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まるでレンブラントの絵画、動物たちの肖像写真

2016.06.20
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「私たち現代人は、自分たちを支えてくれている土地や家畜との関係を失ってしまいました」と、ニュージーランドの写真家カリー・ウィッタム氏は話す。「個々の動物を知っているというより、製品としてのラム、ビーフ、チキン、ポークに慣れ親しんでいるだけです」

 この失われた関係を取り戻そうと、ウィッタム氏はオランダの巨匠レンブラントの絵画によく似た家畜の肖像写真を撮影することにした。

マレーグレイ種のウシ
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 ロマンティックに聞こえるかもしれないが、実際に私たちの健康と家畜の健康、そして地球の健康は、畜産のあり方と密接にかかわっている。作家のジョナサン・サフラン・フォア氏は著書『Eating Animals(邦題:イーティング・アニマル――アメリカ工場式畜産の難題(ジレンマ))』の中で、次のような言葉を紹介している。「美は常に具体的な形で起こります。一方、残酷は抽象を好みます」

 工場式畜産を抽象的に受け入れるのは容易だ。しかし、家畜との失われた関係を修復するには、ブタやニワトリの顔に宿る具体的な美に敬意を払うか、少なくとも慣れ親しむことが一番かもしれない。

「動物たちを尊厳ある個として表現したいと思いました。そして、貴族や私たちの祖先が描かれた絵画と同じ価値、重要性を持たせるような写真を撮影しました」とウィッタム氏は説明する。

ブラック・ターキー
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 ウィッタム氏の写真は絵画に見えるよう加工されている。明暗の層を丁寧に重ねていくことで、ドラマティックな効果を生み出したのである。

 家畜たちにポーズをとらせるのは容易ではなかった。最も難しかったのはヒツジだ。「1頭でも驚かせると、その瞬間、すべてが逃げてしまいます」とウィッタム氏は振り返る。「近付いたときにこちらを見てくれるか、逃げてしまうか、その差は紙一重です」

 鳥の撮影も大変だった。カメラの方を向かせるのが難しく、良い写真を撮りたければ、畜舎に入るのが確実だ。一方、ウシはとても好奇心が強い。ただし、ウィッタム氏によれば、「丘の上から群れで押し寄せてきたら、かなりの恐怖を感じます」

黄褐色をした交配種のヒツジ
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 ウィッタム氏は田舎暮らしで、敷地内に複数のアルパカとニワトリを飼っている。しかし、ベジタリアンではなく、スーパーで模範的に振る舞うこともない。「“畜産物”をカートに入れ、犠牲になった命のことは考えないようにします」とウィッタム氏は話す。「ただし、適当に買うことはありません。これからも動物を食べ続けるのであれば、家畜たちが可能な限り良い暮らしを送り、良い死を迎えられるよう努めなければなりません」

ウェセックス種のブタ
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 美術館で金めっきの額縁に入った肖像写真を見ると、そこに描かれた人物(あるいは動物)はとても重要な存在だと感じずにはいられない。ウィッタム氏は理想のポーズ、理想の光でウシを撮影することで、その重要さを思い出させようとしている。私たちは人間の親友であるイヌと同じくらい、これらの多様な家畜に依存している。そして、彼らは尊敬に値する存在なのである。

ギャロウェイ種のウシ
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ハイイロガン
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ウィルトシャー・ホーン種のヒツジ
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See more of Cally Whitham’s work on her website.

文= Becky Harlan/訳=米井香織

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