Photo Stories 撮影ストーリー

ベロウソフ・ジャボチンスキー反応という化学反応が起こっているシャーレを、5分間にわたって11秒間隔で撮影した。(PHOTOGRAPH BY FELICE FRANKEL)

科学の美しさを表現する写真 作品14点

2019.02.11

 数学的な考え方をする人なら、まっすぐな線や方程式を美しいと感じるはずだ。しかし、どんなに美しい理論であっても、数学の初心者からすればわけがわからない難解なものにしか見えない。同じことは、物理の基本法則、生物学の新しい理論にも当てはまる。これらが複雑なことは確かだが、日々の生活にも応用できるものでもある。

 では、研究成果を一般の人々にわかってもらうには、どうすればいいのだろうか。そんな時こそ、女性写真家のファリス・フランケル氏の出番だ。

 科学を愛し、コミュニケーション能力にもすぐれたフランケル氏は、米マサチューセッツ工科大学で、学生たちのアイデアを視覚的に表現するのを手伝っている。同氏の新刊『Picturing Science and Engineering(科学と工学を写真に、未邦訳)』には、難解な研究やデータを印象的に表現した作品がたくさん掲載されている。重要なのは、科学者に「美しいイメージは人々を夢中にさせることができると理解してもらう」ことだという。(参考記事:「単一原子の影の撮影に初めて成功」

顕微鏡にカメラを接続し、分析装置を撮影した。(PHOTOGRAPH BY FELICE FRANKEL)
分析装置。倍率を上げれば、細かい部分までよく見える。(PHOTOGRAPH BY FELICE FRANKEL)

 何も特別な装置が必要なわけではない。フランケル氏は、それを新刊の最初の章「フラットベッドスキャナー」で証明している。こうした市販の機器でも、たとえば瑪瑙(めのう)やアワビなどから驚くほどの情報を写真に残すことができるという。(参考記事:「「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功」

「とてもすばらしいことです。肉眼では見えないものをここまで細かく見ることができるのですから」とフランケル氏は話す。フラットベッドスキャナーを使えば、複雑なものを新しい方法で見せることもできる。そうすることで人々は驚く。「ほとんどの人は、そうした装置を研究の記録にしか使いませんから」(参考記事:「1つの原子、最新科学画像2011」

 本書ではカメラの使い方や照明の基本だけでなく、顕微鏡や携帯電話まで使って難解な概念を視覚的に表現したり、理解しがたい数式に光を当てたりする方法が紹介されている。

ギャラリー:難解な科学を美しい写真に 作品14点(写真クリックでギャラリーページへ)
この一連の写真は、ブロック共重合体という物質の変化を時系列で示したもの。(PHOTOGRAPH BY FELICE FRANKEL)

視覚化にはとてつもない力がある

 大学で生物学と化学を学んだフランケル氏は、科学はつねに自分の一部だと言う。ただし、それ以前に自分は写真家だという。

「子どものころ、誰でもそうだったと思いますが、注意深くものを見ていました」とフランケル氏は話す。今、学生たちと概念を視覚化する方法について話し合うとき、伝えたいもっとも重要なことは何かと問うことから始める。答えられない学生には、まずその点を整理してもらう。(参考記事:「マイ実体顕微鏡購入のすすめ」

「アイデアをその本質まで落とし込むのです。そうするには、自分がその本質を理解していることが重要です」

ギャラリー:難解な科学を美しい写真に 作品14点(写真クリックでギャラリーページへ)
走査型電子顕微鏡を使ってモルフォチョウの青い翅を撮影し、着色したもの。(PHOTOGRAPH BY FELICE FRANKEL)

 本の最後には、作品一覧と、それらを掲載した研究論文が並んでいる。撮影は協力しながら進めていくもので、「非常に楽しい」という。現在、ほとんどの大学院の課程には科学や工学の視覚的コミュニケーションは含まれていない。しかし、フランケル氏は今後この点が変わることを期待している。

「視覚化にはとてつもなく強い力があることを、ここに紹介した若い科学者たちは理解していると思います」(参考記事:「電子顕微鏡で見るハーブ、驚きの世界 写真5点」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:難解な科学を美しい写真に 作品あと9点

文=CATHERINE ZUCKERMAN/写真=FELICE FRANKEL/訳=鈴木和博

おすすめ関連書籍

科学の誤解大全

当たり前だと思ってきた科学の常識を覆す本。宇宙、物理、科学、人体などのジャンルで約40個の“事実”の間違いを解説する。

定価:本体1,300円+税

Photo Stories 一覧へ