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サフラン(Crocus sativus)の雌しべの一部(柱頭)。(PHOTOGRAPH BY MARTIN OEGGERLI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

電子顕微鏡で見るハーブ、驚きの世界 写真5点

2019.02.02

 17世紀後半のアマチュア科学者アントニ・ファン・レーウェンフックは、身の周りの細部に取りつかれ、オランダ、デルフトの自宅であらゆる生物を観察した。彼の興味は、ミツバチの針やノミの口、果ては自分の精子にまで及び、黒コショウの実など、台所で使う香辛料も調べた。香辛料の味や香りの源を知りたかったのだ。(参考記事:「“微生物学の父”レーウェンフックは何を見たのか」

 レーウェンフックは、コショウの実を水につけて柔らかくし、顕微鏡で観察した。彼はコショウの実の表面には刺激のもととなる小さなトゲがあるのではないかと想像していたが、実際に見つけたのはひだのある小さな球だった。(参考記事:「顕微鏡で見る植物細胞、驚きと美しさに満ちた世界」

 しかし、それだけではなかった。コショウの実の横で、小さな物体が動いていた。史上初のバクテリアの観察例である。香辛料の刺激のもとを探して、気づかぬうちに未知の世界への扉を開いていたのだ。

【ギャラリー】電子顕微鏡で見るハーブ、驚きの世界 写真5点(写真クリックでギャラリーページへ)
バジル(Ocimum basilicum)の葉の一部。(PHOTOGRAPH BY MARTIN OEGGERLI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 ここに紹介する写真の撮影者で、科学者でもあるマルティン・オエゲルリ氏は、「現代のレーウェンフック」と呼んでいいだろう。

 オエゲルリ氏は、レーウェンフックが使ったものよりはるかに高性能な顕微鏡で、同じような物を観察している。同氏はこれまで昆虫の卵や花粉、ダニ、虫の目の顕微鏡写真を撮ってきたが、最近、香辛料にレンズを向け始め、ローズマリーやラベンダー、セージ、バジル、サフランを撮影した。まるで「地球外生命」や「異世界」を見ているようだ、と彼は話す。(参考記事:「精妙なる昆虫の卵」

 オエゲルリ氏は、微小な世界をただ撮るだけではなく、再現する。電子顕微鏡では色は見えないが、写真に色をつけ、あるものは強調し、あるものは目立たぬように調整する。本来の白黒画像では見落とす可能性のあるものを、赤や黄色にして目を引きつける。技術を駆使して、より美しく鮮やかに、さらにはより荘厳に仕上げるのだ。(参考記事:「花粉が運ぶ愛」

 しかし、こうした香辛料を観察する上でオエゲルリ氏が焦点を当てているのは、調味料としてではなく、普通の植物としての困難や競争、生殖の方法だ。

次ページ:ハーブの味は自衛用の武器

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