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台湾、高雄のホテルからライブストリーミングを行うララ(35歳)。7万5000人近いフォロワーを獲得しているライバーだ。まだ幼い娘モンモンちゃんをアパートに置いて仕事に出掛け、さまざまなホテルの部屋に一人きりで座り、携帯電話で見ている人々に笑顔を振りまく。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

韓国、中国、台湾―― アジアのライブストリーマーと、そのファンたちの実像

2019.10.14
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ギャラリー:アジアのライブストリーマーとファンたち(写真クリックでギャラリーページへ)
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高級車の窓から外を眺めるハンセ。ソウルで撮影。「時々、私のライブストリーミングを誰もフォローしなくなるという悪夢を見ます」。ハンセはライバーの仕事で富を手にしたが、この仕事を始めてから、涙を流す日々が続いているという。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

 マーケティング会社メティス・インターナショナルのパートナー、ナン・チャン氏は、この世代は「ストリーミングプラットフォームでつながることが得意です」と話す。チャン氏は2016年から中国のライブストリーミング業界を調査している。「両親や兄弟、同僚の前では、何かを言うことや、本当の自分でいることができないのかもしれませんね」

 チャン氏によれば、中国が集団主義社会から個人主義社会へと急速に変化していることも、若者たちをライブストリーミングに向かわせている大きな要因だという。さらに1980年、厳格な一人っ子政策が導入されたことで、男の子を望む傾向に拍車がかかった。現在、何百万人もの20代男性がライブストリーミングを見ることで、同世代の女性が少ないという問題に対処している。 (参考記事:「中国、地方都市の縮小とそこに暮らす若者たち 写真15点」

彼女は私を愛していない

 ライブストリーミングのファンは「パラソーシャルな関係」の表れと言うことができる。お気に入りのライバーと一方的な友情を育み、報われているように感じているためだ。ソーシャルスキルがなく、現実世界では、他者からほとんどあるいはまったく見返りを得られない人にとって、パラソーシャルな関係はあたかも交友しているような錯覚を生み出してくれる。

 米ジョージタウン大学で心理学の助教授を務めるコスタディン・クシュレフ氏は、画面を見る時間と幸福感について研究している。研究の結果、携帯電話などのハイテク機器で交流をいくらしたところで、現実世界の人間関係と同等の恩恵を得られないことがわかった、という。

台湾、苗栗にある自宅の寝室で、お気に入りのライバー、ユートンのライブストリーミングを見るコンフーさん。女性とキスしたことがない彼も、オンラインの世界では、現実世界で得られない自信を手に入れられる。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
台湾、苗栗にある自宅の寝室で、お気に入りのライバー、ユートンのライブストリーミングを見るコンフーさん。女性とキスしたことがない彼も、オンラインの世界では、現実世界で得られない自信を手に入れられる。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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台北の店に入り、お気に入りのライバー、チャオヨーに贈るプレゼントを探すジュンジさん(42歳)。チャオヨーに会ったことはないが、いつかプレゼントを手渡したいと考えている。一部のライバーは交流会を開催しており、ファンたちはそこでプレゼントを渡すことができる。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
台北の店に入り、お気に入りのライバー、チャオヨーに贈るプレゼントを探すジュンジさん(42歳)。チャオヨーに会ったことはないが、いつかプレゼントを手渡したいと考えている。一部のライバーは交流会を開催しており、ファンたちはそこでプレゼントを渡すことができる。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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「理論的には、これらの機器は私たちをつなぐことができます」とクシュレフ氏は前置きし、「でも、直接的な交流をデジタル世界での交流に置き換えるうちに、つながりたくてもつながることができないという悪循環に陥ってしまうのです」と説明した。

 ジェンス氏によれば、ファンたちは大切にされていると信じているが、「結局、(ライバーは)お金を稼いでいるだけで、ファンは以前よりさらに大きな孤独を感じることになります」。それでも、動画が友情、さらには愛情を育む助けになっていると考えるファンも多い。「一部のファンは言います。『ライバーを追いかけるのは、自分の名前を知っている唯一の人だからだ』」

 ジェンス氏とリン氏はプロジェクト終了後、取材した台湾のジュンジ・チェンさんが、彼の最愛のライバー、ユートンを見ることをやめたと知った。チェンさんはリン氏に、「ライバーへの愛が報われることは決してないと気付いたため、これからは自分を大切にしたい」と語ったという。

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織物工場で働くため、台北にやって来たジュンジさんは、現実世界の友人はいないと考えている。ライバーは交友を提供してくれる存在であり、ジュンジさんはその見返りにバーチャルステッカーを送っている。毎月、収入の約3分の1をステッカーにつぎ込んでいる。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

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文=CLAIRE WOLTERS/写真=JEROME GENCE/訳=米井香織

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