Photo Stories撮影ストーリー

台湾、高雄のホテルからライブストリーミングを行うララ(35歳)。7万5000人近いフォロワーを獲得しているライバーだ。まだ幼い娘モンモンちゃんをアパートに置いて仕事に出掛け、さまざまなホテルの部屋に一人きりで座り、携帯電話で見ている人々に笑顔を振りまく。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

韓国、中国、台湾―― アジアのライブストリーマーと、そのファンたちの実像

2019.10.14
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日が沈むと、台北の夜空を「ララ」という女性の写真が照らし出す。高さ約30メートルの屋外広告に載ったララの顔が台北の街を見下ろしているのだ。ララは台湾で一二を争う有名なライブストリーマー(「ライバー」と呼ばれることが多い)だ。ライバーは、自分自身を撮影した動画をライブ配信する人々で、人気が出たごく少数は有名人の仲間入りだ。

 アジアには多くのライバーがいて、彼らがジョークを言う姿、食べる姿、眠る姿を、スマートフォンやコンピューターを通じて見る。人気が出れば報酬も青天井だ。中には、島を購入できるほどの富を築いたライバーもいる。ただ、私生活をさらけ出すこの仕事は、スターとなったライバーだけでなく、彼らのファンの双方の孤独を浮き上がらせる。

 台北の織物工場で働くジュンジ・チェンさん(42歳)は、工場での長い一日を終えた後、お気に入りのライバー、ユートンを画面越しに見る時間を楽しみにしている。台北で働くため、故郷の村を離れたチェンさんに、社会生活はほとんど存在しない。人間関係の相手といえば、直接会ったことのないFacebookの友人かライバーなのだ。

 ライバーのユートンからはチェンさんを見ることも、声を聞くこともできない。それでも、チェンさんにとっては本物の純粋なつながりであり、互いにやり取りしているとすら感じているようだ。人さし指で画面をタップしたり、スワイプしたりするだけで、チェンさんはこの感覚を長引かせることができる。コメント欄にライバーへの賛辞を書き込んだり、「バーチャルステッカー」を購入することでライバーに「投げ銭」して応援できたりする。

ギャラリー:アジアのライブストリーマーとファンたち(写真クリックでギャラリーページへ)
ストロベリー(24歳)は中国、西安でライブストリーミングを行う際、コンピューターのフィルターで顔を白く、細く見せている。中国のライバーたちは狭い空間で仕事をしており、政治の話題を配信することは禁止されている。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

 ステッカーは1枚数千ドルすることもある。最低賃金が1時間5ドルに満たない国の工場労働者にとっては法外な高値だが、チェンさんは収入の3分の1をステッカーにつぎ込む。チェンさんのような孤独な視聴者にとっては、ステッカーを購入してでも、ライバーとの交流はそれだけの価値があるからだ。 (参考記事:「スマホがあると退屈で集中力低下、海外の研究事例」

 ライブストリーミングアプリは、2006年、インターネットセレブリティーがカメラの前で話したり、食べたり、踊ったり、眠ったりするためのプラットフォームとして韓国で誕生した。現在、韓国、日本、中国、台湾で特に人気だ。2015年に台湾で生まれた「17メディア」をはじめ、たくさんのプラットフォームが存在する。全世界で合わせて3000万人以上のユーザーを獲得し、毎日1万時間分のコンテンツが作られているという。17メディアは250日足らずで1000万ダウンロードに到達。立ち上げ当初、InstagramやFacebookをしのぐ成長率を記録した。

年中無休のエンターテインメント

 台湾育ちのチーフイ・リン氏はライブストリーミングの台頭をじかに見てきた。大都市に広告が現れ、プラットフォームの名前は日常会話の一部になった。

 ライブストリーミングの世界は主に、女性のライバーが男性のファンに見られることで成立している。リン氏は好奇心をかき立てられた。

 リン氏の旅仲間である写真家のジェローム・ジェンス氏も興味をそそられた。リン氏とジェローム氏はアジアを回り、ライバーとそのファンを撮影することにした。

ギャラリー:アジアのライブストリーマーとファンたち(写真クリックでギャラリーページへ)
ロレックスの店舗が入った台北大安区のビルに、17メディアが所有する高さ約30メートルの広告板がある。4人のライバーがポーズをとり、孤独な人たちの心に響く「あなたとともに」というスローガンが書かれている。(PHOTOGRAPH BY JEROME GENCE)

 2人は7カ月をかけて、ライブストリーミング界のスターたちと会った。大食漢のずんぐりした男性、アプリのフィルターで顔を変幻自在に変える若い女性、小さな車に乗る犬などなど。2人は同時に、ライバーたちの背景にあるフワフワの椅子や色鮮やかな壁紙が現実を映し出していないことに気付く。「背景は豪華でカラフルですが、目の前には窓すらないのです」とジェンス氏は語る。

次ページ:ライバーたちにかかる重圧

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    記事が全て読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

性格の科学

複雑で豊かな心の不思議

心理学や精神医学における研究成果を踏まえつつ、性格とは何か、人格とは何かを解き明かす一冊。自分や他人の特徴/強みを理解して、より充実した人生を送るヒントに。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ