Photo Stories撮影ストーリー

オランウータンが高さ30メートル近くある木を登ってくる。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN)

オランウータン驚異の木登り、こうして撮った

2016.12.13
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

写真家ティム・レイマン氏は、ナショナル ジオグラフィック2016年12月号のために撮影したオランウータンの写真(上の写真の別カット)で、ネイチャー写真の最高峰「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」グランプリを受賞した。撮影秘話を本人が語る。(参考記事:「最高峰のネイチャー写真賞、受賞作10点」

 これまで誰も見たことのないオランウータンの写真を撮るには、どうしたらよいか。そんな自分への問いかけから、この写真のアイデアを思い付いた。(参考記事:「【インタビュー】Webナショジオ・インタビュー ティム・レイマン」

 野生のオランウータンが、『森の人』の本領を発揮する姿を撮ろう。熱帯の原生林の高い木の上で、それも広角レンズを使って。

 ロープを使って高い木に登るツリー・クライミングの装備や技術は、これまで長くやってきたから慣れている。しかし野生のオランウータンはとってもシャイなので、私が木の上にいると登ってこない。だから今回のような写真を撮るには、隠しカメラを遠隔操作しなければならない。問題はどこにカメラを置くかだ。

【動画】木を登ってくるオランウータンのタイムラプス

 ボルネオ島にあるインドネシアのグヌン・パルン国立公園の森は、私にとってなじみのある場所だ。何年もこの森で撮影や研究プロジェクトの仕事をしてきたし、妻で共同研究者でもあるボストン大学教授、シェリル・ノットもここでオランウータンの研究や保護活動を行っている。私にとって非常にありがたいのは、研究者に慣れている野生のオランウータンが多いことだ。(参考記事:「オランウータン 樹上の危うい未来」

 国立公園での撮影時間の大半は、妻の研究チームと一緒にオランウータンを追いかけ、地上から望遠レンズを使って撮影することに費やした。同時に、樹上から見下ろす理想の広角写真を撮るために、カメラを仕掛けられそうな木を探し続けた。

 2014年に公園を訪れた際、カエトカルプスという木に実がなっているのを見つけた。オランウータンに好まれる木だ。私はその木に登り、2つのデジタル一眼レフを隠した。そこから長い張り込みが始まった。撮影を手伝ってくれた写真家のトレバー・フロストは、遠隔操作のスイッチを持ち、iPhoneに入れた蔵書を読みながら、まる1週間以上木の下で過ごすことになった。

 オランウータンはほぼ毎日この木にやって来るが、葉が密集していて光が足りず、撮影できないことも多い。オランウータンの方もカメラに気づいているらしく、カメラの設置場所を迂回したりする。何枚かは撮れたものの、満足できるものはなかった。しかし、この方法が使えることはわかった。必要なのは、ちょうどよい木を見つけること、そしてもっとうまくカメラを隠すことだ。(参考記事:「研究室に行ってみた。国立科学博物館 オランウータン 久世濃子」

 翌年、イチジクの実を探している若いメスのオランウータンを追っていくと、樹冠が大きく広がった木を見つけた。このメスが木に登って実を食べ始めると、すぐに若いオスもやって来た。この木は独特の形をしていて、木の上部がまわりの木々に接していない。つまり、オランウータンはこの幹を登らない限り、実を食べることができない。まさに撮影にうってつけだ。(参考記事:「イチジクの砦を支える小さなハチたち」

【動画】ボルネオの樹上から
完璧なオランウータンの写真を撮るため、写真家のティム・レイマン氏は高い木にカメラを仕掛け、撮影に挑む。(解説は英語です)

 オランウータンたちがいなくなったあと、ロープを使って木に登り、カメラを仕掛けた。今度は、小さくて隠しやすく、地上から無線操作できるGoProカメラを使うことにした。その後3日間、オランウータンがやってくる合間を狙って毎日何度か木に登り、夜明け前にカメラを設置したり、回収したり、バッテリーを交換したりした。

 オランウータンはイチジクの実がなくなるまで毎日やって来る。そのため、撮影のチャンスは何度かあったが、すぐに写真が撮れたわけではない。カメラの死角になる幹の反対側から登って来ることもあれば、暗かったりぶれたりして使えない写真もあった。

 そして3日目。ついに心に描き続けてきた写真、ありのままのオランウータンの姿をとらえることができた。(参考記事:写真家プロフィール:ティム・レイマン

ナショナル ジオグラフィック日本版2016年12月号

 ティム・レイマン氏が撮影したオランウータン特集を収録。その他、プラセボ効果の効能やプーチン支持するロシアのレポート等、掲載しています。

文=Tim Laman/訳=鈴木和博

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ