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ギリシャの川岸に立つエミネ・ボルンツィさん。13歳で結婚させられたが、現在は離婚して3人の子どもをひとりで育てながら、卒業資格を得るために公立学校へ通っている。男女平等を強く支持する女性だ。(Photograph by Myrto Papadopoulos)

ギリシャの孤立イスラム教徒「ポマク」、変わる暮らし 写真15点

2018.09.29
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 ギリシャ北東部に暮らすイスラム教徒「ポマク」の村には、「ルルカ」と呼ばれる伝統的な恋人探しの風習がある。毎年5月のはじめに、村のいたるところで木にブランコのようにロープが結び付けられ、未婚女性たちは、そこに座って男性の気を引くようなポーズをとる。こうして人々は春の到来を祝い、恋と新しい命を呼び寄せる。

 今もその伝統を守ってブランコに座る女性もいるが、実際にはそれとは関係なく、ほとんどの女性が決められた男性との結婚を強いられる。

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ギリシャの町クサンティで結婚式を挙げるブスラさん(左)とフセインさん(右)。新郎のフセインさんは、5年間オランダのロッテルダムに住み、造船所で働いているが、結婚式のためギリシャに戻ってきた。「妻は何もしなくていいように、すべてを与えてやりたいと思っています」と語る。(Photograph by Myrto Papadopoulos)

 この地方に暮らすポマクは、少数派の人々だ。国籍はギリシャ、民族的にはスラブ系、宗教はイスラムという複雑な背景を持つ。さらに、住んでいる場所も辺境の地という地理的条件が重なり、彼らは孤立を深めた。おかげで、現代にいたるまで独自の文化を守り通すことができたわけだが、その独自性が今、少しずつ失われようとしている。昔ながらの宗教的な教えに、経済的な困窮や男女の役割の変化があいまって、ポマク社会は大きく様変わりした。(参考記事:「ロマの成功者たち」

 ギリシャ人写真家で映画製作者のミルト・パパドポウロス氏は、世界から取り残され、ほとんど誰にも知られていないポマクに焦点を当ててみたいと思った。そこで1年間、毎月のように、アテネの自宅から車で8時間かけてトラキア地方へ通い続けた。今では、車が自分の家になってしまったと笑う。そこまでして彼女が見たかったものは、ロドピ山脈の南斜面に散らばるミキ村、コティリ村、ディマリオ村、そしてクサンティの町に孤立して暮らすポマク社会だった。

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民族衣装を着たミキ村のポマクの少女。赤などの明るい色がふんだんに使われた民族衣装は、この地方では珍しい。(Photograph by Myrto Papadopoulos)
ハティム祭を祝うため、ケンタウロス村のモスクに集まった少女たち。(Photograph by Myrto Papadopoulos)

 取材の目的は「何層にも重なったポマクの暮らしの現実」を記録すること。人々のアイデンティティ、伝統、そして離れ離れになって暮らす家族の繊細でデリケートな物語をとらえること。彼女の写真は、外界から隔絶された小さなコミュニティーに押し寄せるグローバル化の波を伝える。

「ここには、ギリシャのなかで、私がとても大切に思う部分があります。文明が交じり合った場所、歴史を見ることができる場所なのです。オスマン帝国やヨーロッパの影響を見ることができ、様々な人がいて、異なる方言で話しています」

次ページ:激変するポマク社会

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