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ナイロビに広がるスラム街キベラの自宅裏でバレエの練習をするパメラ・アディアンボさん(16歳)。キベラで約6年間レッスンを受けた彼女は、現在アーティスト・フォー・アフリカという慈善団体の支援を受けて、プロのダンススタジオで訓練を積んでいる。(PHOTOGRAPH BY FREDRIK LERNERYD)

スラムで踊る少女たち ナイロビの街で夢輝かす若きバレリーナ

2018.03.01
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 キベラは、ケニアの首都ナイロビで最大のスラム街だ。その一角にある学校「スプルジョンズ・アカデミー」では毎週水曜日の午後、終業のベルとともに、セメントの壁に囲まれた教室がバレエスタジオに変身する。約20人の女生徒が机と椅子を片付け、床をほうきで掃き、青やピンク、紫色のレオタードを着て先生を待つ。そこへ、温厚なマイク・ワマヤ先生がラジカセを持ってやってきた。クラシック音楽が室内に満ち、少女たちは踊り始める。(参考記事:「バレエダンサーの卵たち」

 ナイロビを拠点に活動するスウェーデンの写真家フレデリック・レアネルド氏は、18カ月にわたってワマヤ先生と少女たちを取材し、水曜日のバレエレッスンを20数回見学した。初め少女たちは緊張した面持ちだったが、「次第に私の存在に慣れ、写真を撮られることにも慣れてきました」という。

 レアネルド氏がこのバレエ教室に惹かれたのは、その対照性に興味を持ったためだった。「第一に、少なくとも私にとってバレエは、上流社会のダンスという印象がありました。キベラのような地域で見られるとは思ってもいませんでした」。視覚的にも、薄暗い教室にレオタードやタイツ、チュチュなどの衣装が華やかな彩りを添える。「これは、彼女たちを待ち受けるキベラでの日常生活よりも、もっと大きな何かを達成できるという夢や希望の物語なのです」と、レアネルド氏は強調する。(参考記事:「少女たちが見つめる希望の光」

【ギャラリー】スラムで踊る少女たち 写真16点
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レッスンに備えるバレリー・アウマさん、テレサ・アティアノさん、ラベンダ・オリサさん、エミリー・アディアンボさん。(PHOTOGRAPH BY FREDRIK LERNERYD)

 レアネルド氏が撮影した少女たちは、子どもたちへの芸術教育を推進する慈善団体「ワン・ファイン・デー」と「アンノズ・アフリカ」の支援を受けている。レアネルド氏も、可能な範囲で協力している。ある時はナイロビの同居人たちと一緒に少女らを昼食に招き、ピザ生地とトッピングを配って好きなピザを作らせた。またある時はウェンディという少女とその家族にアイスクリームをふるまった。「自分の持っているものを少しでも分け与えるのは、当たり前のことだと思っています。私たちの状況はあまりに違いすぎますから」。自分とキベラに住む人々の間にある持てる物の格差について、レアネルド氏はそう語った。

 16歳のパメラ・アディアンボさんは、子どものころテレビで見たバレエがずっと忘れられなかった。それから何年も経ってアンノズ・アフリカがスプルジョンズ・アカデミーへやってきたとき、試しにトウシューズを履いてみたところ、たちまちその魅力に取りつかれた。現在パメラさんは、プロのダンサーになりたいという夢に向かって着実に歩んでいる。アンノズ・アフリカと協力する「アーティスト・フォー・アフリカ」の支援金を受け、ナイロビの寄宿学校で生活しながら、プロのダンススタジオ「ダンス・センター・ケニア」で週5日のレッスンに励んでいる。(参考記事:「ありのままの自分で 米国の少女たち」

「ダンスを通して、パメラは人生を大きく変えることができました」。レアネルド氏は、敬服するようにそう語った。そして、ほかの子どもたちへも希望を与えている。トレーニングが休みに入り、自宅へ戻ったパメラさんが裏庭で練習を続けていると、ワマヤ先生のレッスンを受けている少女がその様子を見にやってきた。「この子もまた、パメラと同じ道をたどりたいと願っているのです」と、レアネルド氏はいう。(参考記事:「国境の先にユートピアはあるのか、少年難民の苦悩」

【ギャラリー】スラムで踊る少女たち 写真16点
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順番を待つほかの生徒たちが見守るなか、ピルエットの練習をするウェンディ・オチエングさん。(PHOTOGRAPH BY FREDRIK LERNERYD)

 レアネルド氏は一緒に過ごすうちに、彼女たちがダンスを通して自分を表現することを学び、自信をつけていく過程を目の当たりにした。練習中、何も履いていない6組の足が一斉に宙に跳ね上がった瞬間をとらえた写真がある。キベラという狭い宇宙を超えた先へ到達しようと努力する少女たちを象徴する一枚だ。(参考記事:「幼くして花嫁になるシリア難民が増加、15歳で離婚も 写真7点」

「ここで成長する子どもたちの抱く夢は、世界中どこにいる子どもたちとも同じものなのです」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:スラムで踊る少女たち あと13点

文=Sarah Stacke/訳=ルーバー荒井ハンナ

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