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エチオピア北部の教会。森に囲まれているが、暑く乾いた大地はすぐそこまで迫っている。(PHOTOGRAPH BY KIERAN DODDS)

「教会の森」から始める森林再生、エチオピア 写真18点

2019.01.27

 アレマヤフ・ワシエ・エシェテ氏は子どもの頃、毎週日曜日に歩いて教会に通っていた。ワシエ氏の故郷はアフリカ、エチオピアの北部。教会への道は小麦畑に挟まれ、乾燥し、埃が舞っていたが、その先に待っていたのは別世界への入り口だった。

 エチオピア正教会は、エチオピア最大の宗教団体で、5000万人近い信徒を抱える。その教会はほとんどの場合、豊かな森の中に建てられた。彼らの信仰において、森は教会を包む衣服のようなもので、教会ともども宗教的な空間の一部だと考えられている。少年だったワシエ氏は、照りつける太陽を逃れて、美しく涼しい世界へと入っていった。そのささやかな森は、鳥の鳴き声や草木の匂いにあふれる、生命と神聖さを凝縮したような場所だった。(参考記事:「ギャラリー:荘厳で華麗 世界の聖地を彩る38の宗教建築」

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バハルダール近郊のロビト・バヒタ教会の庭で祈り、聖典を読む男性。(PHOTOGRAPH BY KIERAN DODDS)

「環境という観点から言えば、それはまるで地獄から天国に行くような体験でした」とワシエ氏は言う。「暑く乾燥した小麦畑から、美しい森へ入るのです。そこが美しい場所であることは誰の目にも明らかですが、わたしにとって森はそれ以上の意味を持っています。森は霊的な場所です。完璧な自然があり、人はそこで神に祈りを捧げるのです」

 しかし、成長して生物学と科学を学び始めたワシエ氏は、自分が愛したエチオピア北部の森が非常に少なくなっていることを知り、自問した。森はどこへ行ったのか。なぜこれっぽっちしか残っていないのだろうか。

 エチオピア、南ゴンダール県では、過去100年の間に自生林のほぼすべてが失われた。人口が急速に増える中、森林を切り開いて小麦畑や牧草地が作られたのだ。ただし教会の森は、教会の管理者や地元コミュニティによって守られ、その多くが残されている。教会の森は、失われた過去のかけらであると同時に、未来への希望でもある。

森林は国土のわずか4%前後

 教会とその周囲の森は、紀元4世紀以降、地元コミュニティの宗教的、世俗的な生活の両面で中心的な役割を果たしてきた。森は、そこにある教会とその富を「敬意を込めて包み込む覆い」のような存在だ。一部の森は、1500年前からそこにあったと推測される。

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式典用の礼服を着て、ロビト・バヒタ教会の色鮮やかな壁画の前に立つ司祭。(PHOTOGRAPH BY KIERAN DODDS)

 1900年代初頭には、エチオピアの国土の40%が森に覆われていたと考えられる。ところがこの100年の間に、人口の増加に伴って食料の需要が急増、多くの森が開拓されて農地に変えられた。木に覆われた土地がじわじわと減り続けた結果、現在、森林は国土のわずか4%前後を占めるにすぎない。南ゴンドール県の場合、ささやかな森林が約1500カ所にポツポツと散らばっている状態だ。(参考記事:「トゥルカナ湖の不透明な未来」

 今、わずかに残されたこれらの森が危機にさらされている。一部の森には、ユーカリなどの侵略的な外来樹が入り込んでいる。成長が早く薪に適しているからだ。家畜の牛も森に入り込み、柔らかい若木を踏みつぶし、古い樹木を傷つけている。(参考記事:「原因不明、アフリカの古木バオバブに迫る危機」

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