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米ボストン美術館で開催中の「異性装」展は、ファッション界で性差流動性を受け入れつつあることを象徴している。写真は、ハイヒールを履いて展覧会を訪れた人。(PHOTOGRAPH BY DINA LITOVSKY)

男女の装いに変化をもたらす 米で開催の異性装展 写真21点

2019.04.20

 女の子が産まれたらピンク、男の子なら青いおくるみを巻くというように、誕生した時からメッセージは植えつけられているかもしれない。そして、女の子はスカートを、男の子はズボンをはかせられる。「服装が人を作る」といった決まり文句が当たり前のように口にされ、英語で「ズボンをはく者」は、優位な立場にある者と自然と理解する。作家アリソン・ルーリーは、著書『The Language of Clothes(衣服のことば)』のなかで、「衣装の基本的な目的は、男性と女性を区別すること」と書いている。伝統的な装いは、ジェンダーを表す会員証なのだ。 (参考記事:「男装の少女を育てる風習 アフガン社会の矛盾 写真9点」

【ギャラリー】男女の装いに変化をもたらす異性装展 写真21点(画像クリックでギャラリーへ)
「男性服と女性服を隔てる強固な壁に挑戦し続けたオートクチュールと既製服の100年」を見学する客。(PHOTOGRAPH BY DINA LITOVSKY)

 だが、この性差が流動する時代、変化が起きている。男か女かの二元論が崩れれば、ファッションもそれに続く。今に限ったことではなく、同じような現象は過去にも時折見られた。紀元前1507年から1458年に、古代エジプトを治めたハトシェプスト女王は、男のファラオの服を着て、偽のひげをつけていた。最近では、ラッパーのヤング・サグが、イタリア人デザイナーのアレッサンドロ・トリンコーニによるエレガントなラッフルドレスに惚れこみ、2016年にリリースしたアルバム「No, My Name is Jeffery」のカバーに、自らがこのドレスを着た写真を採用した。

 LGBTQIA+(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア、インターセックス、アセクシャリティ、その他)の権利が叫ばれ、ソーシャルメディアの及ぼす影響が増している昨今、ジェンダーとファッションというテーマは分かちがたく結び付いている。(参考記事:「2017年1月号 ジェンダー革命 男と女で何が違う? 9歳の視点」

 2019年3月21日から8月25日まで、米マサチューセッツ州のボストン美術館で開催される「Gender Bending Fashion(異性装)」展は、そのファッションとジェンダーの関係を模索する。大規模な美術館がこのテーマを取り上げるのは初めてのことだ(トリンコーニのドレスも展示されている)。美術館のテキスタイル・ファッションアート部門に所属し、展覧会のキュレーターを務めたミシェル・フィナモア氏に話を聞いた。

――これまで性別によって区分されてきた衣服の境界線が、不明瞭になってきています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米大手ディスカウント小売りチェーンのターゲットは、店内の表示板から性別の表記を削除したそうです。異性の友だちは、互いのクローゼットのなかを覗いて、自分に着られそうなものを品定めしているとか。この展示に至った社会的精神についてお話しください。

【ギャラリー】男女の装いに変化をもたらす異性装展 写真21点(画像クリックでギャラリーへ)
展覧会では、マレーネ・ディートリヒ、デビッド・ボウイ、ジミー・ヘンドリクス、ヤング・サグなど、ファッションの現状に挑戦し、流行を作り出してきた人々が紹介されている。(PHOTOGRAPH BY DINA LITOVSKY)
ボストン美術館で、一般公開前の内覧会に参加した人。(PHOTOGRAPH BY DINA LITOVSKY)

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