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たくさん生まれたパンダの子どもたちが撮影のために並べられている。中国四川省、碧峰峡にあるパンダ繁殖センターにて。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

かわいい!けど大変、3年がかりのパンダ撮影の舞台裏 写真20点

2018.08.24
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 パンダの愛らしさは否定のしようがない。だが、写真家のエイミー・ビターリ氏が大のパンダ好きになったのには別の理由がある。象徴的な存在であるパンダを、ナショナル ジオグラフィック誌のために新たな方法で撮影しようという試みは、ビターリ氏のこれまでのプロジェクトの中でも、屈指の難しさだった。

 3年を費やし、ビターリ氏は中国パンダ保護研究センターが運営する複数のパンダ基地を訪問。中でも、臥龍(ウォロン)パンダ基地と碧峰峡(ビーフォンシア)パンダ基地に足しげく通った。

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写真の子パンダ3頭は、碧峰峡のセンターで同じ1頭の母親が育てている。虚弱な子や、生みの母親が育児をやめた子を代理母に世話させることで、赤ちゃんパンダの生存率が大きく向上している。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「動物園で見慣れているパンダは、とても活発で社交的な生き物ですし、漫画ではおどけ者のキャラクターとして描かれたりしますが、実際のジャイアントパンダは、人目を避ける傾向が強いです」とビターリ氏は言う。囲いを設けた広大な生息地にパンダが暮らしている臥龍では、密に生い茂った竹林の間や木のてっぺんにパンダが見えるのを、長時間待たねばならなかった。

 施設の目標は、ここで生まれたパンダを最終的に野生に帰すことだ。したがって、パンダは人間との接触から厳重に守られており、ビターリ氏がパンダに近づくハードルはさらに上がった。パンダを撮るにはどうすればよいか。ビターリ氏は、パンダの尿と糞のにおいを付けたパンダ模様の服を着込み、日の出から日没まで、シャッターチャンスが訪れるのを待つことにした。こうして変装すれば、パンダからは、人間ではなく変わった体型のパンダだと思われるはずだ。(参考記事:「【動画】パンダの野生復帰に成功、元気な姿を公開」

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碧峰峡の保育室で昼寝をする、生後3カ月の子パンダたち。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

困難な撮影

 碧峰峡にある繁殖センターでは、熱心なスタッフが24時間体制でパンダの世話をしている。ここではパンダの触れ合いを撮る機会に何度も恵まれたが、難しさもあった。飼育員たちはパンダを守ることが第一で、優れた写真を撮ることよりも、大事な動物の福祉の方をはるかに気にかけている。彼らのやり方の範囲内で、うまく撮影を進めなければならなかった。

「パンダ基地に出入りが許されて、地元の人たちの信頼を得られただけでなく、野生動物と仕事ができたのは素晴らしいことでした」とビターリ氏。「赤ちゃんパンダは弱く無防備ですが、生後6カ月経つと歯や爪が生えています。彼らはクマの仲間ですからね」(参考記事:「史上最古のパンダのDNAを解析、亜熱帯に適応か」

目が見えず、体毛もわずかなパンダの赤ちゃんがキーキーと声を上げている。生まれたときの体重は母親の約900分の1しかないが、姿はすぐに変わっていくだろう。パンダは哺乳類の中でもかなり成長が早く、100グラムほどだった体重が生後1カ月で1.8キロまで増える。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
双子を産んだ母パンダは通常、両方を公平に世話できない。そこで碧峰峡では、母親が抱く赤ちゃんを飼育員が一定時間ごとに交代させ、どちらも母親と飼育員の両方から世話されるようにすることで、母パンダの負担を減らしている。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 撮影にあたってどんな秘訣があったのか、ビターリ氏は著作の中で明かしている。詳しくは、氏の近著『Panda Love: the Secret Lives of Pandas(パンダ・ラブ:パンダの秘密の生活、未邦訳)』にまとめられている。

 写真家は、撮影すべきことが起きたときのために備えていなければならない。ビターリ氏は、施設で、ある母パンダの出産が近づき、何も起きないまま二日二晩が過ぎたときのことを振り返った。「彼女の行動が少し変わり始めていることが徐々に分かってきたので、準備を始めました。赤ちゃんが産み落とされ、甲高い声が上がりました。あっという間の出来事でした。数秒のうちに、ミンミンは口で赤ちゃんをくわえ、私たちに背を向けました」

【動画】愛くるしいパンダ、飼育は至難の業 / 飼育下のパンダに交尾を促し、妊娠を成功させ、生まれた子どもを無事に育てるにはどうすればいいのか。中国にあるジャイアントパンダ繁殖センターの研究者たちが方策を見いだした。 (解説は英語です)

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