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優れた解剖学者でもあったレオナルドは、人体を解剖し、鋭い観察眼で人間の身体を忠実に描いた。この美しいデッサンは、逆子になってへその緒が足に巻き付いた胎児の想像図。(ROYAL COLLECTION TRUST/© HER MAJESTY QUEEN ELIZABETH II 2019)

天才ダ・ヴィンチの世界に触れる、英王室コレクション 写真11点

2019.05.18

 英国王室が誇るレオナルド・ダ・ヴィンチの素描コレクションが、厳重に保管されているウィンザー城の外に出ることはめったにない。だが、レオナルドの死から500年目となる今年、2019年は例外だ。5月24日、過去60年間で最大のダ・ヴィンチ展が、バッキンガム宮殿のクイーンズ・ギャラリーで始まり、訪れる人々はレオナルド自身の手によるインクやチョークの作品を目にする貴重な機会に恵まれる。(参考記事:「「ダ・ヴィンチは正しかった」現代医学をも驚かす」

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温度と湿度が調節されたウィンザー城の版画室。英王室コレクションは、ラファエロやミケランジェロなど、ルネサンス期の名画を数多く所蔵している。手前にある一部青色に彩色された絵は、レオナルドの手によるトスカーナ南部の町バルディキアーナの地図。(PHOTOGRAPH BY PAOLO WOODS AND GABRIELE GALIMBERTI)

「Leonardo da Vinci: A Life in Drawing(レオナルド・ダ・ヴィンチ:素描に見る人生)」と銘打たれた展覧会は、約200点の素描(英王室が所蔵するダ・ヴィンチ・コレクションの約3分の1)を展示し、レオナルドの多岐にわたる好奇心、題材、テクニックに光を当てる。

「最後の晩餐」のデッサン、兵器の設計図、絵画「東方三博士の礼拝」のために描かれた人の手の習作(金属尖筆で描かれた2枚のうち1枚。線が色あせてしまい、紫外線の光を当てなければ肉眼で見ることはできない)、騎馬の脚のデッサン(完成まで至らなかった3体の騎馬像のうち1体の制作用に描かれたもの)、そして波打つ髭をたくわえ少し悲し気な表情を浮かべる男性のインク画などが展示される。

 5月初め、英国王室コレクションの管理を行う団体「ロイヤル・コレクション・トラスト」の版画・素描部門の責任者で、展覧会キュレーターを務めたマーティン・クレイトン氏は、この男性のインク画は、レオナルドの死の少し前に弟子のひとりが描いたレオナルドの肖像画だと特定した。(参考記事:「ダ・ヴィンチの失われた壁画を発見?」

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レオナルドは、絵画を制作する前に多くの習作を描いた。写真は、初期の未完の作品「東方三博士の礼拝」の習作。最近になって修復され、現在はイタリア、フィレンツェにあるウフィツィ美術館に展示されている。絵の中央には、処女マリアと幼子が描かれている。(ROYAL COLLECTION TRUST/© HER MAJESTY QUEEN ELIZABETH II 2019)
「東方三博士の礼拝」のデッサンとして、金属尖筆で描かれた人の手。尖筆には銅が多く含まれていたため、経年により色があせてしまい、紫外線の光を当てないと見ることはできない。(ROYAL COLLECTION TRUST/© HER MAJESTY QUEEN ELIZABETH II 2019)

 今日では、レオナルドの素描は本やオンラインで簡単に見られるようになった。もちろん複製ではあるが、情報をとらえて視覚化するというレオナルドの類まれな能力は感じ取れるだろう。しかし、その芸術性を実物で見るのは全く異なる経験だ。

 昨秋、私はその大変な名誉にあずかり、ウィンザー城を訪れた。作品から浮き上がる質感やシミは、創作の力強さを物語っている。淡彩やチョークの色の深み、エネルギーに満ちた筆さばき、そして並外れた器用さ。ギリシャ神話の王妃レダの習作はペン画にインクをぼかして描かれ、「聖アンナと聖母子」の習作である聖母の袖は、白地に映える赤と黒のチョークで驚くほどの透明感を出している。「複製では、これだけの色調と繊細さ、そして生命を再現することは不可能です」と、クレイトン氏は語る。

次ページ:ダ・ヴィンチの素描は、学ぶことへの飽くなき情熱の証

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