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通りで仲間たちと一緒に打楽器をたたくビビアム・キャロラインさん。「プロジェクト・ディーダ」は、メンバーが全員女性で、全員アフリカ系ブラジル人の打楽器集団だ。サルバドールでは打楽器が盛んで、マイケル・ジャクソンやポール・サイモンも、町で最も有名なバンド「オロドゥン」とコラボしたことがある。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE FODEN)

ブラジルの奴隷の歴史を伝えるアフリカンな音楽、ダンス、宗教 写真10点

2019.03.31
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 数キロ先で鳴り響く激しい打楽器の音が、足元の石畳をわずかに揺さぶっている。打楽器隊のおでましだ。サルバドールに今なお残る百年前の建物が、今年のパレードにも持ちこたえられるといいのだけれど。

 ブラジルの都市といえば、金融の原動力サンパウロや、おそらく世界で最も美しい街並みのリオが有名だが、バイーア州は活気あふれる文化で知られている。ある地元住人の言葉が、バイーアの人々の芸術的な力強さを見事に表現している。「この町では、人々は生まれるのではない。初出演するのだ」

 その文化の祭典を見たければ、バイーアの州都サルバドールへ行くべきだ。この場所には、想像力をかきたてる何かがある。それは、10人に3人が失業中というこの町で、創作というのは趣味や選択ではなく、あともう1日を生き延びるための手段という事実と無関係ではないかもしれない。(参考記事:「音楽が溢れる街 サルバドール、ブラジル」

ギャラリー:ブラジルの奴隷の歴史を伝えるアフリカンな音楽、ダンス、宗教 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
サルバドールの聖ヨハネ祭でフォホーダンスを踊るカップル。聖ヨハネ祭は、ブラジルの衣装や食べ物、音楽で収穫を祝うお祭り。フォホーは、1940年代のブラジル北東部が起源だ。ペアになって頬を寄せ合って踊り、なめらかでエネルギッシュな動きを特徴とする。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE FODEN)
マスクをつけ、シーツを体に巻き付けて家の前のポーチに座るサンチアゴ・ド・イグアペ村の少年たち。カーニバルの時期は、村から悪い霊を追い出すために子どもたちが仮装する。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE FODEN)

 ブラジルでは、文化的な表現は抗議の手段だ。お祭り好きで知られるバイーアでは、異なる背景を持つ人々の間に存在する複雑な分断が、カーニバルや聖ヨハネ祭などの祭りで露わになることがある。ブラジルでは現在、極右政治が力をつけ、国民の分断を深めている。

 かつてブラジルの砂糖産業を支えるために、アフリカ奴隷の3分の1以上がこの国へ連れてこられた。サルバドールは、ポルトガルの町を彷彿とさせる部分が多いが、町のルーツをたどると西アフリカに行きつく。スパイスをふんだんに使った料理から、明るい音楽、魅惑的な踊りに満ちた宗教儀式まで、この町はあらゆる感覚が交錯したひとつの巨大な塊だ。いったいここは、ポルトガルなのか、それともベナン共和国なのか。(参考記事:「沈没船が明らかにする奴隷貿易の変遷」

 1888年、米大陸で最後まで奴隷制を維持していたブラジルが、それを廃止した。この不名誉な記録について、国民はあまり語りたがらない。だが、最も率直にその話題を持ち出してくるのが、サルバドールの人々だろう(サルバドールはかつて、新大陸最大の奴隷貿易港だった)。しかも、深刻なテーマにはおよそ似つかわしくない打楽器隊という形をとって。だが、ちょっと考えてみればわかるはずだ。巨大なバスドラムを思い切り叩けば、人々は振り向く。打楽器が集まって、一斉に人種の平等をうたえば、数十万人が耳を傾ける。

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ナショナル ジオグラフィック日本版
2019年2月号

「奴隷たちが生んだ反逆の祝祭」を収録

このほか、「ウユニ塩原のリチウム開発」「カンガルーは害獣?」などを掲載しています。

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