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中国・丹東の国境にかかる中朝友誼橋のたもと。男性が土産物を物色する。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

対岸は北朝鮮、鴨緑江沿いの街の日常 写真20点

2018.05.31
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 2017年12月、米国の写真家イライジャ・ハーウィッツ氏は、中国と北朝鮮の国境地帯を取材した。両国を隔てている鴨緑江(オウリョッコウ)に沿って移動すると、国境の警備は意外にもゆるく、市街を外れた地域では、まばらに監視カメラが置かれているだけだったという。(参考記事:「【動画】見たことのないリアル平壌」

 中国側の町、丹東(ダンドン)は、合法であれ違法であれ国境をまたいだ貿易の中心地だ。監視が厳しくない時期には、両国に住む親族の間で物品や現金の受け渡しが行われることもある。丹東には、何世代も前からこの土地で暮らしてきた朝鮮族が数多くいる。(参考記事:「中央アジアに強制移住させられた朝鮮人の消えゆく文化 写真16点」

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丹東のホテルで歌う北朝鮮の歌手。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

「丹東での初日、私は二人の女性とタクシーをシェアしました。彼女たちは箱詰めにしたソジュ(朝鮮の蒸留酒)を運んでおり、北朝鮮から来たと言っていました」とハーウィッツ氏は言う。「彼女たちの言葉がにわかには信じられなかった私は、その後、二人を写した写真を丹東在住の中国人に見せたのですが、その彼も、二人が北朝鮮から来たというのは本当だろうと言っていました」

 2017年末、国連は兵器開発計画の中止を求めて北朝鮮に対する制裁を決議し、中国もこれに続いた。長く同盟関係にある中朝間の緊張が高まり、また冬の寒さも厳しい時期ではあったが、地元住民にとってはごく当たり前の日常であるその生活の様子を、ハーウィッツ氏はカメラに収めた。(参考記事:「ギャラリー:国境に分断され「王国」を宣言した先住少数民族 写真19点」

 中国側で特に張り詰めた雰囲気を感じたのは、長白(チャンバイ)という小さな村だったという。長白は、丹東から車で北へ10時間ほどの距離にあり、北朝鮮の恵山(ヘサン)の対岸に位置している。

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北朝鮮・恵山の町から水蒸気が立ち上る。中国・長白から眺めたところ。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

「長白はおそらく、私が訪ねた中で最も強い緊張感を覚えた場所でした。この村の住民たちがよそ者やジャーナリストに対して警戒心を抱いていることは有名で、過去には諜報員だとの疑いをかけられて投獄された人もいます。監視カメラがそこら中に設置されており、私の運転手はひどくおびえた様子をみせ、よそ者である私に向けられる住民たちの目は疑いに満ちていました」とハーウィッツ氏は言う。「国境地帯での撮影中、カメラを隠したほうがいいと感じた場所はここだけでした」

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中国の長白朝鮮族自治県の市場で、店頭に座る売り物のアヒル。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

 事実、2018年3月に金正恩氏が突然の訪中を行うまで、両国間の緊張は増すばかりだった。

「鴨緑江は中朝の国境を形成する2本の川のうちの1本ですが、この川はもう1本の豆満江よりも川幅があります」。キリスト教徒活動家で、脱北者の支援も行っているティム・ピーターズ氏はそう語る。「特に冬の間はいわゆる『無人地帯』のような状態になるため、中国に脱出したい人たちにとっては都合がいいのです」

 ピーターズ氏のような活動家やジャーナリストたちは、過去1年半の間に、中国側の警備体制が厳しくなったことに気づいていた。「とりわけ去年1年間で、川に住人以外の人が近づくことは難しくなってきました。中国側が武装を強化しているためです」

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警備が厳しい中朝友誼橋付近に設置された監視カメラ。農村地域は都市部よりも警備が手薄だが、脱北者が中国で捕まれば本国へ強制送還される。脱北者には厳しい刑罰や禁固刑が課せられる。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

 川の向こうには、こちら側とはまるで違う、時が止まったかのような北朝鮮の生活の様子が見える。中国人旅行者が船の上から北朝鮮を眺めているのと同じように、北朝鮮側の恵山の人々も、川向こうからいつも中国人旅行者を眺めている。(参考記事:「北朝鮮の地下鉄に乗ってみた 写真13点」

 それでも二つの文化は、国境を隔てながら共存を続けてきた。その証拠が、数多くの朝鮮料理店だとハーウィッツ氏は言う。(参考記事:「北朝鮮を訪れた「最後の米国人旅行者」の写真」

「気楽なことを言うようですが、中国で食べた朝鮮伝統料理のおいしさには感動しました。とくに集安市の店はすばらしかったです」(参考記事:「国境の先にユートピアはあるのか、少年難民の苦悩」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:対岸は北朝鮮、鴨緑江沿いの街 写真20点(画像クリックでギャラリーページへ)
丹東の夕暮れ。対岸は北朝鮮の街。(PHOTOGRAPH BY ELIJAH HURWITZ)

※ナショナル ジオグラフィック2018年6月号には、写真コラム「カメラの前に立った平壌市民」を掲載しています。

文=Soo Youn/写真=Elijah Hurwitz/訳=北村京子

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