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サンゴを育てて移植することで、危機に瀕するサンゴ礁を回復させたいと科学者たちは願っている。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

最大のサンゴ礁の危機、「移植」で救えるか 写真15点

2018.12.04
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 オーストラリア、クイーンズランド州の海岸から50キロほど沖合の海で、2018年の夏、歴史の小さな1ページが作られた。危機に瀕する世界最大のサンゴ礁「グレート・バリア・リーフ」に、養殖で育った数百のサンゴ片が移植されたのだ。

 プロセス自体は目新しくはない。サンゴの移植は、損傷したサンゴ礁の復元を助けるために何十年も前から行われている。新しいのは、それが世界最大のサンゴ礁で行われていることだ。

 グレート・バリア・リーフの管理当局は、サンゴ礁の生態への介入に長く抵抗し、自然に回復させる方針を守ってきた。しかし、過酷な気候変動を受け、より直接的なアプローチをとらざるを得なくなっている。(参考記事:「豪政府がグレート・バリア・リーフの保全策を急募」

海洋生物学者デビッド・サジェット氏が、温暖化に強いサンゴを調査している。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 11月28日に米国の学術機関「全米アカデミーズ」が発表した報告書も、同じ結論を出している。「『人類の幸福、国家の経済、未来に残す驚異』の点で計り知れない価値がある世界のサンゴ礁が確実に存続するためには、人間の介入が必要である」というものだ。

「この報告は、サンゴ礁が気候変動を生き延びるのを助ける方法の実践的なリストです」と話すのは、米スタンフォード大学の生物学者で今回の報告書のチェアを務めたスティーブン・パルンビ氏だ。同氏はナショナル ジオグラフィック協会執行委員の1人でもある。「パニックが落ち着いて、本腰を入れて解決に取り組まねばならなくなったときに、決まって起こる展開のようなものです」

 グレート・バリア・リーフで、そのプロセスが始まった。

グレート・バリア・リーフのオパール・リーフは、深刻な白化に見舞われている。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
マングローブ林に生息するサンゴは、高い塩分と酸性度に耐えられる。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

3分の1近くが死滅

 2016年と2017年、グレート・バリア・リーフは立て続けの「海洋熱波」に襲われた。海水温が上昇し、サンゴ礁の全サンゴのうち3分の1近くが死滅する結果となった。(参考記事:「世界最大のサンゴ礁で大量死、豪政府が緊急対応」

 サンゴの体内には藻類が共生しており、光合成をしてサンゴに栄養を与えている。完全には解明されていないものの、サンゴの個体であるポリプは、高温に反応してこの藻類を放出する。色とりどりの藻類を失うとサンゴは「白化」し、ついには死に至ることもある。グレート・バリア・リーフは全長2300キロにも及ぶが、その北部を覆うサンゴ礁は、今や観測史上最悪の状態にある。

 旅行者に人気のダイビングスポット、オパール・リーフは、グレート・バリア・リーフを構成する2900以上のサンゴ礁の1つ。最近、この数カ所で起こった白化による死滅は壊滅的だった。2018年8月下旬にサンゴ移植が行われたのがこの場所だ。(参考記事:「グレート・バリア・リーフの93%でサンゴ礁白化」

【ギャラリー】グレート・バリア・リーフを救え! 写真15点(写真クリックでギャラリーページへ)
ロー・アイルズでサンゴのサンプルを扱う研究チームのメンバー。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 シドニー工科大学の「フューチャー・リーフス・プログラム」(Future Reefs Program)を率いる海洋生物学者デビッド・サジェット氏は、研究者のチームや地元のサンゴ礁ツアー会社と協力し、白化に耐えたサンゴの断片を採取。偏りがないよう12種を選び、サンゴ礁に近い砂地の潟湖で、網目状の台を使って育てた。

 育てられたサンゴの断片は、数カ月後に移植された。「この研究が挑んでいるのは」とサジェット氏は言う。「自然の緩慢なプロセスだけに頼るのではなく、ストレスに耐えられるサンゴを繁殖させ、移植することで、サンゴ礁の回復を加速できるかどうかです」

「再び海洋熱波に見舞われるまでに、このプロジェクトが成功するかどうかはわかりません」とサジェット氏は言う。それは遠い将来ではなく、近いうちに起こる可能性が高い。

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