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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を抑えるため、救急救命士、消防隊員、ソンコ・レスキュー隊のボランティアがナイロビ中央ビジネス街の消毒作業に当たった。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)

アフリカの大都市、ナイロビの新型コロナ対策 外出禁止令で格差が浮き彫りに

2020.04.16
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ギャラリー:ギャラリー:ケニア、ナイロビまで新型コロナ到達 感染症と対峙するアフリカの人々 21点(画像クリックでギャラリーへ)
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ウフル・ケニヤッタ大統領が日没から日の出まで厳しい外出禁止令を出したため、ナイロビの高速道路に車は1台も通らない。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)

 私(写真家のニコル・ソベキ)は、ナイロビを拠点に8年間、活動している。難民キャンプは、数えきれないほど訪れた。ソマリアでは気候変動の影響を、南スーダンでは紛争の様子を撮影した。ちょうど1年前は、コンゴ民主共和国の東部でエボラウイルスとの闘いを取材していた。こうした長期の取材旅行の合間に、ナイロビに戻ってきては、つかの間の休息をとる。そして今、私の第2の故郷であるこのナイロビを、新しい危機が襲っている。新型コロナウイルスによるパンデミックで変貌する都市の様子を、私は世界に伝えたいのだ。(参考記事:「エボラ大流行、現地での闘いを追った 写真20点」

普段は賑わいをみせるナイロビの通りだが、現在は午後7時から翌朝5時まで、すべての活動が停止している。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
普段は賑わいをみせるナイロビの通りだが、現在は午後7時から翌朝5時まで、すべての活動が停止している。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
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 キベラで、人にぶつからないように道を歩くのは困難だ。つまり、この環境ではウイルスなどいとも簡単に広まってしまうだろう。辺りには揚げ魚の匂いが漂い、行商人の呼び声や、バイクのエンジン音、手作りのボールを追う子どもたちのはしゃぎ声が響いている。このように、キベラの路地が活気にあふれているのは、COVID-19のことを知らないからではない。予防しようにも手立てがないからだ。

医療体制は脆弱

 先週、私は救急救命士の一日に同行して取材した。彼らは、コロナウイルス患者をナイロビの病院へ搬送するという危険な任務に就いている。救急車の車体に太陽が照り付けるなか、私たちは何時間も待機していた。1人の救命士が、ストレッチャーの上でくつろいでいた。COVID-19の隔離センターに指定されているムバガティ病院とケニヤッタ国立病院は満床だった。他の病院は、医療スタッフ用のマスクや手袋、防護服がないことを理由に患者の受け入れを拒否している。ナイロビでは、多くの医師や看護師が家族への感染を防ぐために家族と離れて暮らしている。

ギャラリー:ギャラリー:ケニア、ナイロビまで新型コロナ到達 感染症と対峙するアフリカの人々 21点(画像クリックでギャラリーへ)
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いつもならにぎやかなウェストランドの夜も、今はひっそりと静まり返っている。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)

「時間との闘いです」。エガーズ氏はそう言って、保護具や検査キットの入手、医療関係者の訓練、治療と隔離施設の設置が急務であると強調した。「脆弱な医療体制は、崩壊するのも早いです。ここも崩壊するのではないかと不安です」

 20年3月12日にケニアで最初の新型コロナウイルスの感染者が確認されると、政府は徹底的な封じ込め政策に乗り出した。国境と領空を封鎖し、その後ナイロビとその他3つの「感染」地域への出入りを3週間禁止した。政府機関と民間企業は、社員に在宅勤務を要請し、日没から日の出まで外出禁止令が出された。

ナイロビ郊外のキアンブ地区に住むアリス・オワンボさんは、3週間後に生まれる予定の娘のために子ども部屋を用意した。今は9歳の息子ハキーム・チャールズ君と一緒に自主隔離しているが、不安は尽きないという。「まさかこんなことが起こるなんて、思っても見ませんでした。今は医者も病院も危険です。病院は、出産する母親を守るために全力を尽くしていることを願うしかありません」 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
ナイロビ郊外のキアンブ地区に住むアリス・オワンボさんは、3週間後に生まれる予定の娘のために子ども部屋を用意した。今は9歳の息子ハキーム・チャールズ君と一緒に自主隔離しているが、不安は尽きないという。「まさかこんなことが起こるなんて、思っても見ませんでした。今は医者も病院も危険です。病院は、出産する母親を守るために全力を尽くしていることを願うしかありません」 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
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フトワックスという名で活動するミュージシャンのダニエル・オウィノさんと4歳の息子ジュリアン・オースティン君が、新曲バラード「Have you sanitized?(消毒した?)」を披露する。キベラに住むフトワックスは、ヨーロッパでCOVID-19が猛威を振るっていることを知り、音楽で人々を助けたいと話す。「何が起こっているかを知ってもらい、感染予防のためにやるべきことを伝えるのが私の仕事です。自分たちのことは自分たちで解決しなければなりません」と話す。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
フトワックスという名で活動するミュージシャンのダニエル・オウィノさんと4歳の息子ジュリアン・オースティン君が、新曲バラード「Have you sanitized?(消毒した?)」を披露する。キベラに住むフトワックスは、ヨーロッパでCOVID-19が猛威を振るっていることを知り、音楽で人々を助けたいと話す。「何が起こっているかを知ってもらい、感染予防のためにやるべきことを伝えるのが私の仕事です。自分たちのことは自分たちで解決しなければなりません」と話す。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
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20年3月29日、ナイロビ郊外の町ルアカにあるマムラカ・ヒル教会で日曜礼拝が始まるのを待つ聖歌隊メンバー。3月中旬から教会の礼拝が制限されているため、この日の礼拝はネットでライブ配信される。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
20年3月29日、ナイロビ郊外の町ルアカにあるマムラカ・ヒル教会で日曜礼拝が始まるのを待つ聖歌隊メンバー。3月中旬から教会の礼拝が制限されているため、この日の礼拝はネットでライブ配信される。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
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ミュージシャンでDJのブリンキー・ビルさんは、ナイロビのンゴング通りから外れた自宅スタジオで、ライブ配信している。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)
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 ところが、外出禁止令が出てから最初の5日間で、確認されているだけでも7人が警官に殺害された。ある13歳の少年は、ナイロビの自宅バルコニーに立っていたところ、腹部を撃たれて死亡している。港町のモンバサでは、フェリーに乗ろうとしていた数百人の通勤客に向かって警官隊が催涙ガスを放った。ソーシャルメディアには、警官が警棒で民間人を殴っている動画が拡散した。

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COVID-19に感染した患者をホテルから病院へ搬送するため待機するナイロビの救急救命士キャロル・ワンジョヒさん。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)

 これに対してアムネスティ・インターナショナル・ケニアをはじめ20の人権団体が、3月28日に声明文を発表した。「警察の過激な取り締まりに衝撃を受けました。国内の他の地域からも、被害者や目撃者の証言が続々と寄せられています。また、警官が楽しそうに民間人を襲っている動画もあります」。4月1日、国民からの激しい批判を受けて、ウフル・ケニヤッタ大統領は「一部で行き過ぎた行為があった」として、全国民へ謝罪した。

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夜が明けたばかりで既ににぎわい始めているキベラの路地。写真右側の壁画は、「一緒にコロナと戦おう」と訴える。キベラのように人が密集したスラム街では、その戦いに勝利することは厳しいものになる。 (PHOTOGRAPHS BY NICHOLE SOBECKI)

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文・写真=NICHOLE SOBECKI/訳=ルーバー荒井ハンナ

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