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【ギャラリー】バルト海の離島で奇跡的に生き残った伝統文化、写真21点

女性たちによって守られてきたキフヌ島独自の文化は、エストニア内外から多くの観光客を集めている。(PHOTOGRAPH BY FABIAN WEISS)

バルト海の離島で奇跡的に生き残った伝統文化、写真21点

2018.10.27
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 それでも、文化を生かし続けようという島民たちの情熱は、金儲けがしたいという動機によるものではないと、サーレ氏とマタス氏は口を揃える。観光によって現金が得られれば、島のインフラが改善され、キフヌ島の生活の質が向上し、島に残るという選択をする家族が増えるかもしれない。1940年代に多くの家族が島を離れて以降、人口は回復していない。若者たちは今も海運や建設業界での仕事を求めて、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーに移り住む。島民の多くは、常に島で暮らしているわけではない。若者は本土の学校へ通い、大人の中には首都のタリンや、島から最も近い街パルヌに仕事を持っている者が多い。(参考記事:「スコットランド、最果ての島に住む若者たちの選択15点」

「若い家族が経済的な理由から島を離れれば、将来的には、島の学校に子供がいなくなってしまうでしょう」。それが最大の問題だと、マタス氏は言う。

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島民たちは車を所有しており、観光客はフェリーで車を持ち込むこともできるが、島内の主な移動手段は自転車か、ソ連時代のサイドカー付きバイクだ。(PHOTOGRAPH BY FABIAN WEISS)

 島では、現代的な住宅を建設して、本土からの移住を促す試みも進められている。「できることは何でもやってみなくてはなりません」とマタス氏は言う。ただし、島民の流出が続けば、島は空っぽの別荘が立ち並ぶ場所になってしまいかねない。

 観光客が増えるのはいいことだが、無節操に増やせば悪影響も出てくる。島の宿泊施設といえば、ベッド&ブレックファースト形式のものがあるだけで、それも300軒に満たない。観光がこれ以上さかんになれば、村にも環境にも負担がかかるだろう。(参考記事:「観光客の波がベネチアを台無しにする?」

 それでも当面は、観光客を大いに歓迎したいとサーレ氏は言う。

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153年前に立てられた灯台からの眺め。キフヌ島の観光名所となっており、島の南岸の風景が一望できる。(PHOTOGRAPH BY FABIAN WEISS)

 6月から8月にかけて、天候がいい日には、フェリーが1日に4回、本土とキフヌ島の間を1時間で結んでいる(船酔いしやすい人は、飛行機を使えば15分でキフヌに行ける)。タリンからは合計4時間の旅だ。マタス氏は、祭りや民族舞踊を目当てに来るなら、イベントの予定をチェックして、早めに計画するよう勧めている。本土のエストニア人が夏季休暇に入る時期には、数少ない宿泊施設はすぐに埋まってしまうからだ。

 冬にも島を訪れることは可能だが、かなりの覚悟が必要だ。9月を過ぎると、営業している宿は5軒のみとなる。午後4時にはあたりが暗くなり、海氷のせいでフェリーの航行はできなくなる。

 移動手段があてにならないことも島の暮らしの一部ではあるが、前もって計画を立てさえすれば、キフヌ島への旅は、穏やかな雰囲気、美しい自然、魅力的な文化を大いに満喫できるものとなるだろう。

「現代的なホテルに宿泊してロビーのバーでくつろぎたいという望みは、この島では叶いません」とマタス氏は言う。「もし民族文化に興味をお持ちなら、ぜひいらしてください。自然の中で、小さな島に特有の雰囲気、光、静けさを味わえるでしょう」(参考記事:「2017年の「ベスト・トラベル・フォト」 写真28点」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:「生きた博物館」エストニアのキフヌ島、写真あと15点

文=RACHEL BROWN/写真=FABIAN WEISS/訳=北村京子

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