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青々とした風景を横切り羅先に向かう列車。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

北朝鮮、寝台列車の旅、地方の珍しい風景も 写真31点

2019.01.09
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 マーク・ドラン氏は蒸気機関車が大好きな少年だった。母国の英国で蒸気機関車が現役を退いてから10年後の1978年、ドラン氏は蒸気機関車を追いかけて旧東ドイツまででかけて行った。「禁じられた国」を見てみたいという好奇心もあった。

 それから40年後、再び同じ情熱がドラン氏を北朝鮮へと導いた。2016年、平壌へ行くために、シベリアとモンゴルを通過して北京までいたる中露国際列車に氏は乗車した。(参考記事:「ギャラリー:鉄道で行く世界の絶景 写真16点」

 そして2018年秋、かつては英国国鉄の職員だったドラン氏は、今度は平壌から北東へ向かって北朝鮮の海岸線を旅する寝台列車の旅に参加した。それまで外国人には閉ざされていた町や村を通過する貴重な体験である。

北京から平壌へ向かう途中、閑散としたプラットフォームを通過した。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「これこそ究極の鉄道の冒険だと思ったんです」と、ドラン氏は語った。

 ドラン氏の一行は9月に平壌を出発し、ロシアと中国との国境に近い羅先(ラソン)特別市までの鉄道旅を体験した。北京の旅行会社「高麗(コリョ)ツアーズ」によると、1年前まで外国人旅行客には許可されていなかった旅程だという(北朝鮮ではすべてに関して言えることだが、このツアーも政府の意思ひとつでいつまた廃止されるかわからない)。

 北朝鮮を訪れる外国人旅行客はほとんどいない。現在北への渡航が禁止されている米国人にしてみれば、旅行に行けること自体驚きだろう。(参考記事:「北朝鮮を訪れた「最後の米国人旅行者」の写真」

平壌から羅先までの旅の途中で停車した清津駅。辺りには霧が立ち込めていた。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 厳密にはいまだ北朝鮮と戦争状態にある韓国の人々もまた、北朝鮮への旅行は禁じられている。それでも次の休暇は、世界一要塞化が進んだ非武装地帯の北側で、と考える外国人が、年間数千人にものぼる。そのほとんどは、欧州、日本(政府は渡航自粛を要請している)、オーストラリア、カナダの人々で、ロシア人も少し含まれる。

 高麗ツアーズによると、北朝鮮の国内列車に外国人は乗車できないが、手がないわけではない。月に2回、ロシアとの国境にかけられた「友情橋」を通って、平壌とモスクワをつなぐ国際寝台列車が走っている。列車はロシアのすぐ手前にある羅先に停車し、ロシアや中国へ出国する前に下車もできる。

 ドラン氏を含めたツアーの参加者は合計12人だった。全行程36時間の列車の旅になる予定だ。

 人は自由を楽しむために旅に出るものだが、北朝鮮観光は逆に自由が制限される。ツアー客には政府のガイドがぴたりとはりつき、監視の目を光らせている。外国人は、体制が見せたいものだけを観光する。

 ほとんどの北朝鮮ツアーでは、エリートたちが住む清潔な平壌から出ることはない。町の記念碑を訪れ、料理が次々に出てくるレストランで食事をする(多くの国民が飢えに苦しんでいるという報道を否定するのがねらいだ)。2018年の建国記念など、何かの行事に重なれば、圧倒的なスケールのマスゲームも観覧できる。

北朝鮮建国70周年を記念したマスゲームに掲げられた金正日前総書記の巨大な肖像画。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
2018年9月に5年ぶりに開催されたマスゲームのパレードに参加する北朝鮮の人々。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 だが、北朝鮮の農村部を行く列車の旅は、まったく異なる体験だった。高麗ツアーズの創業者ニコラス・ボナー氏は、2004年にマスゲームの訓練を積む2人の若い体操選手を追ったドキュメンタリー番組を制作中に、この路線に乗った。その後、国の開発は遅々として進まず、風景は今も当時とほとんど変わっていないと、ボナー氏は語る。

「近代的な建物はなく、手つかずのビーチや小さな入り江が連なる、東アジアでも数少ない美しい海岸線です。貧しいけれど、目を奪われる風景です」

 列車に関しては「速くありません。もし外に転落したとしても、もんどりを打ってすぐに立ち直れるくらいの速さです」と笑った。

北朝鮮の鉄道は、今も20世紀半ばの旧ソ連の列車を使用している。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
平壌から羅先へと続く線路は、緑に囲まれ、野花が生い茂っている。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 実際、金正恩委員長は2018年4月に開かれた南北会談で、韓国の文在寅大統領に対し、北朝鮮の鉄道ははっきり言って「恥ずかしい」レベルだと漏らしたという。北とは反対に、韓国には国外にも名高い高速鉄道がある。会談では、両国間を鉄道で結ぶ案が出された。(参考記事:「北朝鮮と韓国、似ているけど微妙に違う写真12点」

 2018年11月30日、北朝鮮の鉄道を調査するため、両国のエンジニアを乗せた韓国の列車が非武装地帯を北に向けて出発し、北朝鮮の鉄道を走った。(参考記事:「対岸は北朝鮮、鴨緑江沿いの街の日常 写真20点」

次ページ:蒸気機関車が今も現役で活躍

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