページ:変化し続けるセントヘレンズ山

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