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竹島の観光地化、フランス人写真家が見た 写真17点

2018.11.20
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 日本海の真ん中、日本と韓国のほぼ中間地点に、2つの岩山のような小島がある。この島はしかし、300年以上にわたって日本と韓国の争いの中心になっている。日本では竹島、韓国では独島(トクト)、第三国ではリアンクール岩礁と呼ばれている島だ。

 ここは決して観光客向けの場所ではない。しかし、韓国の熱狂的な愛国者たちは、集団でこの島を訪れる。そして、国旗を掲げ、自撮り写真を撮り、音楽を演奏し、遊歩道を行進し、韓国がみずからの領土だと主張する海岸線を見物するなど、彼らにとっての「国民の義務」を果たす。

 2018年の夏にこの島を訪れたフランス人写真家のティム・フランコ氏は、ナショナル ジオグラフィックの取材に対して次のように話している。「韓国人は、文化や人種を非常に大切にします。どんなものであろうと、所有物は守りたいと思うのです。独島はその良い例です。第二次世界大戦以降保有してきたものであり、それを守ることは重要なのです」。日本も竹島としてこの島の領有権を主張しているが、「巡礼」を行うのは韓国人だけだとフランコ氏は言う。(参考記事:「朝鮮半島の古地図10選 日本より大きく描かれたものも」

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貴重な機会にいちばんのスーツを着るジュン・マンセク氏。1948年に米国による軍事演習で犠牲になった漁師の追悼セレモニーを進行することになっている。(PHOTOGRAPH BY TIM FRANCO)
追悼セレモニーの練習を行う出演者。(PHOTOGRAPH BY TIM FRANCO)

 海の天気は変わりやすいため、島を訪れることができるのは夏のみ。天気がよければ、旅行客は許可された30分以内で島を探索できる。だが、立ち入ることができるのは、東側の女島(東島)にある人口の桟橋だけだ。ある旅行客は、フランコ氏にこう話した。「韓国人として、私たちは一生に一度はこの場所を訪れたいと願っています。ついにそれが叶ったということは、大きな意味を持ちます」。別の韓国人旅行客は、政治的理由だけからではなく、「ここに希望を感じる」からやってきたと話したそうだ。

 韓国人にとって、この希望の感覚は、かつて朝鮮半島を統治した隣国日本に対する深く根ざした感情と混じり合ったものだ。日本は今もこの島の領有権を主張している。日本の外務省のウェブサイトには、「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土」とある。さらに「韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠」であり、「冷静かつ平和的に紛争を解決する考え」としている。

 この争いは昔から続いている。韓国の主張によれば、「朝鮮の漁夫からの抗議を発端として、1696年に日本は竹島を放棄した(※日本はこれを否定)。1905年には、日本が竹島を日本領に編入し、日本による統治は1945年まで」続いた。韓国によれば、第二次世界大戦の終結とともに、竹島は「正当に」韓国領に復帰したのだとする。日本はこの主張を認めていない。(参考記事:「米国で見つかった日本の軍事機密「地図」14点」

 現在、竹島に関するプロパガンダは韓国本土に浸透している。「韓国に着いて空港から町に向かう列車に乗るたびに、独島についての動画を見せられることになります。国でもっとも美しい島であり、正当な韓国の領土であるという内容です」とフランコ氏は話す。英「エコノミスト」誌によると、2018年に行われた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩最高指導者との首脳会談の際、夕食会に出されたマンゴームースには、チョコレートで朝鮮半島の地図が描かれており、竹島の形をした点までついていたという。また、竹島付近でとれるイカやエビは、韓国で一番の美味だという。(参考記事:「北朝鮮と韓国、似ているけど微妙に違う写真12点」

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女島(東島)の頂上部から海を見張る警備担当者。50日ごとに交代となるが、その中ほどの時期にさしかかっているという。(PHOTOGRAPH BY TIM FRANCO)
島を離れる船に乗りこむ前に一休みする旅行客。(PHOTOGRAPH BY TIM FRANCO)

 韓国本土だけでなく竹島でも、韓国は領有権を主張している。79歳の漁師キム・スンド氏は、西側の男島(西島)に住んでいる。スンド氏が漁に出ることはほとんどなく、まもなく本土で暮らす病身の妻のもとに帰るという。「彼は、どちらかというとプロパガンダの道具にされています」とフランコ氏は言う。「旅行者がやってくるたび、彼は女島(東島)にやってきて歓迎します。彼がいなくなれば、韓国はこの岩礁に永住者がいるという主張ができなくなってしまうかもしれません」

 女島(東島)には韓国軍の基地があり、指揮官と39名の若い新兵が交代で駐在している。韓国では2年間の兵役が義務づけられており、竹島での兵役を希望する者もいる。「見方によって、簡単とも困難とも言えます。やらなければならないことは多くありませんが、やれることも多くありません」とフランコ氏は言う。夏の間、新兵たちは1日2回制服を着用して旅行者を歓迎する。それ以外、やることは訓練とゲームしかないという。

 この小島がいちばん盛り上がるのは、年に1度行われる記念パレードだ。毎年6月8日には、1948年に米国がこの島で爆撃演習を行った際に死亡した韓国人漁師を追悼する行事が行われ、厳かな儀式に参加するため政治家や遺族が集まってくる。70回目となる行事に参加したフランコ氏は、「儀式であると同時に、多分にPRの要素が含まれたイベントです」と言う。「当然ながら、遺族はこの島で亡くなった先祖に会ったことはありません。にもかかわらず、涙を流すのです。私の交渉担当を務めてくれたキャシー・ユン氏は、カメラの前でもう一度泣いてほしいと頼むジャーナリストを見かけています。本気でした」

 この岩礁と暗い海は、東アジアの関係を損ない続けている深い傷跡だ。もっとも中立的なリアンクール岩礁という名前は、1849年に危うく座礁しかけたフランスの捕鯨船にちなんだものだ。しかし、この島は、日本、韓国、中国の間で領有権が問題になっている多くの島の一つにすぎない。「この3国は、アジアでも特に力のある国々です。それでも、過去の歴史に根ざした負の感情は、まだぬぐいきれていないのです」とフランコ氏は言う。しかし、一般市民がそのような島を訪れることができるのは珍しい。運賃と2回の長い船旅の時間さえあれば、何が愛国者たちを駆り立て、いまだに国々を隔てているのかを、直接見ることができるかもしれない。(参考記事:「南シナ海、領有権争いと越の国内事情」

【ギャラリー】フランス人写真家が見た竹島、写真17点(写真クリックでギャラリーページへ)
夜空を照らすのは、漁船による強烈なライトだけ。(PHOTOGRAPH BY TIM FRANCO)

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文=ALEXANDRA GENOVA/写真=TIM FRANCO/訳=鈴木和博

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