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コンゴ北東部の村バヤナで、WHOのチームがコンフィルメ・マシカ・ムガニラちゃん(7)の体温を測る。彼女は、両親と兄、妹をエボラで亡くし、親戚に育てられている。(Photograph by Nichole Sobecki)
アフリカ、コンゴ民主共和国(DRC)北キブ州の街ブテンボで育ったムリャンザ・ユゲットさんは、子どものころから強くしなやかな体をしていた。長距離を走るのが好きだったが、子どもたちと関わるのも好きだったので、ブテンボのアサンプション大学に入学し、幼児教育を学んだ。
ユゲットさんは2018年7月に大学を卒業。1カ月後、北キブ州でエボラウイルス病(エボラ出血熱)が大流行していると、世界保健機関(WHO)が公式に宣言した。そして、ユゲットさんの夢は変わった。国連児童基金(ユニセフ)の仕事に就き、村々を回って、エボラについての知識を広めた。ウイルス性出血熱の広がり方、早期治療で進行を止められること、治療が遅れれば命取りになることを説いた。(参考記事:「エボラはどこに潜むのか」)
人口約8100万人のこの国では、新たなエボラ対策が打ち出される一方で、いくつもの壁がその成功を阻んでいる。病気に対する恐怖と無知、外国の機関による医療支援への不信、武装した民兵たちの存在、そして貧困、絶望といった壁だ。
「人々には話す機会が必要です。初めからこちらのやり方を押し付けるのではなく、何を不安に思っているのか話してもらわねばなりません。説明はそれからです」
リスクコミュニケーション担当者 ゾーイ・キャバゲンディさん(25)
2014年から2016年にかけ、アフリカ大陸で史上最大規模のエボラ流行が起こり、アフリカ西部で1万1000人以上が死亡した。ウイルスがコンゴに現れた2018年半ばまでに、医療専門家たちはエボラ研究をさらに進め、新たな治療法を手にしていた。ユゲットさんのように啓発を担う人たちが、希望を与えられる可能性が出てきた。早く治療を受ければ、回復の望みがあると。
しかし、この国で楽観主義を保つのは難しい。数十年にわたって紛争が続く不安定な状態にあり、40年間で10回もエボラ流行に見舞われているからだ。エボラによる死者の遺族は、遺体を持ち去って安全に処分しようとする保健スタッフを非難している。その上、国内では50もの武装民兵グループが活動しており、悲惨な目に遭って家を追われた多くの人が絶えず移動しているため、感染症を封じ込めるのも困難だ。
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