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曲芸師の妻とリハーサル中のマ・ホアン・アンさん。ホーチミン市のサーカス団に所属し、空中曲芸を1日2回練習する。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)

ベトナムの古参サーカス団、舞台裏の表情

2016.09.05
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 観衆を魔法の世界に誘ってくれるサーカス。しかし私にとって、真の魔法はステージの外で起こっている。ベトナムにある2つのサーカス団の舞台裏で、私は演技の前後に彼らの日常を目にした。そこで演者たちが見せた顔は、舞台上での姿に劣らぬ魅力を放っていた。

ホーチミン市での公演前にストレッチをするグエン・ティ・トゥ・ヒェプさん(中央)。ベトナムのサーカス団員の月収はおよそ150米ドルで、加えて1つの演技に4ドルが支払われる。これだけでは生計を立てられないため、多くが個人のパーティーやナイトクラブにも出演して副収入を得ている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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 2009年から2012年にかけて私は3度ベトナムを訪れ、8カ月を過ごした。ハノイでサーカスを見たとき、私はその華やかさに魅了された。だが、演者たちを個人的に知るにつれ、客席からは見えない一面を伝えなければと感じ始めた。彼らの仕事の尊さを示し、そのひたむきさを記録するということだ。

ハノイのレーニン公園(トンニャット公園とも)での開演の数分前、色とりどりの衣装をまとって準備万端のベトナム・サーカス・フェデレーション(VCF)の団員たちを撮影した。写真は赤い衣装に身を包んだグエン・リン・チさん。1956年設立のVCFはベトナムで最も歴史のあるサーカス団だ。ホーチミン市の団とは違い、政府が出資して演者の住居費も支払っている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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VCF団員のファム・ティ・ハイ・イェンさん。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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 とはいえ、彼らの個人的な領域に入るのは簡単ではなかった。サーカス団員は、自分たちの生活より芸に注目してほしいと思っている。信頼を得るには、焦りは禁物だった。一番最近の訪問では、彼らと同じ生活を4カ月間送った。それは、もう使われていないハノイの劇場で、木材とプラスチックで各自の部屋を作って暮らすというものだった。

サーカスは今もベトナムで人気の娯楽だ。特に小さな町や村では喜ばれる。ニンビンで行われたVCFの公演でも、道化のおどけたしぐさに観衆が沸く。客席には警察官の姿も。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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 このアプローチは成功した。テーマへの関心を真摯に示し、彼らの状況を可能な限りありのまま伝えようと努めたことで、彼らは生活の場に私を招き入れてくれた。いったん受け入れられると、私はごく自然に彼らの中に交じっていた。そして写真を撮り、日々の生活を共有した。その様子を紹介する。

VCF団員のルー・バン・クオンさん。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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ファム・ティ・フォンさんとズォン・ティ・クエンさん。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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VCFのゾウ使い、グエン・トゥ・ティ・フォンさんが舞台袖で出番を待つ。首都ハノイから南に約96キロの場所にある小さな町、ニンビンでの公演の1コマ。私に強いインスピレーションを与え、2015年に他界した米国の写真家メアリー・エレン・マークは、1994年に同じサーカス団を写真に収めている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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VCF団員のカイン・チさん。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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チン・トラ・ミさん。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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VCFの公演を前に、紫色のライトとスモークがあふれるハノイのテント。サーカス団員の多くは小さな田舎町の出身で、毎朝早くから練習を始め、1日に複数の公演をこなす。ここでもホーチミンでも、まばゆい光の裏には多くを犠牲にした生活がある。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN RODRIGUEZ)
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Christian Rodriguez is an Uruguayan photographer. His work focuses on issues related to gender and identity. He is a member of Prime Collective.

文、写真=Christian Rodriguez/訳=高野夏美

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