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スペイン南部、グアディクスの丘は洞窟だらけだ。2000ほどの洞窟が何世代にもわたって住居として利用されてきた。(PHOTOGRAPH BY TAMARA MERINO)

フラメンコの故郷、スペインの洞窟住居に暮らす人々 写真19点

2018.08.27
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 洞窟は昔から、人々の「隠れ家」となってきた。スペイン南部の岩の洞窟は、大昔は嵐や動物から身を守る場だったし、ある時代には宗教的、民族的な迫害から逃れて暮らす場になった。現在は、誇りを胸に抱くユニークなコミュニティーが、現代的な生活から距離を置き、山の中で静かに暮らしている。(参考記事:「南米の宗教共同体、現代文明を排したこだわり生活 写真18点」

 南米チリの写真家タマラ・メリノ氏は、世界各地で洞窟居住者を撮影している。「私がいつも魅了されるのは、人が土地や環境とどう関わりを持ってきたか、それが彼らの生活にどんな影響を及ぼしてきたかということです」

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リビングルームに座るマニュエル・ゴンザレスさん(左)とエンカルナ・サンチェスさん。この洞窟はもともとサンチェスさんの家族の自宅で、サンチェスさんはここで生まれた。ゴンザレスさんもグアディクスの洞窟で生まれ育ち、現在はサンチェスさんと犬と一緒に暮らしている。
ドイツ移民のエリックさん。1998年からサクロモンテの洞窟で暮らしている。エリックさんは生計を立てるため、グラナダでクラシックロックのストリートパフォーマンスを行っている。(PHOTOGRAPH BY TAMARA MERINO)

 メリノ氏は現在取り組んでいるプロジェクトの第1弾として、まず、オーストラリアのオパール鉱山の町、クーバー・ペディを訪ねた。次に、第2弾として、スペインのアンダルシア地方に滞在し、洞窟だらけの辺境で暮らす人々の物語を記録した。「最も大事なのは、先入観を持たないことです。私は人々と一緒に座り、彼らの話を聞くことが好きです。自分の人生を共有することもあります」とメリノ氏は話す。(参考記事:「荒野の地下都市クーバー・ペディの不思議な生活14点、オーストラリア」

 アルハンブラ宮殿で知られるグラナダの街から40キロほど東にあるグアディクスでは、約2000人が洞窟住居に暮らしている。メリノ氏はここで昔ながらの生活を続ける人々に出会った。「彼らは今も、洞窟内で動物たちと暮らしています」

 アルハンブラ宮殿のそば、グラナダの街を見下ろすサクロモンテ(聖なる山の意)の丘にも洞窟住居がある。ここは文化や民族のるつぼだ。丘の上の方には、主に洞窟住居を不法占拠した人々が暮らしている。多くは不法移民だ。一方、丘の下の方には洞窟生活にひかれてやって来た合法居住者が暮らしていると、メリノ氏は説明する。(参考記事:「水辺に浮かぶ美しい家々 色彩豊かなベトナム移民たちの暮らし」

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サクロモンテの洞窟でフラメンコを踊る女性。(PHOTOGRAPH BY TAMARA MERINO)

 サクロモンテはフラメンコの生誕地でもある。フラメンコは、スペインで「ヒターノ」と呼ばれるロマの人々が生み出したダンスだ。エンリケ・アマヤさんをはじめとする多くのヒターノが、自分たちの文化に誇りを感じて洞窟住居に住み続けている。

「私たちは洞窟で生まれ、いろいろな動物たちと暮らしてきました」とアマヤさんは話す。アマヤさんの家族は6世代にわたり、サクロモンテの洞窟住居に暮らしてきた。祖先はサンブラ・フラメンコの創始者だ。サンブラは500年以上前、サクロモンテの洞窟で初めて披露された。

 アマヤさんはわずか3歳でフラメンコを始めた。そのアマヤさんにとって、個人的な歴史がつまった場所で踊り、ヒターノの詩を朗読することは、祖先たちと強くつながる行為だ。「純粋で新鮮な気持ちになります。早朝から滝に打たれるような気分です」とアマヤさんは話す。(参考記事:「スペインの火祭りを彩る、華やかな民族衣装を着た女性たち 写真14点」

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サクロモンテの洞窟。入り口は岩壁の少し外側にある。多くの洞窟は法的な位置づけがあいまいで、容易に、時には不法に占拠できる。(PHOTOGRAPH BY TAMARA MERINO)

 トクアト・ロペスさんも生まれたときからずっと洞窟住居で暮らしてきた。家族は4世代にわたってグアディクスの洞窟で暮らしている。洞窟は夏の暑さから体を守ってくれるし、何より、深く根差したコミュニティーの一員だという感覚を与えてくれる。一家は貧しく、ロペスさんは姉妹と4キロ以上離れた隣の町まで歩き、物乞いをすることもあったが、やはり生まれ育った家には強い愛着がある。

 4人の子供の父親になったロペスさんは言う。「私は洞窟で生まれたこと、そして今も洞窟で暮らしていることを、とても誇りに思っています。私は死ぬまで洞窟にいるつもりです」

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文=ALEXANDRA GENOVA/写真=TAMARA MERINO/訳=米井香織

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