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押収された動物製品、19世紀の技法でアート写真に 9点

2018.12.18
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 カナダ某所の建物の地下室。ここでは、カナダ政府が国境で押収した数千点の野生動物製品が厳重に保管されている。すべて違法に取引されたものだ。写真家のクリスティン・フィッツジェラルド氏は、特別な許可を得てこの地下室に入り、その規模に圧倒された。そこには、シマウマの蹄、サイの角、クマの爪、象牙の彫刻、鳥の羽根など、ありとあらゆる野生動物製品があった。(参考記事:「ゾウの60%が消えたタンザニア、その原因は」

「野生動物の違法取引問題の恐ろしさがよくわかりました」と彼女は言う。「この問題を抱えていない国は1つもないのです」(参考記事:「中国でロバ皮ブーム、アフリカで密輸が急増」

 野生動物の密輸と聞くと、アフリカと中国を思い浮かべる人が多いかもしれない。だが、カナダと米国も大きな消費地であり、供給地でもある。野生動物の保護団体「ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ」によると、2005年から2014年までに違法に取引され、米国で押収された野生動物と野生動物製品は約5万点にのぼるという。また、米サンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙は、米国魚類野生動物局が野生動物犯罪に関して毎年1万件以上の調査を行っていると報じている。さらにカナダのCBC放送によると、カナダでは野生動物の違法取引が毎年平均330件以上摘発されているが、その多くが生体を扱っていて、2011年から今日までに4000点の野生動物とその体の一部が押収されているという。(参考記事:「高級ヤマネコ毛皮の陰に、残酷なわな」

【ギャラリー】押収された動物製品、19世紀の技法で撮影 写真9点(写真クリックでギャラリーページへ)
2個の洋梨と乾燥させたクマの胆のう。クマの胆のうを乾燥させた熊胆(ゆうたん)には胆汁が含まれ、中国の伝統医学では肝疾患や胆石の薬として珍重されている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTINE FITZGERALD)

 フィッツジェラルド氏は今回、カナダ野生動物管理局から特別に許可を受けて、押収された野生動物製品の一部を見ることができた。彼女は2018年の冬から春にかけて地下室を数回訪れ、何時間もかけてケースの中身を確認し、写真を撮影した。氷穴釣り用のテントを持ち込んで仮設の暗室を作り、その場で現像もした。

「伝統的な静物画のような写真にすることで、見る人の想像力を刺激し、犠牲になった動物たちに『声』を与えたかったのです」と彼女は言う。(参考記事:「米国人による“趣味の狩猟”で大量の動物が犠牲に」

 燭台に立てたレイヨウの角や洋梨の間に置いたクマの胆のうなど、写真のなかには思わず二度見してしまうようなものもある。それは意図的なものだ。フィッツジェラルド氏はあなたの注意を引きつけようとしている。

「最良の写真、最良の芸術作品とは、見た人がそれについて何日も考えずにはいられないようなものだと思います」

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カモやその体の一部は渡り鳥条約による保護の対象になっている。カナダはこの条約に加盟している。(PHOTOGRAPH BY CHRISTINE FITZGERALD)

 彼女のプロジェクトの目的は野生動物の違法取引に光をあてることだ。野生動物の違法取引の総額は、年間70億ドル~230億ドル(約8000億円~約2兆6000億円)にのぼるともいわれる。(参考記事:「【動画】潜入!トラ闇取引の現場、解体して販売」

 野生動物の違法取引を題材にした写真のほとんどはフォトジャーナリズムのスタイルで撮影されているが、フィッツジェラルド氏は今回、芸術的なスタイルをとろうと考えた。写真が古めかしく見えるのは、コロジオン湿板法という1850年代の手法で撮影したからだ。(参考記事:「違法取引の危機にさらされる希少な野生動物たち 写真8点」

「写真を見る人を過去に連れて行こうと考えたのです。それでも、写真がとらえているのは現代的な問題の、今の姿なのです」

 彼女が人々を連れて行こうとしたのは、アフリカやアジアを訪れた西洋人が、象牙や動物の剥製などの土産を本国に持ち帰った植民地時代だ。(参考記事:「日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認」

「コロジオン湿板法の美しさは偶然生じる欠点にあります。私にとって、こうした欠点は人類の欠点のメタファーです」とフィッツジェラルド氏は言う。「野生動物の違法取引を横行させているのは欲望と無知と無関心です。どれも人類の欠点です」(参考記事:「ワシントン条約会議が浮き彫りにした9つの現実」

【ギャラリー】押収された動物製品、19世紀の技法で撮影 写真9点(写真クリックでギャラリーページへ)
剥製職人は、トロフィーハンターが殺害したシマウマの足を使ってブックエンドやランプスタンドなどの家具を制作する。(PHOTOGRAPH BY CHRISTINE FITZGERALD)

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:押収された野生動物製品をアート写真に、写真あと5点

文=Rachel Fobar/写真=Christine Fitzgerald/訳=三枝小夜子

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