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台湾、高雄のホテルからライブストリーミングを行うララ(35歳)。7万5000人近いフォロワーを獲得しているライバーだ。まだ幼い娘モンモンちゃんをアパートに置いて仕事に出掛け、さまざまなホテルの部屋に一人きりで座り、携帯電話で見ている人々に笑顔を振りまく。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

韓国、中国、台湾―― アジアのライブストリーマーと、そのファンたちの実像

2019.10.14
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ソウルのアパートで大食いの準備を行うフー・ミノ。フー・ミノは1度のライブストリーミングで450〜900ドルほどの収入を得ている。より多く、より早く食べるほど、稼ぎは増える。この日の挑戦は、ハンバーガー10個を10分で食べることだ。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
ソウルのアパートで大食いの準備を行うフー・ミノ。フー・ミノは1度のライブストリーミングで450〜900ドルほどの収入を得ている。より多く、より早く食べるほど、稼ぎは増える。この日の挑戦は、ハンバーガー10個を10分で食べることだ。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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バーチャルステッカーを手に入れるため、インスタントメッセージでファンと交流するフー・ミノ。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
バーチャルステッカーを手に入れるため、インスタントメッセージでファンと交流するフー・ミノ。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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ライバーの舞台裏

 ライブストリーミング界のルールは国によって異なる。

 ジェンス氏とリン氏が最初に立ち寄ったのは、中国の西安と北京にオフィスを持つライブストリーミングエージェンシー「レードゥー・メディア」だ。中国では、すべてのライバーが監視下に置かれ、政治の話題を配信することは禁止されている。2人が会ったライバーたちも例外ではなく、厳格な規則を課され狭い空間に暮らしていた。対照的に、台湾で出会ったライバーたちは自宅でライブストリーミングを行っていた。最後に2人は、韓国最大のライブストリーミング企業「アフリカTV」のライバーたちを訪ねた。中国とは違って、台湾、日本、韓国のライバーは政治的な議論も許されており、エージェンシーに所属する必要はない。

 ライバーの仕事は心身に害を及ぼすことがある。まず、深夜がピーク時間にあたるため、睡眠は不規則で、疲れもたまる。韓国には、カメラの前で大量の食べ物を食べる「モクバン」と呼ばれるジャンルがある。このジャンルで活躍するライバーは肥満になりやすい。一部のライバーは食べた後に下剤を飲むなどしており、健康への影響もある。実際、心不全になったライバーもいる。

 台湾の有名ライバー、ララは仕事に出掛けるとき、5歳の娘モンモンちゃんをアパートに置いていく。ララの母親はジェンス氏とリン氏に、娘には「本物の人間関係がないのではないか」と話していた。17メディアのアプリ「ライブAF」で、ララが7万5000人ものフォロワーを獲得しているにもかかわらずだ。

ギャラリー:アジアのライブストリーマーとファンたち(写真クリックでギャラリーページへ)
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犬のライバーとして有名なQジアン。台湾、高雄で開催されたファンとの交流会にて。Qジアンは小さな電気自動車に乗り、飼い主がファンの質問に答えている。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

 ライバーの成功はデジタル世界での人気とイコールだ。ファンを喜ばせたい一心で、不健全な行動を続けるライバーもいる。視聴者が離れることは、ライバーにとっては収入源が失われることを意味する。

「ライバーたちは常に不安を感じています。ファンたちがいつまで好きでいてくれるかわからないためです」とリン氏は語る。「ファンたちは指をスワイプするだけで、次のライバーのセッションに、簡単に切り替えることができますからね」

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台湾、高雄のショッピングモールで写真集のサイン会を開き、ファンたちとセルフィーを撮影するララ。収入にならない限り、ララのような有名ライバーがファンと直接会うことはほとんどない。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

 ライバーの仕事だけで生計を立てている人はほとんどいない。中国のソーシャルメディアアプリ「ウィーチャット」が2016年に公表したデータによれば、90%以上のライバーが仕事を持ち、2年以上活躍し続けるライバーはわずか17%だ。

 もちろん、17メディアのような企業は利益を得ている。「最終的な勝者はプラットフォームですよ」とリン氏は言う。

格好のターゲット

 32歳のコンフーさんは台湾、苗栗の実家で両親と暮らしている。コンフーさんは女性とキスしたことがなく、現実世界の女性よりネットのライバーの方が愛情を表現しやすいと感じている。でも、両親に知られたときの反応を恐れ、お気に入りのライバー、ユートンを見ていることは秘密にしている。

 コンフーさんのように、孤独を紛らわすためライブストリーミングを見ている独身男性は多い。若い男性が都市部の工場で働くため、家族が暮らす村を離れるアジア諸国では、こうした独身男性が多いのだ。近所に知人がなく、新しい環境でも孤独を感じないよう、彼らはライブストリーミングに依存する。 (参考記事:「研究室に言ってみた。依存症は厳罰主義では解決しない」

アパートのテレビに映る母親を見るララの娘モンモンちゃん。ララは仕事が忙しく、家を留守にしがちで、モンモンちゃんは母親の不在に慣れてしまった。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
アパートのテレビに映る母親を見るララの娘モンモンちゃん。ララは仕事が忙しく、家を留守にしがちで、モンモンちゃんは母親の不在に慣れてしまった。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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母親から目を背けるモンモンちゃん。ララは高雄の施設でホームレスを支援する自分の姿をライブ配信している。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
母親から目を背けるモンモンちゃん。ララは高雄の施設でホームレスを支援する自分の姿をライブ配信している。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)
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