野生のミツバチの蜂蜜を手に入れるのはたいへんだ。巣は木の枝やうろに隠されていてなかなか見つからないし、ミツバチたちは巣を守るために攻撃してくる。しかし、アフリカの蜂蜜ハンターたちは、ノドグロミツオシエという小さな茶色い鳥の力を借りて、ミツバチの巣を見つけている。ミツオシエはハンターをミツバチの巣に案内し、ハンターは煙や道具を使ってミツバチの攻撃を抑える。こうしてハンターは蜂蜜を手にし、ミツオシエは主食である蜜蝋にありつくことができる。(参考記事:「野鳥と人が蜂蜜めぐり「共生」、科学的に解明」)
科学者たちは長年、人間とノドグロミツオシエとの珍しいパートナー関係に魅了されてきた。2023年12月に学術誌「サイエンス」に掲載された論文によると、この関係はこれまで考えられていたよりもさらに密接であることが明らかになった。蜂蜜ハンターのコミュニティーはそれぞれ独自の鳥寄せの声を使っているが、ミツオシエは特定の音声シグナルを学習し、それに反応することができるのだ。
人間と野生動物との共同作業は非常に珍しく、世界中で数例しか記録されていない。しかも、こうした例は急速に姿を消しつつある。ノドグロミツオシエを使う蜂蜜狩りも、かつてはアフリカ大陸全域で行われていたが、今では東アフリカ、特にモザンビークやタンザニア、ケニアの農村部で、いくつかの民族が行っているだけだ。
「人間の側に学習プロセスがあることはわかっていました。鳥を使った蜂蜜探しの文化をもつコミュニティーは複数あり、鳥寄せの声はコミュニティーごとに異なっています」と、論文の著者の一人である米カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるブライアン・ウッド氏は言う。「私たちは鳥の側にも学習プロセスがあるのかどうかを知りたかったのです」
研究者たちは蜂蜜ハンターと一緒に原野を歩きながら、東アフリカの2つのコミュニティーで使われている鳥寄せの声を事前に録音したものと、比較対照となる音を流し、ミツオシエがどのくらいの頻度で近づいてくるかを記録した。
「この鳥は、地元の蜂蜜ハンターの鳥寄せには2〜3倍の確率で応えます」と、今回の論文の筆頭著者であるクレア・スポッティスウッド氏は言う。氏は南アフリカ、ケープタウン大学と英ケンブリッジ大学の研究者で、「ヒト・ミツオシエ・プロジェクト」のリーダーでもある。
米オレゴン州立大学のマウリシオ・カントール氏は、異なる種の個体同士が双方にとって利益となる関係をもつ「相利共生」の専門家。今回の研究には関わっていないが、人間と動物とのパートナー関係における複雑なコミュニケーションに重要な知見をもたらすものだと評価している。(参考記事:「数十万種に広がった成功戦略、双方が利益を得る「相利共生」とは」)
「鳥たちが本当に特定の鳥寄せの声に反応しているのかどうかは、これまでわかりませんでした」とカントール氏は言う。「今回の研究は、鳥たちが特定の音声シグナルをどのように認識し、反応するのかを単純明快な方法で検証しており、非常にエレガントです」
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