Photo Stories撮影ストーリー

海抜3000メートル付近に生える低木の林を進みながら、セイネクン・ビジャファニャさんが自分のラバをなだめすかす。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN FERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

先住民が守る聖なる山、部外者を拒む巡礼の旅に同行した(後編)

2019.12.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

南米コロンビアの高山に暮らす先住民アルワコ族が、部外者を拒む巡礼の旅に、ナショナル ジオグラフィックの取材チームを同行させた。背景にあるのは長老たちの危機感だった。

先住民が守る聖なる山、部外者を拒む巡礼の旅に同行した(前編)を読む

雪と氷に覆われた1951年1月のグアルディアン山。(PHOTOGRAPH BY ERWIN KRAUS)
雪と氷に覆われた1951年1月のグアルディアン山。(PHOTOGRAPH BY ERWIN KRAUS)
2019年9月までに、氷はほとんど解けた。残りの氷も30年以内に消えると予想されている。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN FERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)
2019年9月までに、氷はほとんど解けた。残りの氷も30年以内に消えると予想されている。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN FERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「この辺りは全部雪に覆われていました」

 片手で辺り一帯を示し、もう片方の手で植物をいじりながら、クレメンティーナ・ビジャファニャさんは言った。

「ここで目にする小さな木々や低木は、昔はありませんでした。寒くて育つことができなかったのです。山をずっと下った、比較的暖かいところでしか見かけないものでした」

「地球上に存在する氷の中で、気候変動に最も弱いのが、熱帯地域にある熱帯氷河です。その99%は南米にあります」と話すのは、コロンビア、ボゴタにある水文気象環境研究所の氷河学者、ホルヘ・ルイス・セバージョス氏だ。同氏はシエラ・ネバダの氷河後退を20年近く研究してきた。(参考記事:「ベネズエラ最後の氷河、十数年で完全に消滅か」

「私のキャリアは氷河学者として始まりましたが」と、セバージョス氏は話す。「歴史家として終わるのでしょう。ここの氷河は、私たちが生きているうちに消えるでしょうから」

「弟たち」を山に近づけないという方針に基づき、アルワコ族は、セバージョス氏が自らの目で氷河を観察するのを許したことはない。そのためセバージョス氏はコロンビア空軍から提供される衛星画像を使い、消えゆく氷を自分のデスクからモニタリングしている。

ギャラリー:先住民が守る聖なる山、部外者を拒む巡礼の旅へ 写真20点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:先住民が守る聖なる山、部外者を拒む巡礼の旅へ 写真20点(写真クリックでギャラリーページへ)
シエラ・ネバダ上流部の谷は、氷河が残していった岩屑で覆われている。この地方の小氷期は1800年代半ばまで続き、その間、辺りは氷河で覆われていた。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN FERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

アルワコ族なりの「支払い方法」

 12日間の山の旅で、私たちは道すがら何度も足を止めた。アルワコ族の巡礼では、自然界のバランスを元に戻すため、厳粛な祈祷を行うからだ。

 旅の間は夜明け前に起き、ラバに鞍を置いて支度をした。その後は曲がりくねった道を1日中歩いた。危険な崖を通り、苔むした森を抜け、緑の中を登り、もやに覆われた谷を過ぎて、山腹を流れる深い青色の川を渡った。フェリー氏と筆者同様、一行の多くは山地の奥まで登ったことはなかった。自分たちがいる場所のなじみのなさを受け止めながら、みな感覚が鋭くなっていた。

次ページ:アルワコ族が生まれた場所

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

Invisible Peoples 世界の少数民族

急速に均質化する世界で、なおも伝統を保つ少数民族の貴重な記録。今後、伝統が失われたり変容したりする前に、現在の姿を写真と文章で記録した。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:4,620円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ