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巣にいる家族に果実を運んできたオナガサイチョウ。非常に見つけにくい鳥で、雑誌の記事でも別種のサイチョウの写真を使うところだった。結果的にその必要はなくなったが、オナガサイチョウ以外のサイチョウも非常に美しいため、以下で紹介する。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN)

絶滅寸前のオナガサイチョウ、撮影は至難の業 写真13点

2018.11.05

 1つ目の営巣地点に着くと、ティムはメンバーが隠れるためのブラインド(迷彩柄のテント)を設置し、私たちはそこに腰を下ろして、父親のサイチョウがパートナーとひなのために食べ物を運んでくるのを待った。やたらと陽気な雄の鳴き声が、数本向こうの木からたびたび聞こえ、私たちをあざ笑っているかのようだった。近づいても安全かどうか、雄は見極めていたのかもしれない。用心深い(vigilant)ことから付けられたBuceros vigilという学名に違わず、この雄は私たちがどんなに巧みに隠れていても、常に私たちの存在に気づいているようだった。

 それでも、雄は何度か現れた。しかし、すぐに見えなくなってしまうので、ナショナル ジオグラフィックに掲載できるショットを撮るのは至難の業だった。

インドネシア、スラウェシ島で、ひなに餌をやるため巣穴にやってきたアカコブサイチョウ。この鳥の好物の1つであるイチジクの木が、巣穴のある木の幹に巻きついて育っている。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 巣を観察し始めて数日後、私たちは近くのハーラー・バーラー野生動物保護区でイチジクが実っているという話を耳にした。巣とは異なる環境でオナガサイチョウを見るチャンスだ。イチジクの実がなると、森じゅうの生き物が集まって宴会のようになる。実がすっかり食べられてしまう前に、オナガサイチョウを見つける必要があった。

 私たちの到着と同時に激しい嵐になったが、ティムは近くの木を30メートルほど登り、何とかブラインドを取り付けた。幸いにも、彼が雷に打たれることはなかった。

ハーラー・バーラー野生動物保護区で、写真家のティム・レイマンが林冠にブラインドを設置する。実を付けたイチジクの木にオナガサイチョウが食事に来るのを期待して、撮影場所を確保した。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN)

 翌日から数日間、私たちは朝5時すぎにはイチジクの木にやって来ていた。日が昇る前にそこにいれば、オナガサイチョウは私たちの存在に気付かないのではないかと期待したのだ。

 早朝のまだ薄暗い中、ティムは木の上、私は地面に腰を下ろした。待っている間に夜の虫が静まり、昼の虫が音を立て始め、夜の霧が去り、昼の湿気が訪れた。サルやリス、別種のサイチョウの仲間たちがやって来たが、悲しいかな、オナガサイチョウがイチジクを食べに現れることはなかった。

 樹上で1日10時間過ごすのは、ティムにとって苦ではない。居心地の良い場所を作るのはすっかりお手のものだからだ。「小さな座席を作ります」とティムは言う。「座るためのパッドがありますし、向きを変えたり、体を少し伸ばしたりもできます。オナガサイチョウは協力的ではありませんでしたが、ほかの鳥やサルもいました。観察する物はたくさんあり、写真や映像を撮って時間を過ごしました」(参考記事:「極楽鳥を追いかけて」

【動画】幻の鳥オナガサイチョウを追って
写真家ティム・レイマンが絶滅寸前の鳥オナガサイチョウのレアな生態と密猟の実態を撮影した。(解説は英語です)

 イチジクの木の近くで数日間過ごした後、私たちは移動せざるを得なくなった。私は取材を続けるためにインドネシアへ行き、ティムはもう1つの巣を訪ねることにした。2つ目の巣では、最初の巣ほど雄が警戒しておらず、ティムは何枚か追加の写真を撮ることができた。ただ、バラエティーに富んでいるとはまだ言えなかった。

「この時点で撮れていたのは、巣で撮ったものばかりでした。雌はすでに中にいて、雄が食べ物を届けにきているところです。とても良い場面ですが、それは記事の一部でしかありません」

 撮影チームは事務所に戻り、別種のサイチョウも取り上げるかどうか話し合いを始めた。オナガサイチョウの写真が足りなかった場合の対処について検討したのだ。この鳥がいかに見つけにくく、いかに希少かを私たちは見せつけられた。サイチョウの仲間はどれも魅力的で美しい。そこで私たちは、別のサイチョウにも目を向けて、東南アジアの熱帯雨林の生態系を今以上に余すところなく描こうと決めた。何しろ、見事なツノサイチョウやオオサイチョウを私たちは確かに目にしていたのだ。(参考記事:「ヘンなくちばしをもつ鳥、写真12点」

【ギャラリー】サイチョウの写真13点、難航した取材の副産物 (写真クリックでギャラリーページへ)
タイのカオヤイ国立公園上空を飛ぶオオサイチョウ。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN)

 記事の掲載にはまだ数カ月あり、私たちはもう1カ所で取材を予定していた。オナガサイチョウ密猟のホットスポット、ボルネオ島インドネシア領だ。その地の森でオナガサイチョウを1羽でも見られればと思ったが、この取材はオナガサイチョウそのものを見るというより、その密猟を記録することになるのはわかっていた。今回、ティムもブラインドの陰で何時間も過ごす余裕はない。私たちはあまり望みをかけていなかった。

 現地の先住民であるダヤク、イバンの村人たちと共に1週間過ごした私たちは、彼らの文化においてオナガサイチョウがいかに重要か、なぜ同じ部族から密猟に走る者が出ているのかをたっぷりと聞いた。そして、取材の最終日となるはずだった日、ある研究者から情報が届いた。彼のチームがオナガサイチョウのつがいを見つけた。場所は西ボルネオで、営巣できそうな場所を探しているという。

 あまりにうまい話で信じられなかった。しかし、記事を飾るオナガサイチョウの写真を撮る最後のチャンスだ。

 私はワシントンD.C.に戻らねばならなかったが、残りのメンバーはすぐに食料を調達し、大きな期待をしてその場所へ出かけていった。

ボルネオ島のグヌンパルン国立公園で、ツノサイチョウが高い林冠に止まっている。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN)

「つがいがいるという場所を聞いて、とても興奮しました」と、ティムは振り返る。「雄と雌が巣の外にいるのを目の当たりにし、写真に収められる機会はまれです。とても幸せでしたし、ほっとしました。バラエティーに富んだ姿を撮れたので、初めに意図した通り、全体を通してオナガサイチョウに焦点を合わせた記事になりましたから」

 ティムの粘り強さは、オナガサイチョウの幅広い行動をとらえた写真という形で最後に報われた。なかには、ここまで記録されたのは初めての作品もある。別種のサイチョウたちの写真は結果的に必要なくなったが、彼らもまた印象的なので、ここで紹介しておきたい。

【この記事の写真をもっと見る】【ギャラリー】サイチョウ、難航した取材の副産物 あと4点

文=RACHAEL BALE/訳=高野夏美

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