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リビアの町サブハまでを、ニジェール軍に護衛されながら移動する百台ほどのトラックの列。乗客の多くは、リビアへ出稼ぎに行くニジェール人だ。なかにはアフリカ大陸脱出を試みる者もいる。 (PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)

リビアに抜けるニジェールの道なき道 サハラ砂漠の危険な旅路を体験

2019.07.06
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 神秘的な光景がどこまでも続くように思えるアフリカ、サハラ砂漠。ナショナル ジオグラフィック2019年7月号のためにニジェールを取材していた私(ロバート・ドレイパー氏)と、写真家のパスカル・メートル氏は、1週間かけてこの砂漠を横断することにした。 (参考記事:「ニジェール アフリカの「優等生国家」に降りかかる難題とは」

 ただ根拠もなく出かけたわけではない。ニジェールにとってサハラ砂漠とは「ここで秩序が終わる場所」と言える。砂漠の向こう側にあるのは政情不安な国ばかりだからだ。北はリビアにアルジェリア、西にマリ、そして東にはチャド。言い換えれば、サハラ砂漠抜きで、ニジェールが立たされている苦境を理解することはできないのだ。(参考記事:「土造りの町、世界遺産トンブクトゥに迫る2つの危機」

ギャラリー:ニジェール、出稼ぎ2本道 砂漠を命がけで進む人々 写真15点
ニジェール中央部最大の都市アガデスの外れ、軍と警察の検問所を出たところに、リビア行きトラックの集合場所がある。3日間の移動で主に使われるトヨタ・ハイラックスの荷台に、時には25人もの乗客が詰め込まれる。 (PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)

 サハラは人っ子ひとりいない緩衝地帯であるというのは誤解だ。確かに、ニジェール北部の都市アガデスからリビアとの国境線までの1300キロは、まるで大海原を行くようで、美しく荘厳だが過酷だ。メートル氏と私は、経験豊かなサハラガイドのモハメド・イクサ氏と熟練の自動車修理工、そして運転手を伴いサハラ横断の旅に出た。彼らにとっては、奇妙な砂丘や地形の変化が道しるべだ。ほかには何もない。1日中運転しても、生きているものに全く出会わないこともある。ただボロボロのタイヤだけが何もない砂漠にぽつんと頭を突き出し、不運に見舞われ目的を達せなかった旅人が眠ることを伝える。(参考記事:「Webナショジオインタビュー 野町和嘉氏」

 茫漠(ぼうばく)としたサハラには、道路すらない。だが、熟練した者だけに見える2本の道が、並行して存在すると言われている。

 1本は一般に認められたルートだ。貨物を乗せたトラックや、それぞれ20人ほどの乗客を荷台に乗せたトヨタ・ハイラックスが、ニジェール軍に護衛されて、毎週のようにこの道を通ってアガデスとリビアの国境の街を往復している。乗客の多くが、ニジェールからリビアへ出稼ぎに向かう労働者だが、なかにはアフリカ大陸脱出を試みる西アフリカ諸国からの移民もいる。(参考記事:「リビアから欧州目指す ボートに150人!地中海の難民救助に密着」

ギャラリー:ニジェール、出稼ぎ2本道 砂漠を命がけで進む人々 写真15点
太陽や砂から身を守るため、頭にターバンを巻き、砂漠を高速で移動するトラックから転落しないように、木の枝にしがみつく乗客たち。 (PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)

 護衛されているからと言って、旅の安全が保障されているわけではない。3日間の道中、もしトラックから転落するようなことがあっても、車列は止まってくれない。病気になっても医者はいないし、食べ物がなくなればそれきりだ。軍が守ってくれるのは、イスラム過激派組織からの襲撃くらいだ。(参考記事:「拉致とレイプ、過激派組織の拘束を逃れ、声を上げた少女たち 写真12点」

 もう1本の道は、軍の監視がないルートだ。麻薬や銃の輸送者、強盗の通り道でもある。私たちは両方のルートをたどることにした。そのため、ニジェール軍の武装兵士10人に同行してもらった。

砂漠に放置されたトラック、次第に砂に埋もれていく。 (PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)
砂に埋もれていくのは靴も同じだ。 (PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)

 ところで、紹介した2本の道は、「希望の井戸」と呼ばれる枯れ井戸で合流する。周囲には、6台ほどの廃車が砂に埋まっていた。私たちが到着すると、リビアからアガデスへと向かうトラック約100台が休憩のために停車していた。運転手たちはおのおの、水タバコを吸ったり仮眠をとったりしている。その中の1人がこちらへ手を振り、100メートルばかり離れたところにある4ドアのセダンを指差した。

「俺の車だ。1年半前に故障したきりなんだ。軍に持って行かれる前に修理代を稼いで、アガデスまで持って帰らないと」

次ページ:たどり着けるかは「運」しだい

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