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カリフォルニア州のマンザナ転住センター(収容所)で、父方の祖父トラゾウ・サカウエの背中におぶさるウォルター・ヨシハル・サカウエ。トラゾウ・サカウエは67歳のときに収容所内で亡くなった。ウォルター・サカウエのおじは第二次大戦で戦死している。(PHOTOGRAPH BY DOROTHEA LANGE, NATIONAL ARCHIVES)
強制収容された日系米国人の生涯を追う写真家 写真12点
2018.10.03
話を聞かせてほしいと頼んだとき、母親は嫌だといった。父親とおばは当時のことを話してくれたが、個人的なことには口をつぐんだ。写真家のポール・キタガキ・ジュニアは、第二次世界大戦中に強制収容所に連行された日系米国人の生涯を記録したいと考え、当時と現在の写真を並べた大規模な作品群としてまとめる計画を立てた。しかしそのスタートは、順調と言うにはほど遠いものだった。
「このプロジェクトが好きで続けてきました」。カリフォルニアのサクラメント・ビー紙のフォトジャーナリストでもある64歳のキタガキはそう語る。「私は、この先長く残っていく作品を創りたいのです。日系米国人を強制収容したことは非常に重要なアメリカ史の一部です」
真珠湾攻撃から2カ月後の1942年2月、日系米国人12万人の強制収容が行われるきっかけとなった大統領令9066号が発令された。収容された日系人たちの姿は、ドロシア・ラングやアンセル・アダムズといった著名写真家の作品の中に残っている。キタガキはこれまで13年間にわたり、写真の被写体となった人々を探し出し、彼らの写真を撮り、話を聞くという作業を続けてきた。
そうした人探しには、オリンピック、地震、スーパーボウル、山火事、サダム・フセイン時代のイラクの取材など、キタガキがこれまでのキャリアにおいて経験してきたものとは異なる類のプレッシャーが伴う。
「人探しは今も続いています。ただ多くは80代から90代ですから、じきに会えなくなってしまうでしょう」
キタガキが撮影した写真は本誌2018年10月号にも掲載されており、また現在、彼の作品の展覧会が全米各地を巡回して行われている。展示の内容は、戦時中および現代に撮影された60組の肖像写真で、新しい方の写真の多くは、 70年前に撮影された当時と同じ場所で撮られている。2019年初旬には書籍も刊行される予定だ。(参考記事:「「転住」だと思われた米国日系人の強制収容」)
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