Photo Stories 撮影ストーリー

コンゴ、ビルンガ国立公園で殺されたマウンテンゴリラを運び出すレンジャーたち。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)

胸に刺さる、「助けの必要性」を訴える写真12点

2016.08.02

 ナショナル ジオグラフィックの写真家ブレント・スタートンの作品は、殺されたゴリラ、アルビノの少年たち、酸をかけられた少女など、どれも胸に刺さる。写真に対する情熱、写真を通じて伝えたいことを聞いた。

――これまで撮影したなかで、初めて自分にとって大切だと思った写真は何ですか。

 1994年に、南アフリカ共和国で行われた選挙のときに撮った写真です。同国史上初の民主的な選挙でした。写真を撮り始めてまだ半年も経っていない頃で、ひどく興奮した群衆の中に混じっていたのを覚えています。私の目の前にいた少年も、群衆の怒りを受けてたちまち同調してしまいました。人々の団結がいかに強い力を発揮できるかを悟ったのを覚えています。偉大な写真というほどでもありませんが、人々の感情が表れている一枚です。その時初めて、私は写真のなかにその潜在性を感じ取ることができました。

インド、西ベンガル:アルビノで視覚障害者認定を受けたインドの子どもたち。アルビニズムは、眼球の色素が欠乏し、失明を引き起こすことがある。インドのビベカナンダ・ミッション・アシュラム寄宿学校で撮影。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]
ウクライナ:麻薬中毒者で娼婦のマリア。借りている部屋で体を売って客の相手をする。毎日のように麻薬を使い、毎週のように客を取るが、HIVには感染していない。9歳の娘と自分の生活を支え、麻薬を買うためにこの仕事をしていると主張する。2011年。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]
タンザニア、セルース猟獣保護区:ユスフ・シャバニ・ディフィカ(41歳)は、2005年のある晩、タンザニアのセルース猟獣保護区で狩猟をしていた時にライオンに襲われて両腕を失った。ライオンの攻撃をかわそうとして両腕を引き裂かれてしまったという。2013年3月4日撮影。参考記事:「ライオンと生きる」(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE FOR NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE.)
[画像をタップでギャラリー表示]

――あなたに最も影響を与えた人物は誰ですか。

 最も大きな影響というなら、失敗への恐怖心です。常に付きまとって離れません。でも写真家ということなら、ジェームズ・ナクトウェイ、セバスチャン・サルガド、マイケル・ニコルズの影響を若い頃から受けています。

 最近では、ユーリ・コズイレフ、アレックス・マヨーリ、ポール・ニックレン、エドワード・バーティンスキー、モイセス・サマン、ヘルムート・ニュートン、スティーブン・クラインなど、数え上げればきりがありません。

ケニア、オル・ペジェタ自然保護区:密猟者からキタシロサイを守るため、4人から成る警備隊が24時間体制で警備にあたっている。キタシロサイは、地球上にあと3頭を残すのみとなった。2011年7月撮影。参考記事:「サイの悲鳴」(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE FOR NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像をタップでギャラリー表示]
南スーダン、ンザラ:反政府武装勢力「神の抵抗軍」から逃げ出してきたマイケル・オリエム(29歳)。神の抵抗軍は、コンゴのガランバ国立公園で象牙の密猟に関わっている。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE FOR NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像をタップでギャラリー表示]

――写真への情熱をかき立てるものは何ですか。

 私の情熱をかき立てるのは、仕事の中で常に自分より優れた人々に出会い続けていることです。彼らは皆、助けの手を必要とし、助けを受けるに値する人々ばかりです。しばしば私は、そうした助けの必要性を広く伝えるべき立場、それをしなければ臆病、卑怯という立場に置かれます。

 この仕事をしていると、自分の人格が試されることが多いです。自分に誇りを持つということは、正しい行動を取るよう常に努力することだと思います。いつもそれに成功するわけではありませんが。

シエラレオネ、コノ地区:シエラレオネの反政府武装集団「革命統一戦線」によって10歳の時に村から誘拐され性奴隷にされた少女(12歳)。逃げ出そうとしたため、みせしめのために胸に電池の酸をかけられた。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]
インド、西ベンガル:2013年10月、インドの村で雨の降るなか農作業をする両親についてきたソニア(12歳)とアニタ・シング(5歳)。2人とも目が見えない。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]

――完璧な写真とは何だと思いますか。

 私にとって完璧な写真とは、それが撮られた時代を超越した写真です。本当に優れた写真というのは、時を経てなお私たちの文明の意識の一部として残っていくものです。ナショナル ジオグラフィックの作品でいうなら、普通の人間とは何か、そしてそれに伴うあらゆるつながりとは何かを教えてくれる写真です。

 個人的なことですが、良い写真が撮れそうな場面に出くわすと、いつも緊張します。自分の責任があらわになる瞬間だからです。対象物が自分のすぐ前を通り過ぎる時、それを見極めることができるだけの人間でなければならない。まばたきをすれば見逃してしまいます。もし見逃してしまったら、自分の中にいつまでも苦い記憶として残るでしょう。

コンゴ、ニイラゴンゴ:出来たばかりの溶岩原の縁に立ち、進行方向を見定めようとするコンゴの自然保護レンジャー。手前に明るく見えるのは、地表に押し出された硫黄鉱床。ビルンガには3つの活火山があり、そのうちのひとつニイラゴンゴには、世界最大の溶岩湖がある。最新の活火山は数年前にできたばかりのもの。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]
ケニア、アンボセリ:2011年、密猟者に殺された雄ゾウの牙を切り取る野生生物管理局の覆面レンジャーたち。ゾウは脊髄の近くを槍で深くひと突きされ、大量の内出血を起こして死んだ。参考記事:「象牙と信仰」(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE FOR NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像をタップでギャラリー表示]

――現地へ行った時最も大切な持ち物は何ですか。

 露出計とカメラです。これがなければ仕事ができません。次に大切なものは、仲介者と底なしの忍耐力です。

――新人の写真家へアドバイスするとしたらどんなことでしょうか。

 自分が好きになれるものを見つけること。そして、それに対して信念を持つこと。それを追いかけるために膨大な時間をかけなければならない上に、必ずしもそれが同じように愛情を返してくれるとは限らないのです。あふれんばかりの情熱を抱くことです。それが、この仕事において私が思いつく限り最大の贅沢です。

コンゴ、ビルンガ国立公園:自動車事故で頭を打って死亡したコンゴ自然保護協会(ICCN)のレンジャー、セオドア・ムブサ・マトファリ氏(27歳)の葬儀。ビルンガ国立公園では、150人以上のICCNレンジャーが職務遂行中に命を落としている。そのほとんどは、何らかの争いによるものだ。参考記事:「戦火の国立公園 ビルンガの闘い」(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE FOR NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像をタップでギャラリー表示]
パプア・ニューギニア、西部州マレー湖:2009年、湖で遊ぶクブト村の子どもたち。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, GETTY IMAGES REPORTAGE)
[画像をタップでギャラリー表示]

 写真家ブレント・スタートンが担当した特集「戦火の国立公園 ビルンガの闘い」が、ナショナル ジオグラフィック2016年7月号に掲載されています。
 ブレント・スタートンのプロフィール、これまでの担当特集はこちらから。

文=National Geographic Staff/訳=ルーバー荒井ハンナ

Photo Stories 一覧へ