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救急治療室で働く研修医1年目のエマ・ロジャーズ氏。急速な感染拡大で不安に襲われることもあるが、地域の人々が病院に支援の手を差し伸べてくれたと話す。フィラデルフィアにあるペン・プレスビタリアン医療センターの外で撮影。(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

新型コロナ、渦中に放り込まれた米国の新米医師たち

2020.04.19
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 ビッキー・ジョウ氏は、2019年の大みそかを救急治療室で過ごした。と言っても、患者としてではない。27歳のジョウ氏は、医師になって1年目の研修医として、米ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学病院の救急治療室に勤務していた。いつものように8時間のシフトを終えると、真夜中に打ち上げられる年越しの花火を見るため、友人の家へ急いだ。

「ぎりぎりで間に合いました」というジョウ氏が、友人宅の屋上で高層ビルと花火の眺めを楽しんでいたとき、中国の武漢では全く新しいウイルスが静かに活動を始めていた。そして新しい年、新型コロナウイルスの年が幕を開けた。

【関連ギャラリー】新型コロナとの闘い、新米医師たちの奮闘 写真3点(写真クリックでギャラリーページへ)
「救急治療室の医師が特殊なのは、どんな患者でも全て受け入れることです」と、救急医療研修医1年目のビッキー・ジョウ氏は言う。「あなたが誰であっても、どんな症状を訴えてきても、私たちは全力で治療に当たります」(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 たとえ世界的な感染症の流行という危機がない状態だったとしても、医学生から研修医になるというのは大きな変化だ。米国における研修医とは、大学卒業後に4年制のメディカルスクールを終了した見習い医師のことを言う。

「最初の6カ月間が特に大変です。研修医は、馬車馬のように働かされます。朝は誰よりも早く出勤して、全てをノートに書きとり、みんなの注目を浴びるなかで、上司である医師に報告をしなければなりません」

 ジョウ氏が少しずつ仕事に慣れ始めた頃、中国の新型コロナウイルスは、じわじわと感染が拡大していた。誰もがそうするように、ジョウ氏も新聞の報道を追っていた。上海に住む祖父母から、現地の様子も聞いていた。「でも、ここからははるか遠く離れていました。1月の時点では、私の働いている病院では影響は見られませんでした」(参考記事:「新型コロナ、最前線で闘うナースの8日間 写真10点」

 それが今、ジョウ氏をはじめ多くの新人医師たちが、100年に一度というパンデミックの真ん中に突如として放り込まれている。

患者を診ながら実地で学ぶ

 同じフィラデルフィアにあるペン・プレスビタリアン医療センターでは今年1月と2月に、コロナウイルスとは関係なく、病院総出で災害時に備えた緊急訓練が実施された。外科や入院病棟、集中治療室など、様々な部署からスタッフを集め、一度に大量の患者が押し寄せた場合を想定して訓練を行った。

 訓練の運営に携わった研修医3年目のジョナサン・バー氏(29歳)は、「想定していたのは、放射性物質を飛散させる爆弾や銃乱射事件などです。エボラのことも頭にありました。救急救命士や患者の役は、医学生がやりました。FBIも見学に来ましたよ」と話す。

 訓練の一環として、病院の外に除染テントを設置した。その後米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広まり始めると、このテントが一時的な患者の受け入れ場所になった。研修医3年目のバー氏は、現在このテントで働いている。病院の最初の防護壁として、来院者はまずこのテントで呼吸器症状がないか確認される。疑わしい場合はマスクと色分けしたタグを渡され、未感染の患者とは別の治療室へ振り分けられる。

「コロナに感染しているかもしれない患者と、足首を骨折しただけの患者を一緒にするわけにはいきません」と、バー氏は言う。

「これまでずっと、こうした時のために訓練してきました」と話すジョナサン・バー氏は、16歳で救急救命士の見習いになって以来、常に緊急事態へ備えてきた。現在救急医療の研修医として3年目になるバー氏は、ペン・プレスビタリアン医療センターの外に設置されたテントで、COVID-19の患者のトリアージに当たっている。(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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次ページ:医療スタッフ全員が臨戦態勢

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