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こちらを見つめるオランウータン。米国ナショナル ジオグラフィックのネイチャー写真賞「Nature Photographer of the Year」のグランプリを受賞した。(Photographs by Jayaprakash Joghee Bojan)

見つめるオランウータン、2017年グランプリ作品撮影秘話

2017.12.15
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拡大するアブラヤシ農園

 スーパーの棚に並ぶ商品の多くにパーム油が使われているが、そのうち90%近くがインドネシアやマレーシアで森林を伐採して植えられたアブラヤシから採られている。製造会社や貿易会社は、森林伐採を減らすための措置をある程度取ってはいるものの、依然として伐採は続いている。

 オランウータンの生息地が縮小すると、人間との接触も増える。エサである果実や葉が見つからずに、腹をすかせたオランウータンがアブラヤシの若木を食べにやってくれば、農園主はオランウータンを害獣と見なして傷つける恐れもある。捕獲されて闇市場で売られることもある。特に、人間に殺されるなどして親を失った子どものオランウータンが狙われやすい。

 オランウータンはおとなしく、単独で行動し、成長が遅く、メスは8年に一度しか出産しない。そのため、こうした様々な脅威はすぐに生息数の減少につながる。国際自然保護連合(IUCN)は、2025年までにオランウータンの数が1950年と比較して82%減少しているだろうと予測する。オランウータンにとっては、わずか3世代という短い期間だ。(参考記事:「オランウータンは8歳でも授乳、霊長類最長と判明」

 ボジャン氏は、この現実を重く受け止めている。「ジャカルタからボルネオへ向かって飛んでいると、眼下にはアブラヤシ農園以外何も見ることはできません」。状況の複雑さは理解できる。ヤシ園は、地元の人々が切実に必要としている雇用を生み、経済的恩恵をもたらす。とはいえ、ボジャン氏はオランウータンにも共感を覚える。

「彼らの見た目や行動にはとても人間らしい側面もあるので、親しみを感じやすいです。おだやかな表情をしていて、優しい心の持ち主なんです」

 問題解決には大幅な政策変更が必要だが、既に援助の手は差し伸べられている。アルバイン氏の団体「グリーン・チーム」は、エコツーリズムを通してオランウータンの生息地を守ることの大切さを人々に伝えている。さらに、ヤシ園に売却される前に島の土地を買い取るため、収益の一部を投資している。

「彼らの行動と熱意には驚かされます」と、ボジャン氏はいう。

 そのボジャン氏も、このコンテストで受け取った賞金の一部をアルバイン氏の団体へ寄付して、自分も保全活動に積極的に参加したいと願っている。

「受賞したこと自体うれしいですが、何よりもこの写真が選ばれたことをとてもうれしく思います。私よりも、オランウータンの方がこの賞を受けるのにふさわしいと思っています」


【この記事の写真をもっと見る】川を渡るオランウータンの連続写真7点

ナショナル ジオグラフィック2016年12月号

 特集「オランウータン 樹上の危うい未来」を収録。そのほか「ロシア プーチン世代の若者たち」「プラセボ 信じる者は癒やされる」などを掲載しています。

文=Rachel Brown/写真=Jayaprakash Joghee Bojan/訳=ルーバー荒井ハンナ

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