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「14ミリの超広角レンズのおかげで、大きさが際立つ効果が出ました」—ガブリエル・バラシュー氏(PHOTOGRAPH BY GABRIEL BARATHIEU, UPY 2017)
世界的な水中写真コンテストである「アンダーウォーター・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(Underwater Photographer of the Year)」の2017年の審査結果が発表された。いずれの写真も水中の豊かな表情を伝えてくれる。(参考記事:「水中写真コンテスト受賞2016、驚きの11作品」)
浅瀬を泳ぐタコの姿をとらえた「踊るタコ」。水中写真家のガブリエル・バラシュー氏の作品が、最高の賞である「アンダーウォーター・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。撮影地はインド洋の小島、フランス領マヨット島沿岸のラグーンだ。
「タコの動きは、地上のどんな捕食者ともまるで違います」と、審査員のアレックス・マスタード氏は言う。「別世界から来たエイリアンに違いないと思わされます」
ベストショットを待つため、バラシュー氏は並々ならぬ忍耐力を発揮した。「水中でのタコのボリューム感を出すため、水深がわずか30センチになる春の干潮を待たねばなりませんでした。広角レンズで可能な限り近づき、タコが巨大に見える写真を作り出しました」(参考記事:「Your Shotに投稿されたバラシュー氏の別の作品」)
UPYロンドンが主催するこのコンテストに、今年は67カ国から4500枚を超す応募があった。水中写真の経験豊富な審査員が集まり、各分野で最高の1枚を選んだ。今年の審査員は、写真家のマーティン・エッジ氏、アレックス・マスタード、ピーター・ローランズ氏。マスタード氏とローランズ氏の写真はナショナル ジオグラフィックにも掲載されている。コンテストは英国水中写真家協会が設立される契機となったため、英国からの応募者を特に表彰する部門がある。(参考記事:「最高峰のネイチャー写真賞、受賞作10点」)
今年は写真家のニック・ブレーク氏が、英国人に贈られる名誉ある「英国年間水中写真家賞」を受賞した。受賞作「アウト・オブ・ザ・ブルー」は、淡水をたたえたメキシコのセノーテ・チャックモールと呼ばれる陥没穴で撮ったものだ。日光が降り注ぎ、暗い水面で反射すると、陥没穴が壮観な光のカーテンを生み出した。
ブレーク氏は自身の手法について、こう話した。「水中写真家は3次元の自由な動きが可能です。ゆえに、岩が作ったフレームの中で光線が対称になるように、水中で自分の位置を調整しました」
大会審査員のマーティン・エッジ氏は、「セノーテの中に光を囲い込んでいるところが気に入りました」と評価する。「この構図は太陽光を全て封じ込めているので、見る者の目は逃れられません」
「新進水中写真家賞」と「年間最有望英国水中写真家賞」は、それぞれホラシオ・マルティネス氏とニコライ・ジョルジョー氏が受賞した。
このほか、広角、マクロ、残骸、行動、ポートレート、コンパクトカメラ、英近海・広角などの部門で優秀作品が選ばれた。受賞作品は、親しみを覚えるクジラの母子から、第2次大戦中に沈んだ航空機の残骸まで、水中の表情豊かな世界を見せてくれている。
写真家たちは受賞作をどう撮ったのだろうか。ぜひ読んでみてほしい。