使用済み食用油などから作られた再生航空燃料(SAF)を100%使用した旅客機が、商用航空では初の大西洋横断に成功した。英ヴァージン・アトランティック航空によるプロジェクト「フライト100」の航空機は、英ロンドンのヒースロー空港を出発し、米ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に着陸した。持続可能な未来への大きな一歩であると評価される一方、同社が主張するほどフライト100はエコではないという批判も多く聞かれる。
英オックスフォード大学などが運営する「Our World in Data」によると、世界の航空産業から排出された炭素の量は、2018年時点で全体の排出量の2.5%を占めていた。また、今後は人や物の移動が増えることで、排出量は2050年までに3倍に増えるだろうと予測されている。
航空機の燃料としては、電気や水素のほうがより持続可能だと言われているものの、まだ新しい技術であるため、実用化にはあと数十年かかる見通しだ。ヴァージン・アトランティック航空はプレスリリースを発表し、今のところ持続可能な長距離飛行燃料としては、SAFが唯一の現実的な選択肢だとしている。
しかし、今回の運航は本当に温暖化対策の前進となったのか? それとも、よりよい選択を妨げることになるのだろうか?(参考記事:「地球にやさしい空の旅はできる?」)
SAFとは
SAFの定義は様々だが、一般的に、化石燃料を原料とせず、調達から最終的な使用まで炭素の排出量が化石燃料よりも少ない航空燃料のことを言う。
SAFは、製造法によってどれだけ持続可能かが変わってくるが、なかには化石燃料を使用したジェット機の炭素排出量を90%以上減らすものもあるという研究がある。
「逆に言えば、それでもいくらかの二酸化炭素は排出されるということです」。そう話すのは、英シェフィールド大学のエネルギー研究責任者で、フライト100の関係者でもあるモハメド・ポーカシャニアン氏だ。
フライト100のSAFは、廃食用油を主な原料としている。現在のところ商業規模で製造されている唯一のSAFだ。食用油と動物性油脂から作られるSAFは、従来の化石燃料と同じようにエンジンを動かすことができると、米ワシントン州立大学バイオ製品・科学・エンジニアリング研究室長のジョシュア・ヘイン氏は言う。廃食用油は、飲食店などから回収する。
国際認証機関であるASTMインターナショナルの現行の規制では、SAFを従来の旅客機用ジェット燃料に最高50%まで混ぜ合わせて使用することが認められている。しかし、フライト100に関しては、特別にSAFの100%使用が許可された。そして、出発前に技術的な要素を審査し、長距離飛行を無事完了させたことによって、その安全性が証明された。
しかし、航空機を飛ばすためには大量の燃料が必要なため、商用機全体に使用を拡大するにはまだ何年もかかるとみられている。現在、世界のジェット燃料供給量のうち、SAFが占める割合は1%にも満たない。
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